企業は村社会からバーチャル化されたグローバル・ワンカンパニーに
グローバル化が進む中で、企業の経営組織のあり方の再構築が重要になっています。
経済産業省は2024年3月22日、「第4回 グローバル競争力強化に向けたCX研究会」を開催しました。
この中から、組織経営のバーチャル化に焦点をあてて解説したいと思います。
日本における経営組織
一つめはミッション・ビジョン・バリュー(MVV)です。日本は村社会であるため、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)ということを意識してこなかったといいます。
グローバルにビジネス展開が進む中で、共通の価値観を持つことは組織にとって一番重要であり、行動の指針となっているMVVを再認識・確立し、浸透させることが企業としての一体感を醸成し、最強のリスク管理となるとしています。
また、日本企業ではビジネスユニットを中心とした考え方が強く、CxO体制に移行し、要件定義を言語化して合意しないと、機能本部担当役員になってしまうという指摘をしています。
レポートラインという考え方やグローバルに横軸を刺すという考え方が浸透していかないと、コーポレート的にマトリクスを作れないという点も課題として挙げています。
一方、先進的なグローバル企業では、法人格とは無関係に事業軸で運営しており、事業のグローバル本社機能はバーチャルであることが、グローバルでの組織運営で重要となっているといいます。
経営組織のバーチャル化の進展と特徴
グローバル経営における経営組織のバーチャル化の動きを少しみてみたいと思います。
1990年以降のICT(半導体、ネットワーク、仮想化等)の劇的な発展に伴い、コンピューティングリソースは物理的な制約から解放されクラウド化が進展しています。
経営の各機能・事業を実態化する組織の在り方も、物理的な拠点に集中していることの必要性が低下。特に、グローバル企業においては国境を越えて最適に企業内のレポートラインを設計する必要性が強まり、テクノロジーの進化とも相まって、”組織のバーチャル化”が進展しています。
![](https://contents.newspicks.com/topics/164/posts/160/images/20240407040434791_bGGMuRp9.png?width=1200)
バーチャル化された経営組織では大きな特徴があります。先進グローバル企業では、”バーチャル化された経営組織”において人的資本を最大活用する観点から人員配置、レポートライン、権限委譲、ジョブディスクリプション等を設計しています。
例えば、ある事業部門のトップが現地法人のトップを兼ねる、あるいはFP&AがCFOと事業部門トップにデュアルレポーティングするといったマトリクス構造が見られる例を挙げています。
一方で、物理的な組織に紐付くリーガルエンティティの役割は最小限に抑制しています。
![](https://contents.newspicks.com/topics/164/posts/160/images/20240407040559746_185Bx2dq.png?width=1200)
“バーチャル化”によるビジネスプロセスの最適化・データ活用
本来、End-to-Endでの最適なビジネスプロセスは、当然ながら物理的な境界や組織の壁を越えて設計されるべきものとしてきます。一方で、こうした壁が高いと、その設計や全体把握すら難しくなる可能性も挙げています。
米欧企業はH/W、S/W両面でのデジタル技術の進展とともに、経営組織の”バーチャル化”を図り、ビジネスプロセスの最適設計を進めてきたからこそ、DX、データ活用も進んでいるととしています。
![](https://contents.newspicks.com/topics/164/posts/160/images/20240407040625510_F1QI9TT9.png?width=1200)
今後の展望
日本企業では、“組織の壁”がもたらしている日本企業の”子会社問題”が顕在化しています。子会社の経営は基本的に親会社の人員(兼務・出向・転籍)によって執行されている傾向があり、グループ全体での人材の最適配置、活用、育成を阻んでいる可能性も指摘しています。
欧米企業グループではHQを中心に人事・報酬制度がジョブベースで統一的に運用される一方、日本のグループ会社では“組織の壁”によってこれらがリーガルエンティティごとにバラバラとなっています。
また、それぞれの子会社においてフルセットで機能を持つ「連邦経営」が未だに残っており、グループ全体でバラバラな仕組みとなり、固定費が利益を圧迫するという課題も直面しています。
こういった中、多数のエンティティがあたかも1つの企業体であるかのように振る舞うグローバル・ワンカンパニーの実現の重要性をあげています。
鍵を握るのは境界を越えて機能するファイナンス、HR、デジタルであり、そのための組織設計です。これらが整うことによって初めて、。ワンカンパニーの視点からのポートフォリオ組み替え(売却・買収)が可能となるといいます。
日本は、グローバル・ワンカンパニーとして飛躍していけるのか、これからも注目してみたいと思います。
更新の通知を受け取りましょう
投稿したコメント