あなたの夢が語る秘密のメッセージ:「え?ダジャレじゃん」

2023年7月30日
全体に公開

前回、夢には「顕在内容」「潜在内容」があり、夢を見る際には「検閲」が働き、「妥協産物」として偽装されて表現されたものが「顕在内容」だとフロイトは考え、これを「夢の作業」と呼んだというお話をしました。今回は、さっそく簡単な例を見てみましょう。

上はUnsplashのTyler Nixが撮影した写真/下はillsut image

夢①:あま〜いコーヒー

ある中学生の男の子は、ある日、仲の良い友人の加藤君ととても大きなけんかを学校でしてしまいました。どう考えても加藤君が悪いのに、彼は謝る様子もない。その男の子は、加藤君をボコボコに殴りたいような怒りを抱えたまま帰宅し、眠りにつきました。その夜、彼はこんな夢をみたのです。

「夢の中で、僕はなぜかすご〜くあま〜い缶コーヒーをゴクゴク飲み干してました。普段、コーヒーなんか飲まないし、苦くて好きじゃないのに」。

ちなみにこの彼、コーヒーは大人の飲み物だと思っていて、思春期真っ盛りの彼は心身ともに早く大きな大人になりたいと思っていました。さて、この夢について、皆さんはどのように考えますか?

その日、加藤君と大きなけんかをしたという記憶およびその感情をまずは整理する必要がありそうです。フロイトは、夢を作るための材料、つまり、整理される必要がある記憶のことを「日中残渣」と呼びました。ここに過去の記憶や体験も混じって加工が加えられます。本当は加藤君を「ボコボコにしたい」気持ちがあるけど、夢の中で、やっつけた血だらけの加藤君が登場しては、どうも気分が悪いし後味も悪い。脳の「番人」加工が必要だと判断します。さて、ポイントは、どう加工するかです。彼の中にある大人になりたい、大人にならなきゃという想いも作用して、彼にとって大人の飲み物であるコーヒーに、妥協案として砂糖が加えられる、つまり、加糖されます。

もうお分かりでしょうか?夢の中で、加藤が加糖に変換され、甘いコーヒー(加糖されたコーヒー)という視覚化されたものとして「顕在内容」になっていたんですね。「大人として」加藤君への怒りをグッと飲み込んで、あるいは、加藤君そのものを飲み込んでしまいたいほど激しい怒りを抱えていたかもしれません。

なんだ、ダジャレじゃないか。そう思った方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、私もトレーニングの一環として週4回の精神分析を体験していますが、夢って、ほんとこんな感じです。セラピストと話しながら「ははぁ、こんな想いがこんな感じで加工されてたのか」と気づくことがたびたびあります。そして、夢の様々な加工のされ方についても、フロイトは記述していますので、興味がある方はフロイトの「夢判断」などをぜひ読んでみてください。

上はUnsplash:Илья Мельниченкоが撮影した写真/下はUnsplash:Илья Мельниченкоが撮影した写真

夢②トラと恐怖と恋心

ちなみに、もうひとつ、おまけですが、ロンドンで夢に関する講義を受けていた際に用いられていた例があります。それは、「あるイギリス人の思春期の少年は、ある日、トラに出会う夢を見た。とても怖く、今すぐ逃げ出したい気持ちもあったが、なぜか飼い慣らしたい気持ちを抱きながら恐る恐る近づいていくところで夢から覚める」といった内容でした。「その少年は、タイからやってきた少女に恋をしていた」。

もうお分かりでしょうか。そう、Thai girlが加工されTigerとして「顕在内容」になっていた、ということですね。なんだ、ダジャレじゃないか。でも、洋の東西を問わずこんな感じなんですね。私は何だかホッとしました。皆さんも、自分の夢の「顕在内容」の意味について、知りたくありませんか?

参考文献

フロイト / 高橋義孝訳 (1969). 夢判断 上・下. 新潮文庫

トップ画像:Unsplash:Jr Korpaが撮影

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