在宅医療:月々どれくらいかかるの?

2023年11月7日
全体に公開

 在宅医療は少しずつ広まっていますが、実際、月々どれくらいの医療費がかかるものなのでしょうか。在宅医療の費用は、主に訪問に対する費用と月々の医学管理の費用で構成されています。

中医協資料

毎回の訪問に関する費用

 毎回の訪問に関する費用は、下図のとおりです。一般的には、月に1〜2回の訪問が多いので、訪問の回数に応じてこれらの支払いが生じます。

月々の医学管理に関する費用

 訪問診療料よりも負担が大きいのは、月々の医学管理の費用です。こちらは費用体系がもう少し複雑です。①住んでいる場所、②医療機関の種類、③患者の重症度、④同じ建物で訪問診療を受けている人数、によって費用が変わってきます。

 まず、「①住んでいる場所」について。これは、下記のとおり、そもそも算定する点数が違い、戸建ての方が点数が高くなっています。

 高齢者向けの集合住宅の場合は、看護職員が配置されている施設があり、その分、外部からの診療に対する費用は低めに設定された、というのが元々の趣旨です。その後、看護職員が配置されていない施設でも、必要な医療資源は少ないこと等が分かったため、どちらも戸建て住宅より安く設定されています。

 次に、「②医療機関の種類について。こちらは、費用が高い順に、

  • 機能強化型の在宅療養支援診療所・病院
  • 在宅療養支援診療所・病院
  • その他の診療所・病院

によって点数が分けられています。最も体制・実績が充実している「機能強化型」が、費用も最も高くなる構造です。

 次いで、「③患者の重症度」についてです。こちらは、月々に必要な訪問回数を代替指標として活用しており、費用が高い順に、

  • 月に2回以上、訪問診療を行っている難病などの患者
  • 月に2回以上、訪問診療を行っているその他の患者
  • 月に1回、訪問診療を行っている患者

で区分けされています。比較的状態が安定していて、月に1回の訪問診療で済むような場合には、費用も安くなる設計です。

 最後に、「④同じ建物で訪問診療を受けている人数」に応じて、費用が分けられています。費用が高い順に、

  • 同じ建物で1人、訪問診療を受けている場合
  • 同じ建物で2〜9人、訪問診療を受けている場合
  • 同じ建物に10人以上、訪問診療を受けている場合

に分けられており、一人当たりにかかる診療・移動時間の差等を反映した構造になっています。

 これを一覧にすると、(もの凄く細かい資料になってしまいますが...)以下のような表になります。指差し確認しながら、自分がどれに該当するかみると、月々の医学管理に関する費用が分かります。

中医協資料

典型的な事例の医療費

 例えば、

  • 戸建ての住宅に住んでいて、
  • 機能強化型の在宅療養支援診療所の医師から、月に2回訪問診療を受けている

場合であれば、

  • 訪問診療料 → 8,880円×2回=17,760円
  • 月々の医学管理 → 41,000円

合わせて58,760円が、医療費として算定されることになります。したがって、1割負担の患者であれば、一月に支払う金額は5,876円となります。

これがベースの医療費となり、検査や処置などが実施された場合には、その都度、それらの費用が追加されることになります。

文責:田村 圭

依頼・問い合わせは右記まで:health_policy@tamurak.co

参考文献

  • 中央社会保険医療協議会総会「在宅(その1)」(令和5年7月12日)
  • 中央社会保険医療協議会総会「在宅医療(その4)」(平成27年11月11日)
  • 中央社会保険医療協議会基本問題小委員会「後期高齢者の在宅医療等について」(平成19年10月26日)

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