なぜ、デジタル技術の活用が地域課題の解決に結びつかないのか?
日本全国で、デジタル技術を活用による地域や社会課題の解決に向けた取り組みが進められていますが、その多くは解決に結びついていないという指摘も増えています。
総務省は2024年3月19日、「活力ある地域社会の実現に向けた情報通信基盤と利活用の在り方に関する懇談会(第4回)」を開催しました。今回は、この懇談会の資料から、デジタル技術の活用が地域課題の解決に結びつかない要因と、解消のための取組の方向性について、とりあげたいと思います。
デジタル技術の活用が地域課題の解決に結びつかない要因
これまでも地域DXの取組の推進がされてきていますが、必ずしも全てが地域課題解決に結びついているわけではありません。
地域社会が抱える課題は、
・人手不足
・働き手の確保地域社会が抱える課題•市場規模の縮小
・社会保障等の行政コストの増大
・地域産業の衰退
・他地域/海外への販路拡大
・インバウンド需要への対応
・公共・準公共サービスの維持
・住民の安全確保
など、山積しています。
総務省では、デジタル技術の活用が地域課題解決に結びついていない要因を分析し、大きく4類型に分類しています。
1)利用者端末までを繋ぐ利用環境が整っていない
2)デジタル化を担う人材がいない/定着しない
3)デジタル化の目的が不明確/関係者で共有できていない
4)収益化できない/自走モデルがない
といった要因をあげています。
![](https://contents.newspicks.com/topics/164/posts/156/images/20240323043647473_DOgRwYEF.png?width=1200)
一方、デジタル技術に期待される役割(例)は、
・労働生産性の向上
・データの有効活用
・産業の高度化・合理化
・公共・準公共サービスの効率化
・暮らしやすさの向上
などが挙げられています。
デジタル基盤を活用した地域課題解決や産業振興の在り方
デジタル技術の活用が地域課題解決に結びつかない要因とその解消のための取組の方向性では、
「実証が目的化してしまい、終了後にビジネスとして自走させられない」といった課題に対しては、アウトカム目標の明確化、収益化を前提としたプロジェクト設計の取り組みを挙げています。
また、「各主体が保有するデータがサイロ化していて連携できず、サービスが広がらない」といった課題には、データ標準化等の技術的課題の解決、安全なデータ利活用ルールの整理、モデルケースの創出といった取り組みを挙げています。
解消のための取組の方向性の論点では、以下のように整理しています。
■プロジェクトの自走化を促進するための方策
・実証の段階から、どのような観点でアウトカム目標を設定し、どのようにPDCAを回していくべきか。
・プロジェクトの収益化を図る上で重要なポイントは何か。収益化を実現するために国がすべき支援は何か。
・地域に必要でありながらも採算を取るのが難しいデジタル基盤は、どのように維持・発展されるべきか。
■地域の産業振興に資するデジタル基盤の実装・活用方策
・地場産業の振興・高度化のためには、どのようなデジタル基盤が必要であり、どのように実装・活用していくべきか。
・地域DXを担うべき地域のICT産業をどのように振興すべきか。
■地域の先進事例の他地域への普及方策
・地域の先進事例をいかに効果的に他地域へ普及させるか。
■地域データの流通・連携の方向性
・データの流通・連携を促進するためには、どのような技術的課題を解決する必要があるか。
・安全・安心なデータ流通を確保するためには、どのような利活用ルールが必要か。
・ビジネス化可能なモデルケースの創出のためには、どのような支援策が有効か。
「地域におけるデジタル化を成功に導くための7ヶ条」と地域DX自走化へのフロー
総務省では、令和4年度調査研究で、デジタル技術を活用した地域課題解決の取組についてインタビュー調査を実施。 その結果を分析したところ、デジタル化の成功要因として、次の7項目を挙げています。
![](https://contents.newspicks.com/topics/164/posts/156/images/20240323043919349_OTqc8Vn5.png?width=1200)
地域DX自走化へのフローでは、令和4年度調査研究で、計画策定、社会実証、実装・展開にあたって、自走化へのフローを分析したところ、各ステージごとに達成すべきポイントとして整理しています。
![](https://contents.newspicks.com/topics/164/posts/156/images/20240323043940630_mli6GCH0.png?width=1200)
今後の展望
地域におけるデジタル化を成功させていく、そして、地域DX自走化には、
・実装・展開に資するソリューションであるかの”判断・意思決定”ができている
・”実装のハードル”が洗い出されており、それらの”解決の方向性”が見えてきている
・計画策定~社会実証を通じて得られた”学びや経験・ノウハウ”が言語化されている
といった営みが必要になっています。政府の予算で実証実験で終わるのではなく、いかに地域のDXを実装させ、地域や社会の課題解決さらには、新しいビジネスや産業創造につなげていくといった、持続的なアプローチがますます求められていくでしょう。
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