優秀な人が実践する「睡眠」の技術

2024年1月9日
全体に公開

2024年が始まりました。本当に辛く大変な1年の始まりになりましたが、今年もみなさんのキャリアの参考となる理論やノウハウを、人事の視点から解説していきます。よろしくお願いいたします。

お正月休みはいかがお過ごしだったでしょうか。少しゆっくり休めた方、またニュースなどを見て不安な気持ちで寝不足が続いた方もいらっしゃるかもしれません。私たちの健康意識は、コロナ禍を通じてずいぶん変わりました。リモートワークなど新たな働き方や、長期に渡って生活が抑制されたことによって、フィジカルな病気やケガだけではなく、メンタル面も含めて、健康の不安を抱える社員が急増し、これまでなかったようなケアが求められるようになりました。

一方でグローバル企業は、コロナ禍よりかなり前から社員の健康管理に真剣に取り組んでいました。特に階層の高いリーダーであるほど、健康状態に細心の注意を払い、毎日安定したパフォーマンスが出せるよう、会社から細やかな指導をされます。

なかでも、「睡眠」はフィジカル・メンタルともに大きな影響を与えるため、その管理にはかなり力を入れています。

今回は、みなさんに今年一年、心も体もよい健康状態を保っていただくために取り組んでほしい「睡眠スキル」について解説します。

◇「アブセンティーズム」と「プレゼンティーズム」

経済産業省は2016年度から「健康経営」という考え方を推進しており、コロナ禍もあって多くの企業に取り入れられました。

これを受けて、日本企業の多くは、社員が病気やケガで休んで働けない状態(アブセンティーズム)を防ぐための対策を講じています。たとえば、「産業医による面談」や「年1回の健康診断の受診」などです。

ところが現代は、働ける状態ではあるものの、何らかの健康上の問題によって本来のパフォーマンスを発揮できていない状態(プレゼンティーズム)の社員が多く、アブセンティーズムよりも生産性への影響が大きいことがわかってきました(「コラボヘルスガイドライン」、P37、厚生労働省)。

みなさんも自身の日々の状態を振り返ってみると、病気やケガではないものの、「寝不足で会議に身が入らない」「休み明けはなんとなくやる気がでない」など、最高のパフォーマンスとは程遠い状態で働いていることもあるのではないでしょうか。

グローバル企業では、この「プレゼンティーズム」に注目してきました。特に問題になっていたのが、寝不足による集中力や創造力の低下です。そこで、日々のパフォーマンスを安定させるために「睡眠を安定させること」に重きを置いています。

「睡眠の安定」は、ごく簡単な知識さえ持っていればそれほど難しくないこともあり、リーダーになる人は「必須の習慣」として身につけます。

◇睡眠を安定させる方法①「睡眠タイプを把握する」

あなたは「朝型」でしょうか。それとも「夜型」でしょうか。

睡眠サイクルのことを「クロノタイプ」と呼びますが、クロノタイプは人によって異なり、「朝型がいい」わけでも、「夜型がいい」わけでもありません。

また、遺伝子によってある程度決まっているので、たとえば「自分は夜型が快適だ」という人が、無理やり早い時間に寝ようとしてもなかなか眠れないということもあります。

まずは自分のクロノタイプを把握して、自然と眠りにつける就寝時間の目安を知ることが大切です。

ただし、同じ人でも若いときには夜型になる傾向が強く、年齢を経るなかで、自然と朝型へと変わっていくことは多々あります。この傾向を利用して、米国の一部の学校では「スタート・スクール・レイタ―」と呼ばれる始業時間を遅らせる取り組みも見られます。

自分のクロノタイプは、こちらのサイトで簡単に調べることができます。自分がどういうタイプがわからない人はぜひ調べてみてください。

◇睡眠を安定させる方法②「睡眠サイクルを把握する」

次は、「睡眠サイクル」を把握しましょう。

睡眠は、入眠後、「ノンレム睡眠(深い睡眠)」と「レム睡眠(浅い睡眠)」を交互に繰り返しながら徐々に目覚めに向かいます。このとき大事なことは、2つあります。

①「ノンレム睡眠」の時間を確保すること

ノンレム睡眠が短いと、たとえ長時間寝ているつもりでも眠りが浅いので疲れが残ります。

ノンレム睡眠のなかでも、もっとも深いレベルの眠りは「睡眠時間全体の前半」に訪れます。ですので、就寝してから最初の2,3時間の睡眠環境を特に大切にしましょう。スマホの通知を一定時間切っておいたり、できる限り遮光される環境にしたりと、まず深い眠りの時間を確保します。

②「レム睡眠」のときに目覚めること

睡眠時間の後半は、レム睡眠の時間が増えてきます。そこで、眠りがもっとも浅いタイミングでうまく目覚めるようにすると、すっきりと起きることができます。このタイミングは人によって異なりますし、「睡眠時間が長ければよい」というわけでもありません。

体調が良い週末や、予定に余裕がある日などに、自然に眠いときに寝て、目覚まし時計を使わらずに起きることを何度か試してみてください。

自然に目が覚めると多くの場合、「まだもう少し眠りたいな」と感じるはずです。ただ、ここで頑張って起きあがる習慣をつけます。この「自然と目覚めるとき」こそ、起きるべきタイミングです。

慣れるまでは寝不足感があるかもしれませんが、自分のサイクルに慣れてくると、目覚まし時計なしでも自然とすっきりと目が覚めるようになります。

最近では、スマートウォッチやスマホのアプリなどで睡眠サイクルの計測ができます。私も毎日Apple Watchで睡眠サイクルを計測して、自分の睡眠サイクルや睡眠時間を確認しています。

睡眠サイクルが可視化されると、ノンレム睡眠が短い翌日は少し昼寝の時間を設けるなど、パフォーマンスを安定させる対策がとりやすくなります。

◇睡眠を安定させる方法③「就寝前に見る情報をコントロールする」

寝る直前まで仕事をしたり、スマホを見たり……睡眠のためには避けるべきとわかっていても、すべてやめるのは難しいと思います。実際私も、毎日寝る直前まで仕事をしていたり、原稿を書いたりしています。

しかし、このとき一つだけ意識してほしいことがあります。

それは、「寝る前に悪いニュースを見ないこと」。

悪いニュースなど刺激が強い情報を見ると、体内で「コルチゾール」というホルモンが分泌されて交感神経を刺激し、入眠を妨げます。みなさんも、寝る前に悪いニュースを見ると不安な気持ちになったり、気になってなかなか眠れないという経験があるのではないでしょうか。

人間の心理として、悪いニュースほど気になってつい見続けてしまう傾向があります。これを「ドゥームスクローリング」といって、ある程度避けられないところもあります。

ですが、眠る前だけはこれを避けましょう。緊急対応が必要で、そもそも眠ることをあきらめるのであれば構いませんが、次の朝に対処するのであれば、わざわざ眠る前に見る必要はありません。

私自身、管理職になったばかりのころに、この指導を受けて睡眠サイクルを大切にしてから、日々のパフォーマンスが大きく変わりました。もともと寝る直前までメールをチェックしていて、とくに悪い報告から見る癖があり、非常に目覚めが悪い体質だったのですが、寝る前だけは割り切ってネガティブな情報を見ないようにしてからは、目覚まし時計を一切使わずに毎日同じ時間にすっきり目が覚めるようになりました。仕事上も、その方が良い対応ができることを経験的に学びました。

今はとくに、不安な気持ちになるニュースが多いタイミングですが、寝る前だけはそこから目を離し、意識的に遠ざけてください。その方がしっかりと休息できて、正しい判断をしやすくなります。

今回お伝えした「3つの睡眠術」は、誰でもすぐに実行できるものです。今年一年、最高のパフォーマンスを安定して発揮するためにも、ぜひトライしてみてください!

Top画像@Linustock

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