【上田慎一郎】映画監督と語るAI論

2023年7月7日
全体に公開

私は大学教員をしており、おもにAIやデータサイエンスの講義を担当しています。

麗澤大学の「AIビジネス入門」というコマでは、広くAI関連のトピックを扱っています。もちろんAIの技術的な観点の解説や今後の動向なども話しますが、今後の動向を考えるうえで、SF的な想像力も重要です。

そこで、想像力の刺激剤として、映画監督の上田慎一郎さんに来ていただきました。ちなみに、上田監督とは、PICORE株式会社という会社を一緒にやっています。

上田さんは、以前からAIにすごく関心を持っています。AIは、これからの社会を大きく変化させる可能性のあるテーマなので、アーティスト魂がほっとけないのでしょう。時折、AIについて語り合うこともありますが、映画製作においてAI活用することには、非常に積極的です。(この話はまた別のテーマで)

そんな彼がAIをテーマに撮ったショートフィルムが「キミは誰?」です。

内容はネタバレをしてしまうので、ぜひ直接見ていただければと思いますが、物語は、「会話サポートAI」というAIを軸に話が進みます。「会話サポートAI」は、会話をしているときに、次に話すべき内容を内緒で教えてくれるAIです。数年前なら、まだ突飛なものに見えたかもしれませんが、ChatGPTに慣れ親しんだ我々にとっては、割と近い未来に見えるかもしれません。

この動画は、時々一般向けの講演などでも使います。大学、高校、社会人向けいろいろな場所でアンケートを取りますが、「必要」「不要」が極端に偏ることはなく、半々くらいのケースが多いです。ちなみに、みなさんは必要だと思いますか?

この問題はなかなか難しいものです。不要派の意見としては、「自分の言葉ではないので、ちゃんとした信頼関係が構築できない」「依存してしまって、AIがないとコミュニケーションが取れなくなる」というようなものが多いです。

反対に、必要はですが、「吃音や極度のあがり症の人には、リラックスしてコミュニケーションに臨めるようになる」「認知症の人の会話をサポートできる」などがあげられました。

上田監督自体も、どちらがいいと思って作ったわけではないようです。そして、自分の疑問を考えるために、映像をつくることを通して、この問題に向き合いました。実はもともと考えていた脚本は、もう少しディストピアっぽい脚本だったようです。制作のプロセスを通じて、少しずつ考えをまとめていきました。エンディングが上田監督のメッセージになっています。

映像作品を見ることで、少し先の未来をリアリティを持って考えることができ、学生にも大きな刺激になりました。この動画を中心にした議論から、AIによる映画制作、そしてAIと人間の違いの議論に移っていきました。AIと人間の違いに関しては、次回記事をアップします!

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