台湾映画、香港映画も注目作が並びます。 大阪アジアン映画祭<見どころ紹介②>『トラブル・ガール』『作詞家志望』

2024年2月28日
全体に公開

2024年3月1日(金曜)から3月10日(日曜)まで、優れたアジア映画を紹介する映画祭「第19回大阪アジアン映画祭」が始まります。

この映画祭は、今年で19回目を迎えますが、全国からアジア映画ファンが集まり、日本国内の映画祭の中でも盛り上がる映画祭として知られています。近年では、その噂を聞きつけてか、首都圏から映画配給会社の方や映画評論家、映画製作者などが来場する姿や、海外の映画祭関係者の姿もみられます。

編集部も、参加するのをとても楽しみにしています。

※サムネイル画像は、コンペティション部門『作詞家志望』より

大阪アジアン映画祭とは
万博開催を控えた大阪の街を舞台に、優れたアジア映画の鑑賞機会と豊かな映像文化に触れ学ぶ機会を市民へ提供することを通じて、多様なアジア文化の理解促進、交流、映像リテラシーの向上、国際的視野を持った市民や映像制作者等の人材育成を図ります。「アジア映画のゲイトウェイ大阪」を世界にアピールし、文化・芸術・教育から観光・経済領域まで、また大阪からアジアまで、様々な観点を有する関心層が関わり大阪の発展に資する、開放されたプラットフォームとして映画祭を位置づけます。(公式サイトより抜粋)  

大阪アジアン映画祭
会期:2024年3月1日(金曜)から3月10日(日曜)10日間
場所:ABCホール、シネ・リーブル梅田、T・ジョイ梅田、大阪中之島美術館
公式サイト

https://oaff.jp/

アジアの新鋭監督・俳優に注目しています

近年の香港映画、台湾映画でも、若手の台頭がめざましい。香港映画界では「首部劇情電影計画」という、新人監督の劇場用長編作品への補助制度があり、昨年の第18回大阪アジアン映画祭で紹介された『香港ファミリー』(エリック・ツァン・ヒンウェン監督)、『流水落花』(カー・シンフォン監督)や第36回東京国際映画祭で紹介された『年少日記』(ニック・チェク監督)が、その補助対象作品として製作されています。また、その他にも、映画製作会社「MM2」による新鋭監督プロジェクトからは、香港映画祭2023で紹介された『7月に帰る』(ネイト・キー監督)などが製作されていて、新鋭監督が毎年のように登場する結果となっています。

この流れは、台湾映画界にも存在し、今回、コンペティション部門に選出された台湾映画『トラブルガール』(ジン・ジアフア監督)も、新鋭監督の作品です。初長編で、コンペティションに選出されていて、要注目の監督です。

『トラブル・ガール』※日本初上映

(C)Geppetto Film Studio

この作品は、昨年の第60回金馬獎において、歴代最年少(12歳)で、主演のオードリー・リンが最優秀主演女優賞を受賞したことで、話題となった作品です。この時、同時にノミネートされていた方のなかには、昨年の第18回大阪アジアン映画祭薬師真珠賞を受賞したルー・シャオフェン(『本日公休』)、第36回東京国際映画祭ワールドフォーカスで紹介された『白日の下』主演のジェニファー・ユーなどが選出されていましたが、下馬評を覆し、受賞したのは、『トラブル・ガール』のオードリー・リンでした。

あらすじ
小曉はADHDの少女。学校では孤立し、家でも母親とはうまくいかず、父親は仕事で不在がち。彼女を理解してくれるのは担任のポールだけだった。しかし、嵐の日、彼女は母親とポールの不倫を見てしまい…。(大阪アジアン映画祭公式サイトより抜粋)

この作品、さらに注目ポイントがあります。それは、主人公の母親をアイビー・チェンが演じていること。『軍中楽園』や『悲しみより、もっと悲しい物語』で印象的な演技をしていた彼女ですが、最近、映画作品でみないな(観たいなと思っていた)と思っていたところ、この作品で母親役を演じていて、驚きました。

『悲しみより、もっと悲しい物語』を観て、号泣していた編集部としては、ぜひ、彼女の新しい挑戦に期待して観たいと思います。

作品情報
監督: ジン・ジアフア CHIN Chia-Hua
出演:オードリー・リン、アイビー・チェン
、テレンス・ラウ
103分/2023年/台湾

『トラブル・ガール』Trouble Girl (小曉) 大阪アジアン映画祭作品紹介ページ
https://oaff.jp/programs/2024-co12/

『作詞家志望』※日本初上映

(C)2023 Sonatina Film Limited All Rights Reserved

もう1本、注目の作品が、この香港映画『作詞家志望』です。実は、前述の『トラブル・ガール』がオードリー・リンが主演女優賞を受賞した第60回金馬獎において、この作品の主演ジョン・シュッインもまた、主演女優賞にノミネートされていたからです。

また、この作品のノリス・ウォン監督は、初長編作品『私のプリンス・エドワード』が、前述の香港の補助制度「首部劇情電影計画」の支援を得て、製作された新鋭監督で、同作品も第15回大阪アジアン映画祭のコンペティション作品に選出されたいたので、2つの意味で、注目度の高い作品だと考えています。

あらすじ
作詞の才能があると信じた女子高生が、その後10年間、あらゆる手を使って作詞家になろうと奮闘するが…。監督の自伝的要素を取り入れつつ、香港人に愛される広東ポップスをテーマに描いた青春コメディ。(大阪アジアン映画祭公式サイトより抜粋)

近年の香港映画の傾向として、現代の香港人の姿に近いテーマを描くことが多いですが、この作品では、監督の自伝的作品として描かれています。ノリス・ウォン監督は、元々、作詞家として活躍されていた経験を持っていて、この作品には、その時の事柄が反映されていると言われています。

今年の大阪アジアン映画祭は、コロナ禍ではお呼びできなかったゲストが来日される予定で、この作品のノリス・ウォン監督も、来日予定です。

ぜひ、監督登壇の回を鑑賞して、この作品の成り立ちについてのお話をお聞きしたいと思います。映画祭は、直接、製作者の方のお話の聴くことができる機会があるのが、素晴らしいですね。もっと、多くの方が、この映画祭という「機会の価値」に気づいていただけると、嬉しいなと感じます。

作品情報
監督: ノリス・ウォン Norris WONG
出演:ジョン・シュッイン
、エリック・コット、アンソン・チャン、サブリナ・ン、タン・ライイン
109分/2023年/香港

『作詞家志望』The Lyricist Wannabe 大阪アジアン映画祭作品紹介ページhttps://oaff.jp/programs/2024-co05/

   【執筆者:藤井幹也】
映画情報「Life with movies」 の運営を担当。 年間400本以上の作品を映画館で鑑賞しつつ、国内で開催される映画祭(東京国際映画祭、大阪アジアン映画祭、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭、フランス映画祭、イタリア映画祭等)へ参加している。作品配給側の視点ではなく、作品鑑賞側・観客側の視点を持ちつつ、客観性と多様性を持つ映画情報を届けるべく、と日々活動中。活動エリアは、京都を中心に、関西地域ですが、映画祭へ参加のため全国各地を飛び回る日々。
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