生成 AI 時代の DX 推進に必要な人材・スキルの考え方とは? 〜経産省 検討会取りまとめ から

2023年8月8日
全体に公開

生成AIの技術は、生産性の向上や新たなビジネスチャンスの創出、さまざまな社会課題の解決に寄与する可能性など、さまざまな領域で期待が高まっています。

このような背景から、DX(デジタルトランスフォーメーション)のさらなる推進に向けて、どのような人材やスキルが必要かを議論するため、「デジタル時代の人材政策に関する検討会」を今年6月から開催しています。

この検討会では、生成AIを適切で積極的に活用するための人材やスキルのあり方について深く議論され、、現在の状況に応じて柔軟に対応する「アジャイル」なアプローチを取り入れています。

生成AIやその利用技術は絶えず進化し続けているため、その影響を受ける人材やスキルについても、今後も継続的に議論を行う必要があります。これにより、時代の変化に対応した人材育成やスキルアップを進めていくことが重要となっています。

経済産業省では2023年8月7日、デジタル時代の人材政策に関する検討会での議論を踏まえ、「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方」を取りまとめを公表しました。

生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方

生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方について、経済産業省は以下のようにまとめています。

(1)生成AIが社会にもたらすインパクト

・生成AIはホワイトカラーの業務を中心に、生産性や付加価値の向上などに寄与し、大きなビジネス機会を引き出す可能性

・企業視点では、生成AIの利用によるDX推進の後押しを期待、そのためには経営者のコミットメント、社内体制整備、社内教育の他、顧客価値の差別化を図るデザインスキルなどが必要

(2)生成AIがデジタル人材育成やスキルに及ぼす影響

・人材育成と技術変化のスピードのミスマッチに留意し、その時々で環境変化をいとわず主体的に学び続けること、そのための企業内での環境整備などが必要

・生成AIを適切に使うスキル(プロンプトの習熟など)とともに、従来のスキル(戦略的思考、批判的考察力など)も引き続き重要

・自動化が進み「作業」が大幅に削減され、専門人材を含む人の役割がより創造性の高いものに変わり、人間ならではのクリエイティブなスキル(起業家精神など)やビジネス・デザインスキルなどが重要

・生成AIの利用により業務が効率化されることで、社会人が業務を通じて経験を蓄積する機会の減少を認識する必要

(3)生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキル(リテラシーレベル)の考え方

・マインド・スタンス(変化をいとわず学び続ける)やデジタルリテラシー(倫理、知識の体系的理解など)

・言語を使って対話する以上は必要となる、指示(プロンプト)の習熟、言語化の能力、対話力(日本語力含む)など

・経験を通じて培われる、「問いを立てる力」・「仮説を立てる力・検証する力」など

(4)政策対応

・情報処理推進機構(IPA)において、生成AIの登場や進化を踏まえた「デジタルスキル標準(DSS)」の改訂を実施

・デジタルスキルを身につけるための教育コンテンツを一元的に提示するポータルサイト「マナビDX」において、生成AIの利用方法を学べる講座を追加掲載

・デジタル推進人材育成プログラム「マナビDX Quest」では、受講生が取り組む課題解決において、本年度から生成AIを利用

・「情報処理技術者試験」のうち「ITパスポート試験」について、出題範囲のシラバスに生成AIに関連する内容を追加するとともに、サンプル問題を公開

生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方における3つのカテゴリ

生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方について、経済産業省は有識者で構成する「デジタル時代の人材政策に関する検討会」において議論を重ね、その結果を取りまとめました。その中で、人材・スキルは以下の3つのカテゴリに整理されています。

1.マインド・スタンスやリテラシー

生成AI利用において求められるマインド・スタンスとして、生成AIをビジネスパーソンとしてのスキルと組み合わせて利用する意識、生成AI利用におけるリスク認識、そして変化を恐れず学び続ける姿勢が重要とされています。

また、基本的なデジタルリテラシーとして、生成AIの仕組みやメリット・デメリットなどの基本的な知識、そして生成AIを使う際の倫理や教養が求められます。

2.指示(プロンプト)の習熟、言語化の能力、対話力等

生成AIと対話するためには、指示(プロンプト)の習熟や言語化の能力、対話力(日本語力含む)が重要とされています。

また、指示(プロンプト)の書き方そのものは技術の進展に伴って急速に変化するため、自動化できる部分の特定や自動化するための技術の組み合わせを考えられる人材の育成が重要とされています。

3.経験を通じて培われる、「問いを立てる力」「仮説を立てる力・検証する力」等

生成AIを効果的に利用するためには、場面分析や問い立て、生成物の評価、物事を批判的に考察する力などが重要とされています。

これらの力は経験を通じて培われるもので、職種や役割に関係なく、ベースのスキルとして必要とされています。

経済産業省は、これらの考え方を踏まえて、デジタルスキル標準の改訂や「マナビDX」への生成AI利用講座の掲載、「ITパスポート試験」のシラバス改訂やサンプル問題の公開などの政策対応を進めています。

今後の展望

生成AIの登場と急速な進展は、ビジネスや社会全体に大きな変革をもたらす可能性があります。そのため、生成AIを適切に利用するための人材・スキルの育成が急務となっています。

現在は、生成AIをビジネス変革に活用するために、生成AIを適切かつ積極的に使ってみるという姿勢が求められています。そのためには、生成AIを安全に利用するための社内環境整備や、生成AIに関するリテラシーを持った人材の育成が重要となります。

人材の育成の中では、生成AIを適切に活用するためのスキルやマインドセット、倫理観などのリテラシーを身につけることも求められています。

さらには、生成AIと対話するための言語化の能力や対話力も重要となります。問いを立てる力や仮説を立てて検証する力など、経験を通じて培われるスキルも必要とされます。

また、生成AIの利用は、単なる業務効率化だけでなく、ビジネス変革や顧客体験の変革につながる可能性があります。そのため、企業内でのデジタルの担い手確保や、生成AIの利用スキルを身につけるための社内教育が重要となります。

生成AIの利用は、経営層による積極的な理解・発信や、社内体制整備、社内教育などに大きく左右されます。これらの要素を整備しながら、生成AIの利用を通じたさらなるDXの進展が期待されます。

今後、生成AIの進化に伴い、これらのスキルやリテラシーの必要性はさらに高まるとともに、生成AIをビジネス変革に活用するための組織的な取り組みが重要となるでしょう。

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