医薬品の自己負担増へ:選定療養を拡大

2024年1月18日
全体に公開

前回、混合診療は部分的に解禁されているという話をしました。今回の診療報酬改定では、そのうちの「選定療養」が拡大されることとなりました。

これに伴い、後発医薬品(ジェネリック医薬品)があるにも関わらず、先発医薬品を使用した場合には、患者の自己負担が増えることになります。

選定療養とは?

そもそも日本では、誰でも医療が受けられるよう、必要かつ適切な医療は、保険診療により提供すること、とされています。

他方、「必要かつ適切な医療」からは外れるものの、患者のニーズが多様化するなかで、患者自身が選択し得るものとして「選定療養」が設けられています。

最も古くから選定療養が活用されているのは、患者の快適性・利便性の向上に資するもので、所謂、差額ベッド代などが挙げられます。その他にも、(紹介状等がないにも関わらず)大病院に行きたい場合の追加費用や、制限回数を超えた医療行為の実施などがあります。

これらの項目は、基本的に、医学的な必要性が明確でなく、将来的な保険導入を前提としないものとされています。

ここは重要なところで、「必要かつ適切な医療」は保険医療で提供するという前提に立ち、医学的根拠が明確なものについては、保険導入の可否を検討すべきことが確認されています。

長期収載品に対する選定療養の活用

さて、昨年〜今年にかけての議論で、後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の使用が、選定療養の対象に加わることとなりました。

同じ効能を有する後発医薬品があるにも関わらず、医師が長期収載品を処方する理由として、「患者が希望するから」という理由が多かったことなども考慮して、選定療養という枠組みが活用されることになったようです。

導入後の患者負担については、下図の通り、長期収載品と後発医薬品の価格差の1/4相当が選定療養の対象となり、患者の自己負担となります。その他の部分については、保険給付の対象となり、通常と同じく1〜3割が患者の自己負担となります。

ただし、選定療養の原則に立って、医療上の必要性があると認められる場合や、そもそも薬局に後発医薬品の在庫がなく、患者が選択できない場合等には、全額、保険給付の対象となります。

自己負担が増える患者だけでなく、長期収載品を製造・販売している製薬企業の多くも影響を受けることになるため、施行される今年の10月に向けて準備が必要となりそうです。

参考文献

  • 中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会「特定療養費制度の在り方に係る基本的方向性(案)」(平成16年12月3日)
  • 中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会「制限回数を超える医療行為について」(平成17年6月29日)
  • 厚生労働省「医療制度構造改革試案」(平成17年10月19日)
  • 中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会「評価療養及び選定療養の具体的な類型の指定等について」(平成18年7月26日)
  • 中央社会保険医療協議会総会「長期収載品(その1)」(令和5年11月24日)
  • 中央社会保険医療協議会総会「長期収載品(その3)」(令和5年12月15日)
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