バトンを渡せ!

2024年7月17日
全体に公開

●自治体を巻き込むためのマインドセットとは
角田:DNPさんは大企業としての信頼を繋げる役割があり、ハコスコさんは斥候部隊として技術や文化を探してくる。例えば、イベントや自治体で求めるマインドセットや望む姿勢があれば教えてください。

藤井:それは逆に角田さんに聞きたい。単なるお役所の業務をメタバース上でできるだけでは、マインドセットは変わりませんが、ゲームであれこれ作ると、子供たちや世界中の人が集まって楽しんでくれる。メタバース上で市民が楽しんでくれていると自治体が感じることが大事です。

角田:僕らはゲームメタバースを専門にしていますが、自治体には二つのことを考えてもらっています。一つは、全体で巻き込んでやっていくマインドセットです。メタバース空間は誰のために作るのか、住民がプライオリティの1位だと思います。観光客も歓迎ですが、地元のエンゲージメントが大事です。全員が当事者意識を持って使っていこうというマインドセットが必要です。そこで学校でもいいし、地元の不動産屋でもいいし、不登校支援のNPOでも婚活パーティーでもいいから、地元の方にうまくメタバース空間を使ってもらう。

もう一つは、新たなチャレンジとしての産業を生み出すことです。例えば、スタートアップや大企業がメタバース事業部を作り、そこで働く人を育成することで、リスキリングが進みます。例えばゲームメタバースの話で言うと、これは新たな産業を我が県に生み出すというマインドセットが必要です。東京や大阪のベンダーに3Dモデルを発注して納品されて終わりではなく、我が県に新たな産業としてメタバース産業が生まれることが重要です。

なので、自分たちのところで声をくんでいったり、例えばスタートアップが生まれたり、大きい老舗の企業がメタバース事業部を作り、そこで働いたりリスキリングされたりすることが求められます。例えば、Fortniteを作れるようになった人たちが、投資部や海外の企業でリモートワークするようになるなど、産業を生み出す。

これくらいのマインドセットがあれば、同じお金を使うにしても絶対にお得です。マインドセットの問題で、全員で使おうという気持ちと、これ自体を産業にしようという気持ち。これにより行動が変わります。例えば、学校に連絡してみようとか、メディアに連絡してみようとか、地元の夕方のニュースや地元紙に連絡してみようという行動が生まれます。親子向けイベントをやってみようか、予算がなければ親子向けイベントをやっている人たちに声をかけて使ってもらうなど、行動が変わります。このように二つのマインドセットは非常にお得。どうせ同じお金を使うなら、効果的に使いたいですしね。

藤井:吉田君、DNPとして関われそうな気がする?

吉田:ハコスコさんと一緒にやってる仕事がほとんど包含されています。ハコスコが立ち上げたDNPアカデミーとかもそうだし。DNPは、全国に支店や事業所を持っているので、そこの人たちがいま大変で、物理の印刷仕事がなくなってきているなかDX化するためにいろんなところで取り組んでいますが、話が通じないことも多い。でも、その地域で産業にしていくというのはすごくいいなと思います。

藤井:確かに産業としてゲームメタバースを興すのは、普段の自治体に対するメタバースの売り方とは違いますね。

●作っておしまいではなく地域に新たな産業を興す

角田:そうですね。ベンダー側は下請けで発注をもらえば売り上げが立ちますが、ホームページ制作のように習熟しているわけではないので、メタバースに関してはまだまだこれからです。他のテクノロジーでも同様です。それを産業化することまで考えた方が同じことをやるなら絶対にお得です。

藤井:普通は発注してくださいということですが、自分の仕事が減ることを恐れず、産業として成り立たせるためには関係者を増やそうよ、という話ですね。

角田:そうですね、ぶっちゃけて言うと、ベンダー側っていうのは下請けで発注をもらえればそれで売り上げが立つんです。ホームページ制作とかなら別にいいと思うんですが、値段を上げてホームページが納品されました、良かったねって時代はもう終わっていて。メタバースに関してはまだまだで、ドローンや他のテクノロジーでも同じことが言えます。それを使ってどう産業化していくかまで考えた方が、同じことをやるなら絶対にそっちの方がお得です。

藤井:普通だったら「うちに発注してください」ということなんですけど、自分の仕事は減っちゃうけど、そこで産業になれば次のステップに行ける。関係者を増やすことが重要ですよね。

角田:そうですね。前回の対談で「作る、使う、続ける」みたいな話をさせていただきましたけど、それを最後のところに「繋げる」ことでマイルストーンとしてマインドセットが変わると、行動も変わります。例えばここに連絡してみようとか、連絡するのが正しいと感じられるようになります。もう一つのポイントは、地元の人じゃなきゃできないことがあるということです。地元の商店街に連絡するとか、地元の魅力や困っていること、計画がある場所の情報など、東京のコンサルタントでは把握できない情報があります。そこが地元の優位性です。

それを新たな産業として、いろんなテクノロジーと組み合わせるのは、東京ではできないことです。行政や地方自治体じゃなきゃできないことです。だからこそ、主体性のマインドセットがすごく大事です。最終的にうちに発注しなくてもいいので、このマインドセットで公募に臨んでくださいと言いたいくらい。

藤井:今までのメタバースは、効率化だったり、コロナの影響で会えないからネットで会いましょうというものだったけど、産業として興す最初の一歩として考えると、例えば1000万円かかりますよと言っても、産業を作るなら安いものですよね。事業所一つ作るのに1000万円じゃできないですから。プラットフォームがあって、みんなが集まってくる場所があって、XRエンジニアにするためのリスキリング講座を提供する。そういうパッケージにすると、今までのメタバースと違う産業起爆剤パッケージになるかもしれない。

角田:非常にわかりやすいし、実利にも繋がりますよね。

藤井:DNPはインフラや安心安全の認証を裏で提供しますよ、と言ったら、いいんじゃないと思いますね。

角田:いや、まさにそこら辺は本当に強い座組だなと思いますね。セキュリティの問題や課題が多い中で、ある程度の旗印があると参加者も安心して参加できますし、強い引力や魅力になりますよね。

藤井:今までのメタバースは消費するだけのものとして扱われていましたが、自分たちで作る視点を入れるだけで全然違いますね。

角田:そうですね。

吉田:メイカーズの時代もありましたが、それがメタバースに変わると本当に産業になりうる価値があります。みんながホームページを作れるようになるようなものです。

応援ありがとうございます!
いいねして著者を応援してみませんか



このトピックスについて
伊集院 龍吉さん、他2241人がフォローしています