タイムマシーンで行くならどっち?過去or未来?:未来のチラ見せ。
「もしタイムマシーンで旅するなら、過去と未来のどちらに行きたいですか?」という質問に、多くの人が過去を選ぶようです。タイムマシーンの一般的なルールには、過去を変更することで現在に影響を及ぼすべきではないというものがあります。それを踏まえると、影響を与えることができない過去になぜ多くの人が行きたがるのでしょうか?
対照的に、未来への旅であれば、もし未来が期待に沿わなければ、現在の行動を変えることで未来を形作る可能性がありますよね。
科学とテクノロジーの未来
ユヴァル・ノア・ハラリは『サピエンス全史』で、科学研究が資金を獲得できるのは、それが政治的、経済的、宗教的目標の達成に役立つと考えられるためであると述べています。彼は16世紀の王や銀行家が地理的探検に多額の投資を行い、新たな土地を征服し、貿易帝国の構築により膨大な利益を見込んだ一方で、児童心理学の研究には一銭も提供しなかった事例を指摘しています。
ハラリは、科学が帝国主義や資本主義と強く結びついてきたのは、科学研究が宗教やイデオロギーと提携することでのみ栄えるからだとも述べています。イデオロギーは投資を正当化し、研究の優先順位や発見の用途に大きな影響を与えます。
21世紀の現代も16世紀と何も変わっていませんね。世界の限られた富裕層や資産額の大きな企業などが大きな影響力を持っています。
テクノロジーの未来の先にあるもの
科学とテクノロジーの未来を理解するためには、影響力のある投資家が何に影響を受け、何にインスピレーションを得ているかを把握することが重要です。エイミー・ウェブは、テクノロジーの進展に影響を与える要因が日常生活の中に存在すると指摘しており、これらを『変化の10の要因』として挙げています。具体的には、富の分配、教育、政府、政治、公衆衛生、人口動態、経済、環境、ジャーナリズムとメディアです。彼女は、「テクノロジーだけに目を向けていると、一見テクノロジーと無関係に思えるさまざまな変化の要因を見逃しやすく、それが魅力的な未来のシナリオと結びつかない場合、トレンドを見誤ることがある」と述べています。例えば、AIの未来をAI半導体の計算能力や消費電力の開発スピードだけで判断すると、未来のAIの方向性を見誤る可能性がありますね。
フォーサイト(未来洞察)プロジェクトで注目していること
私たちがフォーサイトプロジェクトで未来のシナリオを考える際に注目しているポイントをいくつかご紹介します。
資金の行方を探る
未来のシナリオを考える際、資金が豊かな企業がどの分野に投資しているかを調査します。例えば、グーグルはその20億ドルのポートフォリオの36%を生命科学の新興企業に投資しており、その中には人類の寿命を延ばすプロジェクトに取り組む企業も含まれています。また、人工知能分野は2019年以来、180億ドル以上の投資を集めており、2015年だけで322社のAI関連テクノロジー企業に20億ドル以上が投資されました。
変化の10の要因
エイミー・ウェブが指摘する要因を踏まえ、未来学者、社会学者、ジャーナリスト、およびトレンドの最前線にいる専門家たちをインタビューします。この過程で、資金の流れに影響を及ぼす要素についての議論に彼らを参加させ、起こり得る未来の形を共に想像していきます。
フリクションを考える
未来のシナリオを考える際には、科学とテクノロジーがもたらす利点だけでなく、潜在的な欠点を想定する「フリクション」に注目します。このアプローチは、より良い未来を構想するためのアイディアやシナリオを生み出す手助けとなります。これは、フレデリック・ポールの名言「SF作家に求められるのは車の誕生を予測することではなく、渋滞という概念を予測することだ」という考えに基づいています。つまり、車の普及に伴う新たな行動や生活様式だけでなく、それによる摩擦(フリクション)も考慮に入れるのです。
未来のチラ見せ
未来のシナリオは未来の『チラ見せ』だと考えています。具体化した未来像を描くことで、可能性のある選択肢をより身近に、具体的に想像し、検討と議論が行えるようになります。これにより、より深く理解する支援を提供し、科学の方向性に影響を与える行動をとりたいと思っています。
私たちが未来に対して責任を持って行動するためには、科学の進歩を方向づけ、優先順位を決める議論を生み出すことが重要です。また、人々が望ましい未来を選択できるように支援することも、現代を生きる私たちの責任であると思います。
更新の通知を受け取りましょう
投稿したコメント