更年期障害のほてり(ホットフラッシュ)を軽減させる海外のウェアラブルデバイス
女性の更年期障害は、女性ホルモンのゆらぎ・減少、心理的・性格的要因、社会的・環境的要因などが重なっている。
症状としては、血管運動神経症状(ホットフラッシュ)、精神症状(憂鬱・イライラ・不眠)、身体症状(めまい・動悸頭痛・ 疲労)があるが、その中でもホットフラッシュは更年期障害の代表的な症状である。
ただし、欧米人と日本人を比較した場合、ホットフラッシュの経験割合、症状の重症度は、日本人が低くなっている。
ホットフラッシュを経験したことがある割合は、ヨーロッパ人(フランス・ドイツ・イタリア)が67%、アメリカ人が68%に対し、日本人は62%である。
ホットフラッシュの中等度〜重症の割合は、ヨーロッパ人40%、アメリカ人34%に対し、日本人は16%となっている。
そのような理由もあり、欧米では更年期障害のほてりを解消するウェアラブルデバイスが出てきているが、その中から5製品を紹介する。
1.Zera Cooling Crescent
Zera Cooling Crescentは、更年期女性のための冷却デバイスであり、首の後ろを冷却することで、ホットフラッシュを緩和することができる。素材は柔らかく、簡単に着脱可能であり、USBで充電も可能である。
更年期障害の女性たちにヒアリングした際、「発汗がわけもなく出る」「会社や電車の中で5分位、たまらなく汗が滝のように吹き出す」「プレゼン中に滝汗が出て余裕のないプレゼンになってしまい悔しい」「職場でホットフラッシュが突然起こり、大量の汗が顔面と首に吹き出るようなことがあり困った」などがあった。
首の後ろであれば、洋服でデバイスが隠れることもあり、会社や電車の中で「周りに知られず」デバイスを装着することもできるため、働く女性にとっては有効である。
筆者が、バイタルデータをトラッキングできるウェアラブルリングを職場で装着していた際、かなりゴツめのリングだったため、周囲から突っ込まれたことがある。見えない位置にデバイスを装着できることは重要な観点のひとつである。
2.Kulkuf
熱電冷却により、ほてりを瞬時に緩和できるデバイスであり、知り合いが取り寄せして使用していると聞いて調べてみた。実際に製品をみていないのでなんとも言えないが、動画やホームページを見る限り、比較的大きめのウェアラブルデバイスである。
同社で特許取得済みの冷却技術で、蒸発冷却を使用し身体から熱を奪い、従来の冷却方法に代わる効果的で便利な製品を提供している。
冷却リストバンド、冷却キャップ、バイザーなどの製品があり、更年期のほてりに悩む女性、アスリート、アウトドア愛好家、暑い天候下でも涼しく快適に過ごしたい女性たちが愛用している。
3.Embr Labs
MIT卒業生が2013年に創業。研究室で汗だくなのをなんとかしたいと製品化された。当初は女性向けのデバイスではなかったが、その後、女性向けのデザインに変更されたようだ。米国に住む男性の知り合いが、女性向けデバイスになる前のデザインのものを使用していたと聞いた。
体温や睡眠をトラッキングし、デバイスから脳に信号を送ることで、ホットフラッシュを軽減させる。
筆者が実際に使用してみた感想は、
・冷却機能もあるためか、想像以上に大きくて重い。
・YouTubeを見てもわかるが、手首の手のひら側に装置をつける仕様のため、パソコン作業の際に邪魔になる。
・時計機能がないため、別のウェアラブル(Apple Watchなど)や腕時計もつける必要があり、2個リストバンドをつけるのは厳しい。
もう少し軽量化しないと、日本人には馴染まないと感じている。
4.Astinno
英Astinno社CEO・Peter氏が、更年期症状について女性に話しを聞き、ホットフラッシュや寝汗の対処法を聞いてユーザーリサーチした結果、更年期のほてりやのぼせ、発汗を抑制するための自動冷却製品である『GRACE』のアイデアを思いついたのがきっかけである。
ブレスレット型ウェアラブルデバイス『GRACE』は、ユーザーの体温を常時モニターし、ほてりやのぼせ・発汗を検知したら、自動的にデバイスが冷たくなり、体の熱を冷ます仕組みになっている。
5.Ebb Sleep
脳の前頭皮質の代謝活動を減らし、レーシングマインドの感覚を沈め、眠りに落ちて健康的に回復力のある睡眠を可能にする。
ホットフラッシュによる不眠のある更年期女性に装着したところ、入眠時間、中途覚醒、夜間発汗の有意な改善が見られたとのこと。
Amazonや米ウォルマートでも販売されている。
6.まとめ:日本でホットフラッシュ軽減デバイスは浸透するか?
筆者がフェムテックの新規事業を相談を受ける中で、ホットフラッシュ軽減デバイスに代表されるような、欧米で流行っているデバイスを日本でも展開したいという話しをいただくことがある。しかし、日本で展開するには法規制など注意が必要である。
まず、薬機法や医療法など、医療機器への該当性については、厚生労働省または都道府県所管部署へ相談してほしい。
特許についても、J-PlatPatなど最初はある程度、自分たちで調査可能だが、コストや時間・難易度を踏まえ、弁理士等へ依頼するのを検討すべきである。
ビジネスモデルは、AZX(エイジックス)やPCPLなどで調査し、弁理士等への相談を検討してほしい。
日本は、医療やヘルスケアには厳しい法規制がかかっている。特に効能表示は注意が必要であり、迷った時には専門家に相談することが必要である。
ビジネスモデルをがっつり組み立ててお金をかけてから、専門家に相談したらNGで事業計画をピボットのような状況になりかねない。戦略を立てたら、早めに専門家へ相談することが重要である。
7.お知らせ:9月15日(金)Femtech座談会
筆者が活動しているFemtech Community Japanでは、VC・投資家がウィメンズヘルス×イノベーションについて語るイベントを開催します。当日会場にいますので、ぜひ会場でお会いしましょう。
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