米国小売業界の最新トレンド(GroceryShop 2023)

2023年12月1日
全体に公開

2023年9月、食品小売業者向けのカンファレンスGroceryShop 2023 がアメリカ・ラスベガスにて開催されました。このイベントでは、セッションやピッチコンテスト、各種の展示を通して米国の最新リテールトレンドが紹介されていました。

今回は、そんな中から会場で注目を集めていた ”スタートアップピッチコンテスト” の内容を全3回の記事で紹介していきます。

スタートアップピッチコンテスト「Shark Reef」

第二ラウンドに進出した6社

今回、12社のスタートアップが参加し、第一ラウンドで3分間のピッチを行いました。その後、6社が選定され、第二ラウンドで審査員との間でQ&Aが行われます。 そして、この6社のなかから2社にアワードが贈られます。1社が審査員賞で、もう一つが参加者の投票によって選ばれる賞になります。

全3回の記事では、この第二ラウンドに進出した6社を2社ずつ紹介していきます。

1社目:AIで価格設定を最適化する ”Luca”

Luca詳細

まず紹介するのが AIで価格設定を最適化するLuca となります。

Lucaは、Uberで価格設定アルゴリズムを開発し、プロジェクトをリードしたSurti氏が創業した会社です。

現状、多くの小売業者は大量の商品の価格設定を、まだまだエクセルシートに頼っている現状があり、とても非効率な状況に置かれています。

また、価格設定の方法についても商品の仕入原価に一定の利益率を足した価格にする傾向があり、実際の需要動向などを反映できていないため、より高い価格で売れる機会を逃しています。

そこでLucaが提供するのが、AIを活用した価格最適化プラットフォームです。膨大な内外のデータを分析し、商品ごとに最適な価格をAIによって導き出すことが可能になります。具体的には、データソースとして、競合店の価格変更の情報やマクロ経済データ、自社の販売実績などを統合的に判断し、需要動向に応じた価格を設定できます。

またLucaの大きな特徴は、AIの価格設定の判断の根拠や理由をユーザーにしっかりと伝えられる点があります。最終的な価格設定はユーザーが行うべきというLucaの設計思想のもと、ユーザー自身がAIによる価格設定の根拠や理由をもとに、最終的な価格設定が行える製品仕様になっています。

2社目:AIを活用した高精度の需要予測サービス ”Guac”

Guac詳細

続いてご紹介するのが、AIを用いた需要予測ソリューションを提供するGuac です。

現在、多くの食料品店では正確な需要予測ができないことによって、過剰在庫による食品の廃棄や、棚が空いてしまうことによる販売機会の損失が大きな問題になっています。

この問題に対してGuacは、高精度な需要予測ツールによって解決を行っています。具体的には、Guacは独自のアルゴリズムを用いて、SKUや日付、または店舗ごとに正確な予測ができるシステムを提供しています。

高精度な予測を実現するために、最新のAI技術を取り入れるだけではなく、天候や休暇、スポーツイベント、競合のプロモーションなどの要因を数百の変数としてモデルに取り入れて、さらにそこから小売業者ごとに3週間かけてカスマイズして最適化することによって、高精度な予測を実現しています。

直近の事例では、Guacの高精度の需要予測によって、98%の予測精度で、食品廃棄を33%削減して、利益率を25%改善させた例が紹介されていました。

次回の記事でも魅力的なスタートアップを2社紹介していきます。
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