今後の生成AIビジネスにおける5つのトレンドとは?

2023年10月19日
全体に公開

生成AIは、2023年の最も注目度の高いテクノロジーの一つとなっています。生成AIが企業に実装されていくことで、企業の生産性向上に大きく寄与することが期待されています。多くの企業では、生成AIの採用に向けた計画に取り組んでいるケースが見られています。

ABIリサーチが公表した「Generative AI Business Outcomes: Identifying Enterprise Commercial Opportunities」では、生成AIのビジネスユースケース、実装の課題、市場のトレンド、戦略的推奨事項を含め、生成AIに関しての評価を行っています。この中から、5つのトレンドをとりあげます。

目次
トレンド#1:2030年までに生成AIの採用は企業に4500億米ドル以上をもたらす
トレンド#2:企業は生成AIを実装する前に企業戦略が必要
トレンド#3:企業の規模が生成AIのアプローチに影響を与える
トレンド#4:生成AIのユースケースは異なる時期に現れる
トレンド#5:強力な規制枠組みが必要だが、これまでにはほとんど存在していない

トレンド#1:2030年までに生成AIの採用は企業に4500億米ドル以上をもたらす

企業の生成AIに対する関心は非常に高く、ABIリサーチは2030年までに12の業界で4500億米ドル以上の価値をもたらすと予測しています。

生成AIは各業界でさまざまな形で採用され、小売と電子商取引がこの技術の採用の最大の受益者となると予測しています。

ビジネスでの生成AIの価値は、生産性の大幅な向上、新製品/サービスの市場投入までの時間の短縮、およびカスタマーサービスの向上につながることを挙げています。

トレンド#2:企業は生成型AIを実装する前に企業戦略が必要

企業は、ガバナンス、法律の考慮事項、従業員のガイドライン、および具体的なビジネスアウトカムを含む、生成AIに対する明確に定義された企業戦略を持つ必要があるとしています。

生成AIの広範な採用は企業の文化とプロセスに巨大な変化をもたらしますが、多くの企業はその準備ができていない状況を指摘しています。

明確な企業戦略なしに生成AIを採用する企業は、断片的に終わってしまい、失敗のリスクの可能性も挙げています。

生成AIの企業戦略で考慮するために必要なことととして以下のことを挙げています。

・アプリケーションプログラミングインタフェース(API)モデルへのアプローチ
・ビジネスプロセスでのLarge Language Models(LLM)の使用に対する企業のアプローチ
・運用での生成型AIの最適なユースケースの特定
・プロンプトアプリケーションに使用する信頼できる情報の特定
・利用するガードレール/コンテンツセキュリティ機能の決定
・生成AIモデルをどこにデプロイするかの選択(例:オンプレミス、仮想プライベートクラウド、サードパーティのデータセンター)

トレンド#3:企業の規模が生成AIのアプローチに影響を与える

多国籍企業(MNC)、中小企業(SME)、およびスタートアップは、生成AIに対して異なるアプローチを取っています。MNCはセキュリティの脆弱性を非常に懸念しており、生成AIの採用と成果を出すことへの遅れが懸念されています。MNCは主流のベンダーと提携して、オンプレミスで概念実証(PoC)で取り組むといった例を挙げています。

SMEもまた生成型AIに対するこの探索フェーズにまだいます。一部のSMEはAmazon Bedrockのようなローコード/ノーコードプラットフォームを使用していますが、セキュリティの懸念、運用の複雑さ、および法外なコストがSMEの中での採用を抑えているとしています。

一方、スタートアップはブランドの差別化を作成するためにできるだけ早く生成AIを採用するといったことに取り組んでいます。しかし、これらのLLMはMNCが開発しているものほどファインチューニングされておらず、特定のユースケース/業界ととどまっているものが多いとしています。

トレンド#4:生成AIのユースケースは異なる時期に

生成AIのユースケースは広範であり、同時に実現することはなく、ABIリサーチでは、B2B市場が生成AIを3つの明確なフェーズで採用すると見ています。

第1フェーズ:従業員の補完
コンテンツ生成、チャットボット、およびリサーチサポートは、クリエイティブ、エンターテイメント、小売、および教育の業界に大きな影響を与える

第2フェーズ:サービスの有効化
企業は生成AIを使用してクライアント向けのサービスを構築し、リスク管理および製品ライフサイクル管理のようなより複雑な従業員のプロセスをサポート可能に

第3フェーズ:プロセス自動化
プロセス自動化、予測保守、およびシステム最適化は、製造、輸送および物流、産業、およびエネルギーセクターなど、各業界に大きなインパクト

トレンド#5:強力な規制枠組みが必要だが、これまでにはほとんど存在していない

企業の生成AIの大量採用への最大の障害の一つは、セキュリティへの対応です。企業は生成AIからのアウトプットが不正確または信頼できない可能性があり、それが不良なビジネスアウトカムにつながることを心配しています。

さらに、企業は著作権侵害、知的財産(IP)盗難、およびその他のデータプライバシーの懸念を恐れています。これに加えて、サードパーティコンテンツの使用の合法性についても未整理な部分も多いとしています。

生成AI業界は、これらのセキュリティの課題を克服するための強力な規制枠組みを採用する必要があることも挙げています。

強力な規制枠組みを採用することが求められており、政府はこのプロセスを主導し、対称的で中央集権的な規制枠組みを開発することが期待されていますが、これまでには異なる国々が異なるアプローチを示していることが、市場リスクをもたらしていることも指摘しています。

今後の展望

いずれにしても、今後の生成AIのトレンドも踏まえ、企業が自社のビジョンや戦略を明確にし、その推進するための手段の一つとして、生成AIに取り組んでいくことが重要でしょう。生成AIの採用が目的にならないように、企業は、セキュリティリスクへの対応や制度面などにも配慮しながら、企業の競争力を高めるために取り組んでいく必要があるでしょう。

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