観光庁が示す、新たな「訪日マーケティング戦略」における3つの軸とは?

2023年7月22日
全体に公開

新型コロナによる水際対策が緩和されてから個人旅行が回復しつつあり、訪日外国人観光客が増え、コロナ前の水準に戻りつつあります。

観光庁は2023年6月29日、日本政府観光局(JNTO)とともに、マーケティング戦略本部において、2023年度から2025年度を対象とする「訪日マーケティング戦略」を策定しました。

本年3月に閣議決定された「観光立国推進基本計画」で掲げられている「持続可能な観光」、「消費額拡大」、「地方誘客促進」の実現のため、世界に向けてきめ細やかなプロモーションを展開していく計画です。

新たな「訪日マーケティング戦略」における3つの軸

本戦略は、
[1]ビジット・ジャパン重点市場ごとの「市場別戦略」
[2]高付加価値旅行等に関する「市場横断戦略」
[3]国際会議・インセンティブ旅行の誘致に向けた「MICE戦略」

の3部構成で、「持続可能な観光」の推進を基本的な方向性としています。

訪日マーケティング戦略の全体構成出典:観光庁 訪日マーケティング戦略

[1]ビジット・ジャパン重点市場ごとの「市場別戦略」

市場別戦略では、各市場の特性を理解し、それぞれの市場に対して最適なプロモーションを展開することが重視されています。

具体的には、市場の規模、成長性、競争状況、訪日旅行者の特性などを考慮に入れ、それぞれの市場に対する最適な施策を策定し、実施していくとしています。

これにより、各市場からの訪日旅行者の増加を図るとともに、訪日旅行者の消費拡大や地方誘客の促進を目指しています。

[2]高付加価値旅行等に関する「市場横断戦略

市場横断戦略では、特に高付加価値旅行に焦点をあてています。

具体的には、訪日旅行1回あたりの総消費額100万円/人以上の旅行者をターゲットに、地方における高付加価値なインバウンド観光地域づくりに向けたアクションプランを推進します。

これには、Selective Luxury層とAll Luxury層のそれぞれの特性を踏まえたプロモーションやコネクションの強化が含まれています。

また、日本政府観光局(JNTO)内に設置した専門組織を最大限活用し、国内のDMC(地域特化型旅行会社)やサプライヤーなどとのネットワーク形成、高付加価値旅行市場の流通に乗せるための観光メニュー・サービスの発掘・収集・蓄積および磨き上げ支援を実施していくとしています。

[3]国際会議・インセンティブ旅行の誘致に向けた「MICE戦略」

MICE戦略では、インセンティブ旅行目的の訪日外国人消費相当額をコロナ前の水準に戻すことを目指しています。

MICEとは、Meetings(会議)、Incentives(インセンティブ)、Conventions(国際会議)、Exhibitions(展示会)の頭文字を取った言葉です。MICEは、国際的な会議や展示会、イベントなどの組織と実施を支援する観光産業の一部を指します。

MICE戦略の具体的な取り組みとしては、海外のインセンティブ旅行取扱旅行会社、インセンティブハウス、ミーティングプランナー、インセンティブ旅行実施企業等との連携を強化し、付加価値のある体験のプロモーションと市場毎に最適化された情報の提供をおこなっていくとしています。

また、国際的な業界団体(SITE、MPIなど)との連携強化、インセンティブ旅行に係るケーススタディーの発信やコロナ禍を契機とした新しいニーズへの対応、日本ならではの付加価値のある体験の磨き上げ支援と利用促進、国内ステークホルダーにおける専門人材の育成などが含まれます。

特に、大阪・関西万博などを契機としたインセンティブ旅行誘致の取組が注目されています。

今後の展望

新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行により、マスクを着用する人も減り、コロナ前の雰囲気に戻りつつあります。

観光庁が示す、新たな「訪日マーケティング戦略」の展開により、日本の観光業界は新たな成長の機会へとかじを切ることになります。

今回の市場別戦略、市場横断戦略、MICE戦略の3つの軸を中心に、訪日旅行者の増加、消費拡大、そして、地方誘客の促進、これにより、観光業界の持続可能な成長と発展が期待されます。

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