オール光ネットワークは2030年、2040年にどのように発展していくのか?

2024年5月16日
全体に公開

総務省は2024年5月13日、「情報通信審議会 情報通信技術分科会 技術戦略委員会 オール光ネットワーク共通基盤技術WG(第5回)」を開催しました。

今回はこの中から、想定するオール光ネットワークの発展イメージについてとりあげたいと思います。

2030年代の導入が見込まれる次世代情報通信インフラBeyond 5G(6G)の重点技術分野の一つとして位置づけられるオール光ネットワークです。

オール光ネットワークは、環境負荷軽減や信頼性・強靭性を実現する上での鍵となる技術であり、また、AI時代において分散化された計算機資源を連携して利用可能とするゲームチェンジャーとしても期待されています。

その実現に向けて、日本においては、主要な通信事業者が順次、オール光ネットワークの導入を開始するとともに、ユーザー側でも官民関係者がその利用の検討が進められています。

また、今後の強靭なデジタル産業基盤の構築に向けて、分散化するインフラ機能やAI間の連携を支える基盤としても期待されています。

この超大容量・高信頼・低遅延な情報通信ネットワークの実現等、通信基盤の高度化が求められる見込みとの認識の下、省電力化・高度化を目指す新たなネットワークシステムの設計・開発運用に関する研究開発の支援等の必要性が提言されています。

多様な主体が光ネットワークを構築し、これらが相互に接続し、大きなネットワーク空間をつくる、つまり、インターネットのようなネットワーク空間で、インターネットではありえない高品質通信を実現すべきとの提案も出ています。

こういった状況を踏まえ、以下のとおり、想定するオール光ネットワークの発展イメージをまとめています。

想定するオール光ネットワークの発展イメージ

現在はインターネットが主流となっていますが、2030年頃は、オール光ネットワーク実装期として、柔軟なAI開発等をサポートするAPNの展開を想定しています。

想定するユースケースとしては、
①ユーザー拠点からの複数データセンタへのアクセス
②モバイルフロントホールへの適用

が柱となっており、提供エリアや利用拠点は限定的となっています。

2040年頃?のイメージでは、オール光ネットワーク社会の成熟期?として、産業・社会のデジタル基盤としてのAPNを視野にいれています。

提供エリアや利用拠点の拡大も見込まれています。

出典:総務省 情報通信審議会 情報通信技術分科会 技術戦略委員会 オール光ネットワーク共通基盤技術WG(第5回) 2024.5.13

想定ユースケース

関係事業者から提案された想定ユースケースをみてみたいと思います。

【想定ユースケース①】ユーザー拠点からの複数データセンタへのアクセス

研究開発機関や企業等においては、機密性の高いデータをデータセンタやクラウドに渡さずに手元に保管したい一方で、計算機を自ら設置することは大きな負担となるため、遠隔地にある複数のデータセンタの計算資源を目的に応じて利用し、機動的なAI開発を行いたいとする潜在ニーズがある。

オール光ネットワークが以下の性能要件を満たし、RDMA等を活用し、ユーザー拠点(リサーチパーク等)から遠隔地にある複数のデータセンタの計算機に直接接続する環境を提供することで、こうした潜在ニーズに応えるユースケースを実現できると想定される。

<求められる性能要件(RDMAをサポートするための性能要件)>
・距離由来遅延(往復遅延10μsec/km程度)以外の伝送機器等での処理遅延を考慮した往復遅延は50~100マイクロ秒程度であること
・RDMAを利用するエンドツーエンドのサーバ区間において、輻輳によるパケットロスがなく、パケット廃棄率をランダム発生のみで10^-6以下であること

【想定ユースケース②】モバイルフロントホールへの適用

モバイル事業者等においては、モバイル通信に対する需要拡大に対応した基地局ネットワークの運用について、運用コストの低廉化を図りたいという潜在ニーズがあり、また、基地局ネットワークのインフラシェアリングを行うタワー事業者等にとっては、インフラシェアのできる設備範囲を拡大し、設備の相対的な運用コストを低廉化したいといった潜在ニーズがある。
オール光ネットワークが以下の性能要件を満たし、モバイルフロントホールに適用することで、
・センター設備(DU/CU)と基地局間を長距離化(現行10km水準を30km水準に)し、センター設備の集約化
・フロントホール回線を複数事業者で共有することによる割勘効果
・センター設備(DU/CU)と基地局(RU)の接続割当てに自由度を与え、トラフィック増減に応じた効率的な運用を実現などが可能となり、こうした潜在ニーズに応えるユースケースを実現できると想定される。

<求められる性能要件(潜在ニーズを満たすための性能要件)>
モバイルフロントホールでの長距離化や設備共有を図るため、オール光ネットワークで上にある基地局とセンター設備(DU)との間の遅延時間について、装置遅延を含めて、160μsec以内であること

今後の技術開発に向けて

総務省では、以下の2点を技術開発の基本的な考え方として設定しています。

想定ユースケースの実現を念頭に、低遅延・低消費電力や品質保証といったこれまでの専用線やダークファイバの持つ価値を提供しつつ、インターネットのように柔軟性を兼ね備えたネットワークとして実現すること
当該技術が広く活用され、普及することでエコシステムが拡大し、我が国のデジタル関連業界及びAI等のデジタル基盤を活用した様々な産業分野や科学技術分野等における競争力強化や経済安全保障の確保につながるよう、次の3点に沿った開発方針とすること。また、開発に当たっては、開発者だけに留まるのではなく、関連技術に詳しい産学官の様々なプレイヤーとのオープンイノベーションを意識すること。
①一部の事業者だけが用いるような技術開発としないこと
②技術自身の新規性や先進性に必ずしも固執せず、実態として広まることを優先すること
③多くの利用者が使いやすいものとすること

ネットワークがインターネットのような柔軟性を備えかつ、これからのデジタル基盤やAIの進展に対応したイノベーションを支援する、オープンな光ネットワークの進展が、超長期の開発視点とビジネス視点での展開が重要となっていくでしょう。

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