DNAからできたナノエンジン

2023年10月24日
全体に公開

サイズが、70 nm × 70 nm × 12 nmの「DNA折り紙ナノエンジン」が開発されました。米国のアリゾナ州立大学とドイツのボン大学のチームによる10月19日にNature Nanotechnologyに発表された研究です[1]。エンジンのように同じ動きを繰り返し、それを連結したパーツに伝えることができる装置です。

Centola, M. et al. (2023) A rhythmically pulsing leaf-spring DNA-origami nanoengine that drives a passive follower. Nat. Nanotechnol. https://doi.org/10.1038/s41565-023-01516-x

このナノエンジンは、14,000個のヌクレオチドからできており、握力トレーニングに使うハンドグリップのような形をしています。

DNAでできたハンドル間には、特徴的なDNA鎖(下の図で赤から黄色になっている弓のような形の部分)がつながれています。青い丸が、タンパク質であるT7RNAポリメラーゼです。このRNAポリメラーゼは、下図のDNAの黄色い配列を認識してRNAを合成し始めます(転写)。

特徴的なDNA鎖の終わりの直前に転写を終止させる配列(赤い部分)が含まれています。このシーケンスは、ポリメラーゼに DNA のグリップを解放するよう信号を送り、バネが緩んでハンドルを押し離すことを可能にします。これにより、鎖の開始配列(黄色い部分)がポリメラーゼに近づき、転写が再び開始されます。これが繰り返されることで、脈動します。

https://doi.org/10.1038/s41565-023-01516-x

この動作にはエネルギーが必要ですが、転写、つまりRNA合成に必要なヌクレオチド3リン酸がその燃料になります。つまり、出来上がっていくRNA鎖に追加のヌクレオチドを結合するには、リン酸基のうち 2つを除去し、ヌクレオチドが結合することで、それがエネルギーとなるわけです。

さらに、下図の左側aの駆動制御ナノマシンに右側bの受動的フォロワを結合させると、ナノマシンがドライバとフォロワのペアができ、動きを伝達します。

https://doi.org/10.1038/s41565-023-01516-x

このようなナノデバイスの設計に利用されたのは、アリゾナ州立大学のチームが開発してきたoxDNAというサーバです。 このサーバーは、oxDNAおよびoxRNAモデルを使用してDNAおよびRNAナノ構造をシミュレートするということです。

将来的には、診断、治療、分子ロボット、および新しい材料として使うことが考えられるそうです。


[1] Centola, M. et al. (2023) A rhythmically pulsing leaf-spring DNA-origami nanoengine that drives a passive follower. Nat. Nanotechnol.https://doi.org/10.1038/s41565-023-01516-x

合成生物学は新たな産業革命の鍵となるか?」担当:山形方人

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