ハーバードが教える「本物のリーダーシップ」とは、他人の真似をやめること
学ぶとは真似ることから始まる、とよく言われます。ただ、憧れの誰かに近づこうと必死に真似をしても、ついぞその人と肩を並べたり、自らを誇りに思ったりできません。どうすれば良いのでしょうか?
理想のリーダー像など存在しない
MITスローン経営大学院のAdvanced Leadership Communicationという授業で、この課題に向き合いました。課題図書として指定されたうちの一冊が、HBS(ハーバード・ビジネス・スクール)のBill George(ビル・ジョージ)が書いた「Authentic Leadership」。直訳すると「本物のリーダーシップ」。意訳は「自分らしいリーダーシップ」です。
その書き出しは、思わず引き込まれる文章です。
この半世紀というもの、リーダーシップの研究者は1,000以上の調査研究を実施し、「これが一流のリーダーである」といえるスタイルや特性、資質を探ろうとしてきた。しかし、理想のリーダー像を描き出した研究は一つもない。ありがたいことだ。Bill George "Authentic Leadership"から
つまり、MBAの主要カリキュラムの一つである「リーダーシップ」の研究において、誰もが真似るべき「これぞリーダー像」というのは、存在しないのだということです。
![](https://contents.newspicks.com/topics/41/posts/47/images/20220912133946967_DtfniTfx.jpg?width=1200)
誰もジャック・ウェルチにはなれない
NewsPicksの記事を読んだり、本屋でビジネス書を手に取ったり、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」を視聴したりすると、憧れの対象が次々に登場します。
そこで発信される一言を胸に刻み、良い習慣やライフハックをまねたり、場合によっては持ち物や仕事道具まで一緒にしたり。そんな行動をしたことが、ありませんか?
私自身は長らく、尊敬する人生の先輩たちに憧れ、その背中を文字通り「追いかけて」きました。例えば駆け出し記者のころ、調査報道で飛び抜けた記事を書く「特ダネ記者」の先輩の一挙手一投足を真似しました。それで出来たこともありましたが、どうしても到達しなかった領域もありました。いつまでたっても、その人にはなれませんでした。
真似ること自体は「成長したい」という純粋な思いからくる行動で、他人からバカにされるものではないと思います。
一方、誰かの真似をするということは、本来の自分を偽ることです。そして、真似るを通り越して誰かに「なりすまそう」としても無理というもの。
1980年代に著名な実業家ジャック・ウェルチの下で働いたケビン・シュアラーはこう振り返ります。
「当時は、誰もがジャック・ウェルチのようになりたがっていました。ですが、リーダーシップにはいろいろなスタイルがあります。誰もが自分らしさを忘れるべきではなく、他人を真似るべきではありません」Bill George "Authentic Leadership"から
![](https://contents.newspicks.com/topics/41/posts/47/images/20220912134230255_IHzbODHl.jpg?width=1200)
「地に足をつける」ための一つの問い
学ぶ姿勢に躍起になるあまり、ほかの誰かになろう・なりすまそうとする姿勢に、いつのまにか陥っていないか……。私はこの論文を読んで、自問自答しました。
大事なのは「自分らしさを貫くリーダーであること」だといいます。
とはいえ、突然に「自分らしく」と放り出されても、戸惑ってしまいます。「それって、いったいどんな状態?」「何をすればいいの?」と。
私なりに「自分らしさを貫く」を日本語で解釈すると、「地に足がついていること」ではないかと思います。
子供の成長と一緒で、地に足をつけるには時間がかかります。
その成長を支えるステップについて、8つのチェック質問が論文では提示されています。
今回はそのうちの一つを紹介したいと思います。
自分の生活態度は一貫しているか。生活のあらゆる場面、たとえば職場、職場以外、家族の前、コミュニティのなかで、いつも同じ人間でいられるか。そうでないとすれば、何が障害となっているか。Bill George "Authentic Leadership"から
![](https://contents.newspicks.com/topics/41/posts/47/images/20220912135946883_mnbQVtsU.jpg?width=1200)
具体例を私が挙げると、次のようなケースは「一貫していない」と言えるでしょう。
・職場ではキッチリしているのに、家ではいつもダラダラしている
・上司にはヘコヘコしているのに、同僚や部下には厳しい言葉ばかり
・友達には親切なのに、タクシーや飲食店の店員さんらにぞんざいな態度
シンプルに「いつも表裏のない人である」とも言い換えられると思います。
「あの人がいつまでたっても遠い存在だ」「なりたい自分になれない」。そう悩んでいるとしたら、立ち止まって、生活態度や立ち振る舞いの一貫性をチェックしてみては、いかがでしょうか。
◇
感想や意見をコメント欄でお待ちしています。
NewsPicksで拙著のインタビュー記事が掲載されました。
![](https://contents.newspicks.com/topics/41/posts/47/images/20220912140045072_FQhSeHdO.jpg?width=1200)
![](https://contents.newspicks.com/topics/41/posts/47/images/20220912140045056_chOK6YEz.jpg?width=1200)
野上英文著『朝日新聞記者がMITのMBAで仕上げた 戦略的ビジネス文章術』(BOW BOOKS)
おかげさまで、アマゾン書籍・売れ筋ランキングで1位(編集部門、9月10日時点)
更新の通知を受け取りましょう
投稿したコメント