BBQは最高の学び
五木田です。ヒロック初等部というオルタナティブスクールでカリキュラムディレクターと校長をやっています。
ワイルド&アカデミックな環境で、子どもが主役となって「育ち」や「学び」を主体的に勝ちとる、“福利(=well-being)を広げていく学校”です。
昨年の11月に子どもたちとバーベキューをしました。もちろんヒロックでは企画はすべて子どもたち。
ぼくたちはその実行の後押しをするだけです。
ちなみに、第1回目に書いたバーベキュー場に電話をした男の子の話はこの時のものでした。
今回は別の視点から、子どもたちが日常から学びを得ている、というお話をします。「火をつける」という単純な作業から始まった、互いに教え、学び、成長する喜びを感じる過程をお伝えできたら。
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バーベキューがはじまって15分ほどたった時です。
あるグループが全く火がつきませんでした。
「困ったなぁ、すぐに火が消えちゃうよ。」
落ち葉や小枝に火がついても、少しすると火が消えてしまうのです。
「やった!ついた!!」
「あーまた消えちゃった」
この繰り返しです。
その時、別のグループから歓声が上がりました。
「〇〇くんとお父さん、とっても火をつけるのが上手だよー!!」
別のグループにはバーベキューを何回か経験している子と保護者がいました。
「ねえ!教えて」
「もう一回やって見せて!」
みるみるうちに火がついたグループの周りに子どもたちが集まりました。
「火が燃え続けるには空気が必要なんだよ」と、その子
「小さい木から大きい木に火が移ると、炎は出ないんだ。だけれど、木の中でじっくり燃えてる。こういう「食べられる火」を目指してごらん」と、保護者。
子どもの中には、プライドが邪魔をして「教えてもらうこと」を嫌う子もいます。しかし、その子も心から耳を傾けていることがわかります。瞬きするのも惜しいようにじっくり火が広がっていくのを見ています。
「なるほど...」口から心から理解した声が漏れ出ていました。
火がついた炉の周りで様々な感想を言い合っている中、自然と1人、また1人と自分のグループの炉に戻って行きました。
もちろん、今知ったことを自分たち自身で試すためです。
「このボーボー、燃えてるところで、油断しちゃいけないんだよ。このボーボー燃えてる火からおっきい木に火が移るまでじっくり見るんだよ。」
「おっきい木に火が移るまで、ちっちゃい枝を入れると燃えやすいよ」
「じゃあぼく、枝探してくるよ!火を見てて!」
「あとやっぱりうちわがないとダメだ!もってくればよかったー」
「ほんとに空気を送るのと送らないのだと全然違うねー」
それぞれのグループで知識が伝わって、別の言葉に姿を変え、納得され、体験されていく。
だれかの知識が子どもたち全体の財産になった瞬間です。
「教えてくれてありがとう。」
「すごいね。よく知ってるね。」
教えた子もうれしそうです。同時に教えた子がいいました。
「みんなで成長したよね。またバーベキューきたいね。」
教えたほうが偉い、教わった方が偉くないという世界ではありませんでした。
お互いに伝え合い、試し合い、学び合う時間でした。
こういった瞬間に出会えば出会うほど、子どもは学びたいんだ、知ることが楽しいんだ、と強く感じます。
子どもは学力によってランクづけされたいわけではありません。学力のランクをつけられることと、学びたい、学びたくないということはイコールではありません。
考えれば大人もそう。そもそも人ってそういう存在ですよね。
「楽しく深い学びを。子どもにも大人にも。」この言葉をあらためて感じる時間に出会えることは幸せ以外の何者でもありません。
最後は、おいしいお肉を食べてにっこり。
実はこのバーベキューで一つ失敗がありました。
以前、バーベキューの練習として教室内でサンドウィッチパーティを開いたのです。
その時に野菜が余ってしまいました。なので、一人当たりの分量を子どもたちがシミュレーションして買い物をしたのです。特にお肉は生もの。残したくない!という想いから、本当に真剣な顔で計算をしていました。
その結果ですが、子どもたちからはこんな声が。
「もっともっとお肉食べられたのに!!」
「ちょうどいいと思ったら全然足りなかった!」
「また今度企画しようね」
楽しいバーベキューはそんなやりとりで幕を閉じました。
まだまだ学びは続きそうです。
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第4回までお付き合いいただきありがとうございました。毎週水曜日、朝7時の公開でした。これからは不定期での連載になります。
オルタナティブな学び場はヒロック初等部だけではありません。公教育にも素敵な先生がいらっしゃいます。
これからは僕の考えやヒロック初等部以外にもそのような場や人も紹介していけたら思います。
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