欧州で感じたブランドコミュニケーションの変化

2024年2月3日
全体に公開

欧州(アムステルダム、コペンハーゲン、パリ、ブリュッセル)を回ってきました。

目的は、これから求められるブランドコミュニケーションってなんだろう?を考えることです。

現地で見たり、聞いたりする中で、確実に変わってきているトレンドがあると感じたことがあります。

ブランドコミュニケーションは

1. 「機能性だけではなく、地球・社会にとっての意味」を伝える
2. 「課題解決だけではなく、問題提起」を伝える
この2つが重要になってきていることです。

以前から何となく重要だなと感じていた視点なのですが、日本で考えられているレベルと全く違うと肌で感じました。

いくつか見てきたブランド事例も踏まえながら、変化の視点をまとめていきます。

1. 機能性だけではなく、地球・社会にとっての意味を伝えるコミュニケーションへ

社会への配慮が足りないブランドは、若者だけではなく社会全体で選ばれなくなってきている
現地でマーケティングの仕事をする方から聞いたお話

欧州では、サステナビリティはブランドが選ばれるために必須になっていると肌で感じました。

例えば、スポーツブランドのナイキやアディダスのパリ中心のお店を訪れると、かなり広いスペースを使って「サステナビリティ」に関する展示がされています。

パリ・シャンゼリゼ通りにあるアディダスのフラッグシップショップを訪れました。

このような展示がされています。

脱プラスチックに関する展示(お店の真ん中にありました)

アディダスのサステナビリティページを確認すると下記のような目標が書かれています。

2050年までに、原材料の生産からアディダスのオペレーションを経て製品寿命に至るまでの全体で、クライメートニュートラルを達成することを最終目標としています。

続いてナイキについてです。

こちらはパリのナイキショップ「Nike House Of Innovation Paris」にあった展示の写真です。MOVE TO ZEROというサステナビリティの取り組みが紹介されていました。

1. ポリエステル、コットン、皮革、ラバーなどのすべての主要素材に、環境に配慮した素材の使用を50%に増やすことで、温室効果ガス排出量を0.5Mトン削減する

2. 拡張サプライチェーンにおいて、埋め立てから出た廃棄物を100%転用し、少なくとも80%の廃棄物がNike製品やその他の商品に再利用される。
3. テキスタイルの染色と仕上げにおいて、使用する真水の量を1キログラムあたり25%削減する。

##STOPFASTFASHION

パリの街では、##STOPFASTFASHION の張り紙を見つけました。

ファストファッションへの反対運動ですね。

インスタグラムのハッシュタグを確認すると、かなりの抗議運動の写真が上がっていて、中国のファストファッションSHIENに対する反対が目立ちます。

H&Mの店舗に対して貼られていた張り紙

次の日にH&Mの店舗に行くと、タグにはリサイクル素材の比率が書かれたタグが多くの商品につけられていました。

このような配慮を細かくしないと買ってもらえない環境だと理解

背景を補足して解説します。

EU圏ではDPP(デジタルプロダクトパスポート)エコラベルの2つの考え方がブランドに求められはじめています。

1つ目のDDPは、商品の持続可能性に関する情報を電子的に記録したものです。製造元・原材料・リサイクル・解体方法に至るまでの詳細情報を公開し「製品ライフサイクルを追跡可能にする」取り組みです。

2つ目のエコラベルは、環境に配慮して生産された製品に付与されるマークで、生活者が環境に優しい製品を選ぶ際の指針となるものを示そうという取り組みです。

上記のEUが推奨するブランド行動の流れ、アディダス、ナイキ、H&Mなどの動きからも、地球・社会にとっての意味が伝えられないブランドは信頼してもらえない、つまりは購入してもらえない現実になってきていると理解ができました。

2. 課題解決だけではなく、問題提起を伝えるコミュニケーションへ

ここまで書いてきた通り、SDGsやサスティナビリティに取り組んだり、ダイバーシティ・多様な人への配慮することは、ヨーロッパでは「前提」となっていると感じました。

前提なので、サステナビリティに取り組むことでブランドの独自性を伝えることはできないということです。

では、踏み込んだブランドコミュニケーションとしては何が仕掛けてられているのでしょうか?

その答えが「問題提起コミュニケーション」でした。

オランダを代表するビール会社「ハイネケン」は、キャンペーン動画として「アルコールに対するジェンダーバイアスの提起」を行なっています。

アムステルダムを訪れた際は、たくさんハイネケンのロゴが掲げられたお店がありました。

Heineken® | The Social Swap」のキャンペーンをご紹介します。

簡単にキャンペーン内容を要約します。

・「ハイネケンのソーシャル・スワップ」は、ハイネケンが元イングランド代表サッカー選手のジル・スコット(女性)とガリー・ネビル(男性)と共同で行った社会実験

・実験では、スコットとネビルは5日間、密かにソーシャルメディアのアカウントを交換。二人はサッカーのさまざまなトピックについて本音の意見をシェアし続けたが、それはお互いのアカウントを交換した上で行った。

・実験の結果は…スコット(女性)のアカウントから投稿したネビル(男性)は、サッカー界の女性がしばしば直面するジェンダーに基づく否定や偏見を身をもって体験した。
女性(スコット)が男性のサッカーについてコメントすべきではないという罵倒や否定的なコメントをSNSから受け取った。
Heineken® | The Social Swapのキャンペーン内容を要約

アルコール飲料は社交の場で利用されるブランドカテゴリーです。

より良い社交の場をつくるためにジェンダーバイアスに対する問題提起を行うことで、ハイネケンは広く、かつ深く信頼を獲得することにつながっていることがわかります。

以前のトピックスで書いた「問題提起コミュニケーション」の必要性は、より強く増してきていると理解しました。

問題解決だけがデザインではない。

新しい視点を生み出す「もうひとつの」デザインの力。企業のための問題解決、商品の売上向上。デザインと聞くとこうしたことを思い浮かべる人がほとんでしょう。しかし、現代の私たちが直面する課題の多くはもはや解決不能で、これらを克服するためには、私たちの価値観、信念、考え方を変えるしか他に手はありません。
スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。

また、欧州はジャーナリズムが国全体で機能していることも関係していることも関係していると思っています。

この3つの要素が循環をして、新しい流れが生まれているイメージです。

1. 国(EU全体)としてサステナビリティを推進する
2. メディアが本当にブランドが適切な活動ができているかを批評する
3. ブランド側も適切な情報発信をし、時には自らが社会への問題提起をする

さて、日本はどのように変わっていけるでしょうか?

ブランドコミュニケーションの常識を見直そう

日本でのブランドコミュニケーションも、日本基準だけで考えていてはダメだと考えています。

SDGs、サスティナビリティなど大切そうだからとりあえず発信しておこう…の考え方では、間違いなく世界ではブランドとして受け入れてもらえなく、今後の世界で競争力をもつことも難しくなる。

まずはこの2つのコミュニケーションを、自分の近くになるところから実践していきます。

1. 「機能性だけではなく、地球・社会にとっての意味」を伝えるコミュニケーション
2. 「課題解決だけではなく、問題提起」を伝えるコミュニケーション

そして、これからのコミュニケーションは、大企業だけではなく小規模だからこそ取り組みやすい要素もあるはずです。

今回の視察で小さくても社会に大きなインパクトを出していると感じたブランドは下記です。

サステナブルジーンズ:MUD JEANS(オランダ)

100%強制労働に頼らないカカオを使ったチョコレート:トニーズチョコレート(オランダ)

製造も輸送も全てがサステイナブルな家具:TAKT(デンマーク)

今後も、日本で語られている常識の外に出るために、定期的に外から学んで、未来に必要なマーケティングの可能性を探っていきたいと思っています。

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