「学年」をなくして算数を学んでみたら
五木田です。ヒロック初等部というオルタナティブスクールでカリキュラムディレクターと校長をやっています。
ワイルド&アカデミックな環境で、子どもが主役となって「育ち」や「学び」を主体的に勝ちとる、“福利(=well-being)を広げていく学校”です。
前回に続き、ヒロック初等部ならではの日常をお伝えします。
ヒロックには自由進度学習といく時間があります。読み書き、計算を中心として自分でめあてをたて、「ギリギリできない」課題に取り組み、ふりかえる時間です。
プログラミングとゲームが大好きなある男の子がいます。
友達の誕生日にはscratchでゲームを作ってプレゼントするほどです。
自由進度学習の時間は基本的にプログラミングを促すことはしません。代わりに好きなことをとことん突き詰めるマイプロジェクトの時間も、自由の時間も時間割にあるからです。
男の子からの提案
ある時、彼からこんな提案を受けました。
「よへいさん、自由進度のとき、scratchやりたいんだけど」
「(この子が提案してくるの珍しいな...)うん、どういうことやりたいの?」
「昨日 scratchの本読んでたらsinとcosっていうのが出てきたんだ。だからそれ知りたい」
「オッケー、わかったよ。じゃあ15分後にわかったことをまた教えて。」
こんなやりとりをしました。
しばらくして彼と話すと、
「なんとなく不思議な線がかけることはわかったけれど、sinがどういうことかはわからなかった」
「そうか、じゃあyoutubeでsinの解説動画見てみようか。全部は分からなくても何か掴めるかもね」
「わかったー」
その日はこういったやりとりで終わりました。
翌日、彼と話すと
「よへいさん、ぼく、動画だと分からないかも。難しいのもあるけれど、どんどん説明がすすんでいっちゃう。」
「そっか、じゃあChatGPTに聞いてみる?」
ChatGPTに聞くと次のような回答。
どうやら彼は動画よりも文字で理解を深めるタイプなようです。
その後は何度も生成された文章に立ち止まりながら、プログラムを組んで三角関数に対して、「手触りのある理解」を深めていきました。
それから三日
三日ほど三角関数と向かい合ったころ、ある女の子が
「よへいさん、〇〇くんがやってるのわたしもやってみたい」
と相談してきました。
「楽しそうだよね。教えてもらったり、隣に行ってやっているのを見てみれば?」
そう返すとトコトコと歩いていき、その男の子の隣で活動を見ていました。
彼女は掛け算や割り算などはやっていません。でも、彼女は数を使うことで、不思議な模様が描ける、ということを知りました。
もともと絵を描くことが好きな女の子でした。
数とアートに関係があるということ。このことを知ったことが彼女にとっての成長です。
数日後、ひとり、またひとりと彼の周りに集まっていきました。
彼の自由が、他の子の学びを広げた瞬間です。
教室の反対側では漢字歌を歌いながら漢字の読みを覚えているグループの歌が聞こえてきます。
「9行目まで読めた!!」
とある女の子の声が響いたところでその日の自由進度学習の時間が終わりました。
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オルタナティブスクールという形態上、特別な学びのように思われることもあります。
しかし、行っていることは「それぞれが今、知りたいことを知る。できるようになりたいことに向き合う」ことです。
これは特別なことではありません。
学びたいことを学べる権利、それは「これを学んでみたい!」と言った時に起こる障害を除いていくことから始まります。
一教育者として「これを学んでみたい!」という瞬間の尊さを大切にしたいものです。
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