春は、新しいことにチャレンジ〜詩を書こう

2024年3月28日
全体に公開

 詩とはなにか、つづき

 前回、「詩とはなにか」という問いには、答えがないと書きました。

「これは詩ではない」は言えても「これが詩である」とは言いにくい。その意味で、詩は、否定形の文学と言えるかもしれません。平川さんが小池さんを評された「存在を不在によって際立たせる手法によって描き出した詩人」という言葉は、いま書かれている現代詩の多くに当てはまります。

 むしろ、死によって生を際立たせる、とか、不在によって存在を際立たせるという書き方がほとんどと言っていいくらい。逆に、生の充実をそのまま詩に置き換えようとすると、ぐっとハードルが高くなります。リア充は、詩になりにくいのです。それが、読者を遠ざけてしまう大きな理由のひとつかもしれません。

 それでも、この問いにまったく答えないで、ケムに巻くようなことはしたくないので、なんとかかろうじて言えそうなこととして、前回は「詩は、口語自由詩のことである」「詩は、あなたを詩人にする言葉のことである」と言ってみました。今回は、さらに「詩とは意味と音のバランスである」と言ってみたいと思います(仮説です)。

 さらに言うと、「詩は意味/メッセージではない」、いま書かれている現代詩はどちらかと言うと、「詩は音楽/リズムである」に近いのではないかと思います。ただ、詩が言葉で書かれているかぎり、日常的に私たちが交換している「意味」から逃れることはできない。「意味」や「メッセージ」は、むしろ詩にとって足枷になります。「意味」があって、かつ詩として高いクオリティを示す代表詩人が谷川俊太郎さんと茨木のり子さんかもしれません。

 たとえば、「愛」とか「恋」とか(実際に本当に私たちが「恋」とか「愛」の本質を理解しているとは思えないのですが、だとしても)、ふだん使い古され、手垢のついてしまった常套句(クリシェ)には、たくさんの「意味」が付着しています。大前提として、そこから逃れたいのが「詩」であると言うことができます。

 詩は、言葉でできている

 詩は、私たちがふだん誰もが使っている「言葉」でできているので、そのことにすでにジャンルの難しさがあります。絵画には絵の具、音楽には楽器という道具の技術が必要です。写真にも、カメラの技術が必要ですが、最近はスマホでかなりきれいな写真が撮れるようになり、私もiphoneを手にしてから愛していた一眼レフを手放しました。誰でも自由に写真が撮れるようになった時代の写真と詩には通じるものがあります

 そのように、詩は、つねにジャンルの足元を(とくに散文という波に)洗われているのですが、では、自分たちの言葉を「表現」の領域にステージをあげるためには、「作品」として完成させるためには、いったいどうしたらいいのでしょう。そもそも私たちが日常的に使っている言葉と「詩」の境目はどこにあるのでしょう。それが、川路柳虹、高村光太郎、萩原朔太郎以降の詩(口語自由詩)の苦難の歴史と言えるかもしれません。

 ちなみに、俳句、短歌はいまでも「文語」を使います。そのためも大きいと思いますが、結社の主宰による「指導」が可能になる。短歌の世界にも、石川啄木らを起源とする戦前からの口語短歌の歴史があるようですが、私たちがよく知っているのは、俵万智さんや穂村弘さんによるライトヴァース、90年代頃を起点とする口語のユニークな使い方を特徴とするニューウェーブ短歌のほうでしょうか。

 2018年と2019年の2年間、表参道のスパイラル・スコレーで、「これから詩を読み、書く人のための詩の教室」をやっていました。春期、夏期、秋期、各4回の講座で、講師は、小池昌代さん、松下育男さん、川口晴美さん、井坂洋子さん、福間健二さん、峯澤典子さんの6人。オブラートの松田朋春さんと則武弥さん、スパイラルの今井奈津子さんのご協力で、コロナでその後、継続を断念しましたが、人気のあるシリーズになりました。

   現代詩は、教えられないものであるという認識が根づよいのですが、現代詩も、口語革命以降、110数年経っているので、そろそろ教えられることがあるのではないかというのが持論です。カルチャーセンターでの詩の教室も、実作講座が人気を集めています。春の講座がいくつも開講されますので、詩に興味のあるかたはのぞいてみてください。

春の募集がはじまっています。

【池井昌樹さんの詩の教室】

https://www.ync.ne.jp/ogikubo/kouza/202404-01071120.htm

自分の言葉を大切に詩の鑑賞・実作教室 よみうりカルチャー荻窪
第4日曜 11:00~13:00 4/28、5/26、6/23、7/28、8/25、9/22


【川口晴美さんの詩の教室】

午前の部のみアキがあります。

現代詩の実作と鑑賞 池袋コミュニティ・カレッジ
第4土曜 10:30~12:30/13:30~15:30 4/27、5/2、6/22

10:30クラス
https://cul.7cn.co.jp/programs/program_1004965.html?shishaId=1001

13:30クラス(満席、キャンセル待ち)
https://cul.7cn.co.jp/programs/program_921233.html?shishaId=1001


【(オンライン)三角みづ紀さんの詩の教室】

日々を切りとって詩を書く NHKカルチャーセンター梅田教室
第3木曜 18:45~20:45 4/25、5/16、6/20、7/25、8/22、9/19

https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1267782.html?gad_source=1&gclid=CjwKCAiAopuvBhBCEiwAm8jaMVL5kg91D1_Y6Atsyrw8v81lMI7ljClVALKxDBp_mGJuTECzNKZdpxoC3GMQAvD_BwE


【(オンライン)文月悠光さんの詩の教室】

今夜は詩人!詩の世界を愉しむ NHKカルチャー青山教室
第2金曜 19:00~21:00 4/26、5/24、6/28、7/26、8/23、9/27

https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1136790.html


【マーサ・ナカムラさんの詩の教室】

「私」をめぐる詩の実作教室 NHKカルチャー青山教室
第4土曜 11:00~13:00/13:30~15:30 4/27、5/2、6/22、7/2、8/24、9/28

11:00~13:00(オンライン)
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1283352.html

13:30~15:30(対面)
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1280800.html

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