<CES2024速報>Key Noteから見る今年のトレンド

2024年1月13日
全体に公開

年始の風物詩であるCESが開催されました。今回は13万人が来場しており昨年よりも多くの人で賑わいました。CES2024にて行われたKey Noteから5つの注目セッションをピックアップしてサマリを記載します。全体のトレンド感をつかんでいただくための材料としていただけますと幸いです。

1. 2024年は産業メタバースのターニングポイントとなる(SIEMENS社)

SIEMENS社のCEOは、同社が提供するデジタルツイン・シミュレーションソフトウェアの可能性について語っています。デジタルツインの活用により、ものづくりのプロセスは大きく進化します。アイデアを試す工程が迅速になり、メタバース上のコラボレーション機能は、開発者の生産性を大幅に向上させます。

自動化も一段と進化します。バーチャルPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)は、次世代の制御装置開発において自動化を支援します。高度に自動化された工場における膨大なデータをAIが情報解析し、重要なパターンを認識することができます。

マイクロソフトやAWSとの協業では、産業用機器のオペレーションに関するコパイロットやローコードプラットフォーム(Mendix)を開発しています。運用者や開発者は、従来の複雑な言語の学習から解放され、誰でも簡単にコンピュータコードを生成することが可能となります。

2.コラボレーションによるイノベーション(L’Oréal社)

L’Oréal社が開発した「ビューティー・ジーニアス」は、AIによる肌診断や個別の製品推奨を行うアプリです。生成系AI、AR、コンピュータビジョンの技術を組み合わせて開発されています。50か国で過去10年に行われた10,000以上のメイクアップアーティストによるテスト結果や150,000以上の皮膚科医の注釈付き画像データなどがトレーニングデータとなっています。また、UXを高めるために数千の消費者との会話データもトレーニングデータとして使用されています。

美容器具に関しては、数々のアワードを今回のCESにて受賞しています。体が不自由な人向けのメイクアップデバイスでは、非常に精密なセンシングおよび補正技術を用いて、常に正しい位置に口紅を塗るためのサポート機能がついています。その他、節水に優れたシャワーヘッドや、赤外線技術を組み合わせたドライヤーなどが発表されました。注目するべき点は、革新的な技術を持つパートナーシップやコラボレーションを通じて、多岐にわたる分野で受賞歴のある製品を生み出している点です。

3.生成型AIおよびAR技術の最新適用事例(Walmart社)

生成型AIを用いた商品検索が提供開始となりました。例えば、「サッカーの観戦パーティーで必要なもの」といった検索が可能となり、検索性と閲覧体験の向上に取り組んでいます。マイクロソフト社他の大手AI企業のLLMに加え、自社に特化した独自のLLMを構築することで、その精度を向上させています。

また、Walmartが数十年にわたって蓄積してきた商品補充に関する専門知識を活用し、顧客のオンラインショッピングカートに適切なタイミングで適切な商品が登録されるAIを開発しました。このAIシステムはWalmart社の在庫計画とも連携しており、最適な在庫再分配にも適用されています。

ARに関しては、「Shop With Friends」というソーシャルコマースプラットフォームがベータで提供され始めました。これは、オンラインで選択した洋服を友人と共有し、友人からのフィードバックを得ることができるというものです。

従業員向けのアプリは、ARを用いた在庫棚検索や、生成型AIを用いたチャット機能などがサポートされており、従業員のスキル向上や生産性の向上に取り組んでいます。

4.建設現場のDXを促進(HD Hyundai社)

建設現場では、その危険性から深刻な人材不足に直面しています。また、環境への影響もその性質上、配慮が求められる業界の一つです。HD Hyndai社の講演では、建設現場の安全性確保、生産性向上、サステナビリティの3つを実現する製品開発およびビジョンについて語られました。

ショベルカーなどの建設機器には、高精度のカメラとレーダーが搭載され、さらに機器同士が通信を行える環境にあります。作業員や障害物を検知し、リスクを特定し、衝突を防ぐための減速や停止をすることができます。また、収集したデータをAIで分析することでパフォーマンスを自動分析し、作業工程の見直しを提案することで、アイドルタイムやダウンタイムを軽減することができます。

その他、建設機械の操作がオフィスワークのような役割に進化し、デジタル・ツイン・システムによるバーチャル・コントロールの可能性が模索されています。データ駆動型アプローチを用いて熟練オペレーターの作業パターンを学習し、AIアルゴリズムを改良することで、生産性が60%向上するケースも見込まれています。

動物のような自律型四足歩行ロボットを開発するGravis Robotics社との提携については、同社の技術をうまく掘削機の制御に活用しています。具体的には、石を積み上げる作業などで、それぞれの石のサイズと形状を正確にスキャンし、構造的な安定性と効率を確保しながら最適な積み上げ計画を自動的に生成して実行しています。

5.医療における生成AIの活用(Elevance Health社)

Elevance Healthは、ヘルスケアサービス事業を展開する米国企業です。講演では、医療と健康データのデジタル化がこれまで業界内で過小評価されてきたことを指摘しています。業界の特性上、信頼の構築や文化の醸成プロセスに時間を要することも言及していました。

そのうえで、同社では、コンシェルジュ・ケアに注力しており、患者や介護者が最適な医療提供者を選択できるようにサポートしています。AIを介しての質問応答や、VRを活用した医療サービスの拡充に努めています。

さらに、医療従事者の負担を減らすべく、1000ページにもおよぶ保険契約文書や保険金請求規則を生成AIを活用して簡素化し、臨床医の手に迅速に届けることも行っています。これにより臨床医の生産性を25%以上向上させることに成功しています。

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