医療DX!病院から「紙」をなくす

2023年7月25日
全体に公開

病院では1日に何枚の紙を消費しているのでしょうか。受診から検査結果、同意書、診断書、予約や紹介状すべて「紙」「紙」「紙」です。電子カルテが現場に導入されてから久しく時間が経過してますが、紙ベースでのやりとりがいまだに多く、各病院でも電子カルテからの紙の出力や取り込みに追われている毎日です。病院での紙の消費量の多さは、地球環境へ与える影響も甚大と考えられます。

令和4年度の京都大学病院における文書スキャン取り込み数は1日当たり8198件であった。
京都大学医学部附属病院 医療情報企画部長 黒田知宏  「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム 第1回 2022年9月22日 資料

これは、介護主治医意見書や身体障害者診断書・意見書や難病申請など、すべての行政文書が署名・押印を含めた紙ベースの運用でなされていること、また行政文書でなくても病院の文書はそれに準じた運用がなされていることが上げられます。

また各病院間のカルテが統一化しておらず、病院間のやりとりが基本「紙」やFAXによって行われているということも非常に大きいです。

UnsplashのNational Cancer Instituteが撮影した写真     

電子カルテ共有は可能か?

病院間で電子カルテを共有すれば、医療情報のやり取りが電子化され紙も少なくなります。なにより紹介状を書く医師の手間やそれをスキャンする事務の手間が減ります。働き方改革という面からも大事なことです。

厚生労働省では「医療DX令和ビジョン2030」として電子カルテ共有に取り組んでおります。

しかし、電子カルテは各病院で異なったベンダーを採用していたり病院独自のコードを使っていたり、電子カルテそのものの共有は困難であります。

なので、政府・厚生労働省は医療情報を連携しやすい仕様にしてクラウドベースで共有することにしました。医療情報はHL7 FHIR(データがXML又はJSON形式で表現され、アプリケーション連携が非常にしやすい)仕様が推奨されて、このHL7 FHIR仕様であれば医療情報を施設間で共有できるということになっています。

UnsplashのDallas Reedyが撮影した写真  

医療情報はクラウド共有化へ

クラウドに医療情報を格納し、マイナンバーカードで紐づけて、患者さんの同意の元に医療機関は医療情報にアクセスできることが2024年中に開始されるとのことです。
特に有益なのは、
1.いままでの処方情報 2.現在の病気や既往歴 3.アレルギー情報 4.検査結果

などで、再検査や前の病院に手紙やFAXで問い合わせる手間が省けます。また何回も同様の検査を避けることができ、患者さんの負担や医療費も抑えることができます。大きなDX効果と言え、早期のマイナンバーカードの普及や医療機関側の整備が望まれます。

医療情報は患者さんのものである。

医療情報は機密性が高く、クラウド管理する側の厳重なセキュリティが求められます。

また、ここではっきりさせたほうがいいのは、いままでは医療情報は通院している病院やクリニックでセキュリティ管理していましたが、今後は患者さんが自分で管理する場面が増えてくるということです。クラウド化した情報を共有する許可を出すのは患者さん自身なのです。

医療情報は患者さんのものであるという意識を、医療者と患者側の双方が持つことが医療DX化の一つのカギと言えるでしょう。

応援ありがとうございます!
いいねして著者を応援してみませんか



このトピックスについて
津覇 ゆういさん、他254人がフォローしています