バイオガス生産に関わる新しい微生物
バイオガスは、メタン(CH4:総量の55~70%)、二酸化炭素(CO2:30~40%)および微量のその他のガスの混合物です。バイオガスは、さまざまな種類の微生物が密接に協力して行う有機物の嫌気性消化(anaerobic digestion)によって生成します。
バイオガスプラントで生産されるバイオガスを考えるときには、1)バイオエタノール、バイオディーゼル燃料と並ぶ化石燃料代替であり、自動車燃料や発電・熱源として利用できるバイオガスの生産、2)下水汚泥、家畜の糞尿、食品廃棄物などの有機廃棄物(バイオマス)の処理という2つの視点から理解する必要があります。
しかし、この嫌気性消化に関わる微生物の実態について未知な点が多いため、このプロセスはブラックボックスとみなされています。バイオガスの生産向上のためには、ここに関わる微生物についてもっと理解する必要があります。
9月8日、プレプリントサーバbioRxivに、ドイツ、スペイン、オランダの研究プロジェクトMicro4Biogasのグループが、有機物の分解に関わるバイオガス燃料生産改善の鍵を握る可能性がある新しい細菌についての報告を掲示しています。
チームは、ドイツ、オランダ、オーストリアにある45の大規模なバイオガスプラントから有機物のサンプル80個を採取し、DNA配列決定してそれらの微生物の組成を調査しました。その結果、これまでその存在が知られていたMBA03という未特定・未培養の細菌分類群に相当するものを見出しました。ここから、108のメタゲノム(MAG)を再構築した結果、2つの目(Order)を同定しました。そして、進化論のチャールズ・ダーウィン(Charles Darwin)とアルフレッド・ウォレス(Alfred Wallace)にちなみ、DarwinibacteriaceaeとWallacebacteriacaeと命名しました。
驚くべきことに、由来するバイオガスプラントの違いや距離にもかかわらず、新たに名付けたDarwinibacteriaceaeのメンバーが80サンプルすべてに存在していました。代謝を検討した結果、共生酢酸酸化細菌(syntrophic acetate oxidising bacteria、SAOB)と推定されました。
また、メタン生成古細菌であるMethanosarcinaが最も優勢な古細菌としてサンプルに見られました。このことから、Darwinibacteriaceaeが、嫌気性消化に関与する別の種類の微生物である古細菌と相互協力して働いているのではないかと推定されます。
つまり、Darwinibacteriaceaeが代謝化合物を生成し、古細菌はそれを使用してメタンガスを生成するというシナリオです。
この結果を利用することで、バイオガスの生産向上につながるのではないか、ということになります。
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