ハレからケへの挑戦。メタバース日常ビジネスの現在地と壁
先日、トピックオーナーの児玉さんと対談する機会をいただき、メタバースが現実という名のクソゲーをどうやってアップデートしていくのか、という刺激的なディスカッションをさせていただきました。
それを受けて、これからメタバースに関わる人たちが乗り越えなければいけないわかりやすい壁が存在するので、今日はそのことに触れようと思います。
よく聞かれるこの質問
先日テレビ東京さんの「tamariba」にて田村淳さんより、メタバースビジネスの成功例について聞かれました。
私が回答したのは
・法人の成功例は主にB2B、クライアントと受け仕事やアドバイザーという関係性で、受注を受けた側はバブル的に現在成功している
・では発注した側のクライアントはどうか。ここでサステナブルな価値を出していけるかが現在のメタバースビジネスの壁である。
というお話をしました。これは上述の児玉さんとの対談でも同じようなことをお話ししたのですが、いかんせん緊張と尺の問題で話足りない部分があるので、この場で補足します。
成功しているメタバースビジネスとは
前述のように、メタバースでビジネスがしっかり成り立っている主なものとしてはB2Bでのビジネスがあります。「メタバースに参入したい」という企業から仕事を受けた3D制作企業などが受注することで儲けを出すビジネスです。このビジネスは最近特に注目されており、大手の代理店や、様々な企業が参入している領域です。
ではクライアント側はなぜ高額の費用を支払い、発注するのか。様々な理由がありますが、まず多いのが「メタバースというものが流行っているから、自分たちも何かやるべき」という動機の元、ファーストステップを踏む、ということです。
様々なメディアでメタバースの先進事例として取り上げられ「世界初!メタバースで〇〇を販売!」「メタバースイベントに〇万人が来場!」「業界大手の〇〇社がついにメタバース進出へ!」のようなキャッチーな見出しが並び、担当者としても多くの耳目を集めることに成功し、ある意味メリットを享受することができました。
課題は「ハレからケへ」の部分
では上記のようにメタバース進出に「大成功」した企業はその後どうなるのか。一番最初はメディアも騒ぎ、顧客や株主の感じるブランドイメージもアップし、社内も評価され、上司もニコニコで順風満帆ですが、毎回毎回同じ企画をやったところで、その効果は持続しません。ブラッシュアップや課題の解決、数値分析、企画の刷新などと手を施していきますが、初回のようなインパクトが残せない・・・継続的に実利を出し続けるにはどうすればいいのか、各担当者は思い悩み、チャレンジを繰り返します。そのうちニコニコしてた上司や株主も、半年、1年経過するころには「いつ投資回収できるのか?」「マネタイズのあてはあるのか?」これはまだいいほうで、2回目以降を「もうメタバースはいいや」と見切りをつけて、せっかく先行者として踏み出したにもかかわらず、チャレンジできない企業も多く存在します。
コロナ渦のはじまった2019年、リアルイベントやコンサートなどがバタバタ中止になり、代替手段としてメタバースに挑戦した企業や、注目度があがったタイミングで参入した企業、つまりかなり動きの速かった企業が、この状態に陥っていることが多いです。
お祭りやイベントのような”ハレの日”から日常・実用にシフトする”ケの日”のコンテンツをうまく生み出せないことには、サステナブルに実利を出し続けることができません。ここのキラーコンテンツが見つかりにくいことが、ビジネスメタバースが現在迎えている壁、だといえます。
キラーコンテンツを探しに
ビジネス的なキラーコンテンツとは、Web2.0でいうところの『EC』と『広告』のようなもの。一度見つかれば多くの事業者がなだれ込み、ど真ん中だけでなく業務効率化のためのバーティカルSaaSや情報整理のためのキュレーションなども含め、周辺領域をも巻き込み、世界中でスケールしたビジネスです。この金脈を掘り当てるには、他社と全く同じことをするだけでは無理で、常に何らかの新たな要素に挑戦し、その結果の情報を保有することが非常に重要です。
現時点でメタバースビジネスを大成功させるのは非常に困難ですが、Youtuberをはじめたとしても、ホームページ制作会社をはじめたとしても、ラーメン屋をはじめたとしても絶対に儲かるというコトはありません。
廃墟のなかにも常にチャレンジを
メタバースは今あらゆる意味で自由、フロンティアであり、まだ真っ新であり、だからこそ世界中の誰もチャレンジしたことのないことが多数存在します。メタバースへのチャレンジは蓋然性が担保しにくく、一歩踏み出しにくい部分も多々あるため、どうしても企業単位で行う際は、同質化したチャレンジのないものになりがちですが、それではただただ廃墟が増えていくだけです。どうしても他社のやっているものと同じようなことをやりたい場合でも、何かオリジナルなスパイスをいれることに意味があります。
土地や建物を建てただけで成功できる商売が存在しないように、そのうえのコンテンツにチャレンジしていくことが重要であり、その事例の積み重ねが、日本のメタバース業界の明るい未来を切りひらくはずです。
先行者に学び、オリジナルのチャレンジをし続ける、このサイクルがいつの日かキラーコンテンツを生み、人間の生活様式を変えるほどのパラダイムシフトを興すと信じて、今日も今日とて一歩ずつ、社会実装していきましょう。
更新の通知を受け取りましょう
投稿したコメント