人気YouTuberが高級ブランドを爆買いするワケ「確定申告スタート」最速で終えた2年目の視点

2024年2月18日
全体に公開

2月のこの時期、いつもより仕事が忙しいです。

なぜか? 確定申告があるためです。

会社員として給与の「一本足打法」だったころは、確定申告とは無縁。その言葉を聞いても正直、ピンときていませんでした。会社が税金のことは代理でやってくれるためです。

ただ、副業を一昨年から始めて事情は変わりました。さらに、今は2つのウェブメディアで編集長として、業務委託をしている編集者やライター、フォトグラファー、識者のみなさんらとのお付き合いもあり、“確定申告がらみ”の仕事や用事も増えました。

今日は、確定申告2年目の私がみた「いちからわかる確定申告」と、YouTuberがなぜハイブランドを爆買いするか、を解説したいと思います。

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確定申告を「やらないといけない」組と、「まったく無縁な会社員」組との間には大きな川が流れており、対岸から確定申告組に遅ればせながら、渡ってきた感じです。

ビジネスパーソンは日頃、領収書をもとに経費精算を1カ月〜2カ月以内に処理されていると思いますが、「期限を過ぎたら認められないから、直前にバタバタ」ということもあると思います。

確定申告は、毎年期限が3月15日。経費精算の「もっとしんどい版」だとイメージしてください。1年分を一気にまとめるため、1日、2日で終わることはまずありません。

私は初めてだった昨年、税務署にギリギリに滑り込みました。その反省から、今年は弥生会計の青色確定申告というウェブサービス&青色確定申告会という個人事業主をサポートしてくれる会に入って、折を見て準備してきました。その甲斐あって、期限1カ月前の2月16日が申告スタートなのですが、すでに完了しました。スッキリ!

「税理士に頼めば楽チン」であることは違いないのですが、個人の事業がそれほど複雑ではないので、2年目は補助輪付きの自力でe-TAXにて、PCで作って申告はスマホでサクッと終えました。

今回は確定申告ってナンジャラホイ? という人に向けて、2年目をサクッと終えた私が知ったかぶりで解説します。

神田税務署|東京国税局

確定申告の考えはシンプル

副業解禁の流れが強まるなか、トピックス読者の皆さんにとって一番身近で、私のケースでもある個人事業主として収入を得る(副業を含む)ケースで説明します。

確定申告をざっくりいうと、1年間の①売上(収入)から、②必要経費を引いて、③残った所得から課税額を計算することです。(本給与が2000万円以下で、副業収入が20万円に満たない場合は確定申告は不要。多くの会社員はこれに当たる)

仮の話で、私がライター業で、このトピックス連載から1年間で100万円を得ている(①売上)としましょう。この売上を得るために取材をしています(②必要経費)。

東京から大阪に出張して、喫茶店で取材をして、ホテルで1泊。翌日には博物館に入館料を払って取材、売店で資料として書籍も買いました。撮影に必要なカメラのSDカードを新たに買って、写真の保存はDropbopxを使っている。コワーキングスペースで執筆しました。

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これら事業の売上を得るために、必要な支出であれば、②の「必要経費」として申告できます。これら連載執筆のために経費が仮に1年間でトータル60万円かかったとします。

①100万円の売上に対して、②60万円の必要経費がかかった。差し引いた③40万円の所得が手元に残ります。そして、この40万円が所得税の課税対象になります。

確定申告では、税を一定額差し引く④「控除」もあり、実際は③よりも、おさえた金額が「あなたが今年払うべき、所得税の対象」として計算されます。

ざっくり、この一連の流れが確定申告です。

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領収書のお金がそのまま返ってくるわけではない

身近に、「お店で領収書をもらっている人やシーン」を見かけませんか? 「経費扱いにできる、できない」といった声もよく聞くと思います。

私は「会社員一本足打法」の時代、「事業主はなんでも経費にできて、いいなぁ」と内心、思っていました。職場で「領収書の精算」をしているように、お金がそのまま戻ってくると思っていたのです。

ただ、副業をきっかけに確定申告をする“対岸”にわたり、それが大いなる勘違いだと知りました。何も知らなかった、恥ずかしい......。

先ほどの事例で、私が60万円の経費分を領収書の束で持っていたとしても、その額が「領収書の精算」のように返ってくることはありません。会社のように立て替えてくれるところがありませんので。事業主である私が払っている費用です。

繰り返しですが、確定申告は、①売上のために、②経費がどれだけどれだけかかったのを差し引いて課税対象の所得を出すこと。領収書は、その②の証明や仕訳のために要るのであって、経費精算のように誰かがお金を返してくれるわけではありません。

会社員が、会社で立て替えを精算ができているのは、確定申告のように、会社が社員に代わって①売上の計算と、そのためにかかった②経費の計上をしてくれているからです。

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ネットでよくみる「ジムの会費」が経費扱いになるか?

個人事業主で、無駄遣いや事業に関係性のない経費をつかって領収書をコレクションしても、意味がありません。

例えば、スポーツクラブに通う費用が経費扱いになるか。そんなGoogle検索の足跡や解説がネット上に山ほどあります。

ただ、それはその人が「事業で売上を得るために使ったか」「事業に結びついているかどうか」に尽きます。どの質問も答えは一緒です。

ジムのケースなら、個人のための健康維持なら経費NG。一方、インストラクターだったり、トレーニングの様子をコンテンツ化して収入を得ていたりすれば、経費対象にも。

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私は確定申告1年目、税務署の窓口に出向いて、自分が気になる経費の扱いを直接、聞きました。税理士さんや青色確定申告会、または玉石混交のネット検索に頼らずとも、ダイレクトに書類を提出する当事者(税務署)に確認するのが、一番正確だと思ったからです。

事業が大きかったり、複雑だったりすれば、税理士さんに頼るのがやはりベストでしょう。一方で副業1、2年目ぐらいは自力でもいいと感じます。

確定申告で税務署内が混み合う時期だったのですが、それでも「右も左もわからない私」に窓口から出てきた担当者が、とても親切に教えてくださいました。

やはり「事業の売上を得るために、そのお金を使ったかどうか」。そして、プライベートな支出との線引きや割り振り(家事按分:かじあんぶん)も、「正しい説明が書類と共にしっかりとできるか」だと説明を受けて理解しました。

経費精算のようにお金が戻らなくても、領収書は大事です。それは、かかった経費を「証明するため」です。

先ほどのケースで、売上が100万円あったっとして、領収書の控えが抜けていて、20万円分しか手元になかったとしましょう。

①売上100万円ー②経費20万円=③80万円の所得

80万円が課税対象になり、さっきより多くの税金を払うことになります。損をするとかそういう話ではなく、経費を引いて80万円が手元に所得として残っているのであれば、それに税金がかかりますよ、という話です。税金を払ったあとも、手元に残るのは、40万円の所得より多いこともあります。

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人気YouTuberが、なぜハイブランドを爆買いしているのか

人気YouTuberは、時計やバッグ、車など「高級ブランドを爆買いした」動画をよくあげています。これを“確定申告、自力で2年目のジャーナリスト目線”でみると、人気YouTuberがいかに稼いでおり、元々の撮影経費が安いかを想像できます。

ある動画制作者が、YouTubeの運営で、年間に①売上が1億円だったとします。

ただ、撮影は自宅で、自撮りが中心。編集も自分でやっているとします。ほとんど経費はかかっていません。何をどう計算しても、②必要経費が500万円だとしたら、所得税の課税対象は控除を度外視すれば、③9500万円の所得に対してとなります。

一方、「ヴィトンのバッグ爆買いした」「ロレックス、1本うん千万円」の動画を撮った場合は違ってきます。この動画で①売上をあげるために、ヴィトンもロレックスも②必要経費として計上するでしょう。

くどいですが、その購入額がそのまま「会社員の領収書精算」のように返ってくるわけではありません。ロレックスを経費扱いしても、ロレックス購入額は支払い済みです。ただ、経費としてトータル8000万円をかけたとしたら、①売上1億円ー②経費8000万円=③所得2000万円に対して課税の計算をします。

日本のトップYouTuberは、ハイブランドの「先行販売」によく呼ばれて爆買いしています。ハイブランド側とすれば、一気に買ってくれて宣伝・広告塔となる(企業案件かどうかは知りません)。YouTuber側は、一般人ができない「ハイブランドの爆買い」をコンテンツ化することで、フォロワーを楽しませています。

一方、これら爆買いも、確定申告では、経費扱いして「動画制作にこれだけ経費がかかっています。売上はこれだけで、差し引いて、所得はこれほどです」と申告しているでしょう。他にも撮影や編集をスタッフに外注することで、経費は加算されます。100均で爆買いするのではなく、ハイブランドなのには、税金対策の事情もあると思います。

家賃が数百万円から1千万円もするような豪華な家に引っ越しても、決してこっそりしていない。それだとただの作業場で、「これだけ高い必要ありますか?」となります。自宅ルームツアーをしているのも、それをしないと一部でも「経費扱い」できないからです。

税務署から、もし「こんな贅沢な家の家賃の一部を経費扱いしているけど、ほんとなの?」と調査で聞かれても、「みてください、この動画です。私は動画コンテンツ制作で売上をあげるために必要です。このため経費を使っているのです」と説明が可能です。

一方、取得価額が10万円以上・耐用年数が1年以上のものは「資産」として計上して、減価償却を行う必要があります。今回、クラウドサービスの弥生会計を使ったのですが、「資産」扱いか「経費」扱いかを問われました。

私もヒカキンさんや、チャンネル登録者数1.1億人を超えた「MrBeast」の動画をエンタメとして楽しんでみています。とても真似できない世界をエンタメで展開しています。

例えば「ランボルギーニから手を離さなかった人にプレゼント」。ただ、これも視点を変えれば、「ランボルギーニ購入は動画コンテンツの売上のための経費や資産扱い」になっています。

蛇足ですが、YouTubeを始めたばかりで、間違っても売上が高くない段階で「爆買いをするYouTuber」の真似っこをしないことです。売上が低くて、経費だけかかると、それってシンプルに赤字(マイナス)なので。

  ◇

このコラムでは、新聞記者として長らく経験を積み、現在はウェブメディア編集長やPodcastパーソナリティとして活動する剣道愛好家の野上英文が、MBA取得で得たビジネス視点を加えて、世の中をまるっと“二刀両断”で切り込みます。

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▼野上英文著『朝日新聞記者がMITのMBAで仕上げた 戦略的ビジネス文章術』(BOW BOOKS)

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