プラットフォーム化も経営資源調達の手段であるという話
よく小さなスタートアップの中長期の計画を見ると、最後の方にはXXにおけるプラットフォームになるというような話が書かれていたりします。
このとき、プラットフォームとは何かについての解像度が低い経営者であったりすると、なんともとんちかんな計画になってしまいがちです。
似たような話として、飲食店やマッサージ店などがフランチャイザーになるといったことも経営拡大の手段として用いられます。これも同様にこういったタイプの事業の中長期計画については書かれることが多いものです。
実はこれら2つは類似していて、どちらも資源調達の手段であるということです。資源調達の中には、資金や人的リソースが含まれます。
今は資金調達より資源調達がむずかしい
銀行借り入れやエクイティファイナンスといったファイナンスが金銭面にフォーカスされているのに対して、プラットフォームやフランチャイズは、ファイナンス面だけでなく事業のリスク資源と開発運営と行った人的資源の調達に役立ちます。
現在において、資金調達と資源調達であれば、"資源"調達の方が難しいことも多いです。
飲食店は店長スタッフの調達が難しかったり、店舗不動産の取得が難しかったり、酒類取り扱いのライセンスの調達が難しかったりします。
このような点をフランチャイズ本部がビジネスモデルや商品のサプライチェーン、ブランディングなどを提供する代わりに、店舗の運営をフランチャイジーがしてくれます。
当たり前のことですが、フランチャイズ本部の提供するものが魅力的でなかったら誰もフランチャイジーはやらないわけです。
また、これらの経営的な資源調達がフランチャイズ本部の企業にとって簡単だったり、ファイナンス面の融通がつくのであれば、直営店を増していくほうがビジネス的に合理的です。わざわざフランチャイジーに利益の多くを持って行かれる必要がないからです。
つまり、資源調達が困難であり、成長速度のボトルネックになっているから資源調達をスムースにするために利益を手放して提供し、リスク資源を呼び込む戦略をとるわけです。
これといわゆるプラットフォーム化は同じ性質を持っています。
フランチャイズ戦略とプラットフォーム戦略は類似している
プラットフォーム化は、ある事業の持っている潤沢な資源、たとえば顧客資源やコンピューティング資源、データベース、その他のさまざまな資源をもとにした事業をプラットフォームに登録した他業者にAPIやツールの形で提供します。その上で利用料やトランザクション費用をもらうというビジネスモデルです。
このビジネスモデルが合理的に成立するためにはいくつかの条件があります。
そもそも、プラットフォームができる事業者はこれらの他の事業者が調達が難しい資源を持っている必要があります。これは顧客資源やデータ資源、ソフトウェア開発資源、サーバー調達などです。
また、プラットフォームができる事業者は、これらの資源を用いたビジネスを展開するのに必要な何か一部の資源調達が成長のボトルネックになっている必要があります。開発者やデザイナー、ビジネスアイデア、事業リスク資源などです。
たとえば、AppleはiPhoneのアプリプラットフォームをつくらずにすべてのゲームやサービスを内製してしまえば、現在のアプリプラットフォーム売上の30%ではなく、100%を自社の売り上げにすることができます。
たとえば、Amazonはすべての商品を自社開発のプライベートブランドにしてしまえば、利益率は大きく上がります。
しかしそのようなことをしませんでした。なぜならば、そのほうが利益率は高くても成長速度を得ることができないからです。
彼らにとっては、手元の資源調達のスピードよりも高速に商圏を拡大したいと考えており、それらの調達手段としてAPIや仕組み、サービスを提供することで外部業者のリスク資源と開発資源を大量に調達しているわけです。それだけ魅力的なものを提供しているということになります。
フランチャイズと同様に成功モデルが1つもなければ、そして拡大が見込まれる商圏が存在しなければプラットフォームもやる必要がありません。利益率を削ってしまうだけです。
何か闇雲に、流行っているからプラットフォームだ!ではなく、何を提供してどんな資源を呼び込むのかを冷静に見極めた上で、資源調達の手段として合理的だと思えるときにこそ、プラットフォームという選択を検討しましょう。
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