マーケティングに大切なのは問題解決"だけ"なのか?スペキュラティブデザインの可能性から学ぶ

2023年4月4日
全体に公開

「トレンドや競合他社がやっていること」を追っているだけで、当たり障りのない企画ばかりになっている…

このような課題を打破するために学んだことを共有できればと思います。

スペキュラティブデザインから学ぶ

昨年から「スペキュラティブ・デザイン」を学んでいます。

読んでいる本は、「スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること」です。

問題解決だけがデザインではない。新しい視点を生み出す「もうひとつの」デザインの力。

企業のための問題解決、商品の売上向上。デザインと聞くとこうしたことを思い浮かべる人がほとんでしょう。しかし、現代の私たちが直面する課題の多くはもはや解決不能で、これらを克服するためには、私たちの価値観、信念、考え方を変えるしか他に手はありません。
スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。 より引用

デザインやアートの考え方が紹介された書籍なのですが、マーケティングの可能性を広げるためのヒントをたくさんもらっています。

スペキュラティブデザインの特徴

スペキュラティブデザインの特徴を要約します。

-アプローチ
・既存の価値、態度などの常識に問題提起をする
・代替策を提示する

-目的
人が未来について考えるきっかけを提供したり、既存の思考の枠組みを広げる

このように整理できます。

見る人に思考するきっかけを与え、「問い」を生み出し、いま生きている世界に別の可能性を示すデザインだと言われています。

スペキュラティブデザインの作品

学んでいる中で、長谷川愛さんのI wanna deliver a dolphin…という作品が印象に残っています。

『私はイルカを産みたい…』

出産というテーマに対して、既存の価値観を揺さぶり、未来を考える代替案が提示されている作品です。

※長谷川愛さんのサイトは、たくさんの思考を揺さぶる作品が紹介されているので、ぜひ興味がある方は眺めてみることオススメです。

人間は遺伝子を次世代に渡す方法として子供たちを育てるように遺伝的に仕向けられていますが、人口過剰と緊張した地球環境のために最適な状況で子供を育てることはより難しくなっています。このプロジェクトは、潜在的食物不足とほぼ70億人の人口の中、これ以上人間を増やすのではなく、絶滅の危機にある種(例えばサメ、マグロ、イルカ等)を代理出産することを提案しています。子供を産みたいという欲求と美味しいものが食べたいという欲求を満たす為に、食べ物として動物を出産してみてはどうか?という議論を提示し、そして如何に可能にするかという方法も示します。『私はイルカを産みたい…』
Ai Hasegawa

マーケティングに大切なのは問題解決"だけ"なのか?

マーケティングの世界では、「顧客の問題解決が大切」だとよく言われます。問題解決は大切であることは変わらないと思います。

一方で、問題解決の思考だけでは、本質的な価値を届けたり、違いをつくることが難しいこともあります。

そこで意識したいのが、スペキュラティブデザインのアプローチである「問題提起」です。

問題解決・問題提起のどっちが大事?

というorの考え方ではなく、

問題解決も問題提起も両方が大事で使いこなす

というandの発想を持てると

マーケティングの仕事の仕掛け方の幅や楽しみ方が広がると考えています。

マーケティングの世界にもある問題提起

マーケティングの世界にも問題提起は行われています。

わかりやすいのは、社会に問題提起をする広告でしょう。

昨日話題になっていた、LUXの #社会人らしい髪ってなんだろう のキャンペーンです。

賛否両論の意見が生まれていますが、社会に問題提起をすることで、潜在的な顧客の課題解決(自分の髪は自分で選びたい、けど選べない)を解決につなげています。

もう一つ。

高知県の移住促進キャンペーン #田舎暮らしは甘くない

この事例も、問題解決ではなく、問題提起の発想から生まれている仕掛けであり、一般的な自治体の移住促進キャンペーンとは「違い」づくりにつながっています。

スペキュラティブ・デザインから学ぶマーケティング

What If(もし~だったら)の問いをフルに活用して、現実とは異なったオルタナティブな選択肢を提案することが重要

マーケティングの仕事が、当たり前の発想だけになってしまっていたら…スペキュラティブデザインのアプローチからヒントをもらい、下記のような問いと向き合ってみましょう。


・既存の価値、態度などの常識に問題提起をするとしたら?
・未来の可能性を広げるために、自分たちが提示する代替策は?

フレームワークや既存データからの当たり前の発想から抜け出せる可能性は高まるはずです。

勘違いしてはいけないのは、SNSでバズらせるといった発想ではないということです。

「ブランドを通じて未来をより良いものにするための議論を生む」

社会や未来をより良いものにするための問いをつくること、がスペキュラティブデザインの本質だと考えています。

Appleも問題提起からパーソナルコンピュータの市場をつくっていた

スティーブジョブズの1983年のプレゼン動画が好きです。

当時、高価で大型なパソコンを生産していた巨人IBMに対して、
人が創造性や自由を獲得するためにパーソナルコンピュータが必要

この問題提起をして、新しい市場をつくり出してきた歴史があります。

目の前にある問題を解決するだけでは突破口が見出せなくなったら、社会や未来への問題提起をしてみること。

今日は、スペキュラティブデザインから学ぶマーケティング思考について考えてみました。

AIが問題解決を瞬時に支援してくれる世の中になる中で、マーケティングやデザインに求められる役割は「問題提起」であり、その問題提起に対して「粘り強く対話する力」なのではないか…

と考えています。

ぜひ、皆さんもご意見やご質問がありましたらコメントをいただけたら嬉しいです!

記事のテーマに対する問題提起も大歓迎です!

最後まで読んでくださりありがとうございました。

応援ありがとうございます!
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