コストカット型経済から脱却し、新たなステージへ移行するための5つの柱 〜 総合経済対策から

2023年10月23日
全体に公開

内閣府は2023年10月10日、「令和5年第13回経済財政諮問会議」を開催し、経済財政政策担当大臣から、総合経済対策の策定に関する内容を公開しています。

コストカット型経済から脱却し、新たなステージへ移行する歴史的チャンス

設備投資に続き、物価や一人当たり賃金が上昇し、賃金と物価の好循環が生じつつあり、バブル崩壊後30年来のコストカット型経済から脱却できる歴史的チャンスを迎えているとしています。

これまで、バブル崩壊後、投資・賃⾦を抑制するコストカット型経済が定着。マクロ環境改善が先⾏する中、賃⾦は概ね横ばいとなって、日本は世界的にみても賃金が上がらない状況となっています。

投資増加に続き、賃金と物価が好循環する「新たなステージ」への光がみえ、政府では歴史的チャンスと捉えています。

出典:内閣府 令和5年第13回経済財政諮問会議 2023.10.10

「新たなステージ」に向けた総合経済対策の役割

政府では、コストカット型経済から、活発な設備投資や賃上げ、人への投資による経済の好循環、熱量あふれる「新たなステージ」への変革に向け、総合経済対策でスタートダッシュを行う方針です。

コストカット型経済から、今後は集中変革期間(3年程度)とし、社会課題解決を成長のエンジンに変え、新たなステージへと推進していくとしています。

経済対策の役割は、長年続いたコストカット型経済から、活発な設備投資や賃上げ、人への投資による経済の好循環、熱量あふれる新たなステージに移行するチャンスであり、経済対策でスタートダッシュする。

⽬指すべき姿は、人口減少を乗り越え、新技術や生産性が牽引する高い成長力と、「成長と分配の好循環」による適度な物価上昇とそれを上回る賃金上昇 などを挙げています。

出典:内閣府 令和5年第13回経済財政諮問会議 2023.10.10

以下、5つの柱について、解説していきます。

<第1の柱> 足元の急激な物価高から国民生活を守る
<第2の柱> 地方・中堅中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長の実現
<第3の柱> 成長力の強化・高度化に資する国内投資の促進
<第4の柱> 人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革の起動・推進
<第5の柱> 国民の安全・安心の確保

<第1の柱> 足元の急激な物価高から国民生活を守る

課題と対応の方向性

継続する物価⾼が国⺠⽣活を圧迫しており、電気・ガス、ガソリン、⾷料品など⾝近な品⽬の物価上昇が⼤きく、賃⾦は上昇しているものの、低所得世帯を中⼼に、回復を実感しにくい状況となっています。

物価⾼による⽣活圧迫は、消費を抑制し、景気を下振れさせるリスクにとなっています。リスクが顕在化すれば、動き始めた経済の好循環が後戻りしかねない状況となっていkます。

そのため、政府では⾜元の急激な物価⾼から国⺠⽣活を守るち、今こそ、成⻑の成果を国⺠に適切に還元していくとしています。

景気下振れリスクに対応し、動き始めた経済の好循環の流れを戻さず、コストカット型経済に後戻りさせない方針です。

<第2の柱> 地方・中堅中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長の実現

課題と対応の方向性

30年ぶりの⾼い賃上げを中堅・中⼩企業や地⽅に浸透させ、⼀過性に終わらせないとしています。

今春は、業績改善がなくても賃上げに踏み切った中⼩企業も多く、⽣産性向上を伴う構造的な賃上げが課題が顕在化しました。

特に、地⽅や中⼩サービス産業を中⼼に、⼈⼿不⾜が深刻化し、インバウンド需要の取りこぼしなど地⽅の成⻑の制約となっています。

こういった状況の中、地⽅・中堅中⼩企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地⽅の成⻑を実現を目指しています。

検討中の施策例として、以下の内容を挙げています。

・賃上げ税制の減税制度の強化
・リ・スキリング⽀援等を含め、構造的賃上げに向けた労働市場改⾰
・中⼩・⼩規模企業の賃上げ・⼈⼿不⾜解消のため、省⼈化・省⼒化投資の簡易で即効性のある⽀援
・農林⽔産品の輸出拡⼤、海外市場開拓 等

<第3の柱> 成長力の強化・高度化に資する国内投資の促進

課題と対応の方向性

GDPギャップが解消に向かう中、⽇本経済の潜在成⻑⼒の強化が課題となっています。⼈⼿不⾜の顕在化し、世界需要の取りこぼしなど、供給制約が成⻑の⾜かせとなっています。

潜在成⻑⼒を⾼めないと、海外ショックやインフレに脆弱な経済となるおそれを指摘しています。

政府では、新技術イノベーションの社会実装、フロンティア開拓等を通じた⽣産性向上、成⻑⼒の強化・⾼度化に資する国内投資を促進。海外需要を取り込める⾼い成⻑⼒を実現していくとしています。

検討中の施策例として、以下の内容を挙げています。

・⻑期投資が不可⽋な戦略分野の投資促進に向けた減税制度創設の検討
・無形資産投資を後押しする、特許権等の知的財産から⽣じる所得に関する減税制度創設の検討
・宇宙・海洋等先端技術開発や技術実証、商業化⽀援
・イノベーションを牽引するスタートアップ等の⽀援 等

<第4の柱> 人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革の起動・推進

課題と対応の方向性

⼈⼝減少・少⼦⾼齢化の下、⼈⼿不⾜が常態化しています。地⽅の⽣活インフラを⽀える⾏政・公的サービス、物流、教育、医療・介護など、労働⼒⼈⼝の減少に対応する社会変⾰が急務となっています。

こういった状況を踏まえ、デジタル技術の活⽤を徹底し、地⽅の活性化や⾏政・公的サービスの提供の⾼度化・効率化を推進していくとしています。

また、⼈⼿不⾜下における国⺠・企業の創意⼯夫・事業意欲を後押しするなど、様々な⼿法で社会課題にきめ細かく対応していくとしています。

検討中の施策例として、以下の内容を挙げています。

・デジタル⽥園都市国家構想の全国展開
・公共サービス・⾏政⼿続きのデジタル改⾰
・教育・医療・介護等のDX改⾰
・⼈⼿不⾜対策
・認知症対策 等

<第5の柱> 国民の安全・安心の確保

課題と対応の方向性

気候変動の影響等により、線状降⽔帯による豪⾬や記録的⼤⾬が相次ぐなど、⾃然災害の激甚化・頻発化が顕著となっています。

厳しさを増す外交・安全保障環境の変化、こども・若者の性被害防⽌など、国⺠の安全・安⼼の確保に対し、改めて向き合う必要性を挙げています。

相次ぐ災害に屈しない国⼟づくりを進めるとともに、厳しさを増す外交・安全保障環境の変化に対して適切に対応を講じるなど、国⺠の安全・安⼼の確保に向けて万全を期すとしています。

検討中の施策例として、以下の内容を挙げています。

・防災・減災、国⼟強靱化の機動的な推進
・ALPS処理⽔の処分に関する⾵評影響や⽣業継続に対する不安等への対応
・⾃衛隊の対処能⼒強化、戦略的海上保安体制の強化
・こども・若者の性被害防⽌のための緊急対策
・花粉症対策 等

まとめ

本日の岸田首相の所信表明演説では、

30年来続いてきたコストカット経済からの変化が起こりつつある。変化の流れを掴み取るため、何よりも経済に重点を置いていく

と経済対策への重要性を強調されており、今後の経済政策に注目です。

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