成長し続けるチームに欠かせない「目標設定」の4つの鉄則

2024年4月8日
全体に公開

4月を迎え、新年度の目標を設定している企業も多いのではないでしょうか。

評価の段階になって「この評価は納得できない」となってしまうケースがよくありますが、人事評価の問題のほとんどの原因は、「目標設定」にあります。そもそも目標設定がフェアになっていなければ、評価がフェアになるはずがありません。

しかし、目標設定が適切に行えていない企業は多いものです。評価するときには時間をかけて会議を何度も行うのに、目標設定は上司任せになっていて曖昧な内容になっていたり、人によって偏りがあったりします。

グローバル企業では、「評価」よりも「目標設定」にものすごい時間と労力をかけます。

目標設定のためのトレーニングもあり、マネジメントおいて最も重要なスキルの1つとして位置づけられています。私が人事として管理職研修で一番力を入れるのも、評価ではなく「目標設定」です。

今回は、優秀なリーダーが学んでいる「フェアな目標設定の方法」について解説します。

◇かつての日本企業に目標設定はなかった

日本企業において「目標設定」が一般的になったのは1990年代ごろです。それまでは目標設定を行わないまま、期末に人事評価だけを行うのが一般的でした。

もちろん職種によっては、営業職のように「個人のノルマ」でボーナスの支給額が決まることはありました。しかし、昇格や昇給を行うための人事評価については、はっきりした目標を定めずに、期末になって上司の印象によって評価が決まるのが一般的でした。

今となっては「それで人事評価はできるのだろうか……」と思うかもしれませんが、日本企業の「職能資格制度」という処遇制度では、長期に雇用し続けることが前提でした。基本的に社歴に応じて給与が上がっていくので、評価でそれほど差をつける必要がなかったのです。

◇目標管理することのメリットとは?

しかし2000年代になり、日本企業の成長が停滞し始めると、社員のパフォーマンスにバラつきが大きくなり、年功的な要素だけで昇給の判断をするのが難しくなっていきました。

そこで「期初に上司と部下で合意した【目標の達成度】によって評価を行う」という目標管理という考え方が普及していったのです。

目標管理をすることで、部下は「自分のやるべき仕事やゴールがはっきりわかる」いうメリットがあります。

一方で、目標管理を導入してもうまくいかない企業は、目標を曖昧にして、結局「何を・どれだけやれば・どういう評価になるのか」が不明瞭なままになっています。

そうした企業がすべき「目標設定を適切に行うための鉄則」は4つあります。

◇目標設定の鉄則① 「目標は期初に細かく設定する」

目標管理において最も大切なのは、「上司と部下で期初に目標を合意すること」。

部下が自身の目標を立てても構いませんし、上司や組織から「組織の目標を個人ごとに分割する」という決め方でも構いません。そのミックスの場合も多いでしょう。

グローバル企業でも、期初に目標を決めるプロセスはさまざまです。ただし、どのパターンにおいても、上司と部下で期初に対話を行い、目標に対しての疑問点や、曖昧な点をクリアにして確認しておくことが重要です。

期初に目標について話をする企業は多いと思いますが、たいていは曖昧な会話で終わってしまっていたり、上司と部下で解釈が違ったままになっています。目標の内容について互いに詳細を確認して、目標達成に向けた具体的なイメージをもつことが達成意欲にもつながりますし、評価を適正に行うために欠かせないことです。

なお、期初に目標設定していないことを、評価のときに突然言い出すのは絶対NGです。ゲームのルールは、ゲームが始まる前に決める。これが目標設定の1つ目の鉄則です。

◇目標設定の鉄則② 「SMARTを遵守する」

目標設定のグローバルスタンダードが「SMART」です。私自身、20年前からこのフレームワークに沿って目標設定をし続けています。

SMARTとは、以下の5つの要素を持った目標を指します。

・S(Specific):明確で具体的な目標

・M(Measurable):測定可能で数値化できる目標

・A(Attainable):達成可能で現実的な目標

・R(Result-based):成果に基づいた目標

・T(Time-bound):期限の明確な目標

たとえば、「新規顧客を開拓する」という目標は漠然としていますが、SMART原則に沿って改善すると、「3カ月以内に、新規顧客から1件以上契約成立する」となります。

SMARTのなかで一番大切な考え方は、「目標は必ず計測できなければならない」ということ。

私もさまざまな業種、職種の目標設定のコンサルティングを経験していますが、原則としてどんな業務も必ず計測はできます。契約数や売上、製造コストといった経営指標だけではなく、回数、期限、質、レベル、成果物の数など、業務に応じた計測方法があります。それらを「どう目標として設定するのが適切か」を判断することがマネジメントの重要なスキルになる。これが2つ目の鉄則です。

◇目標設定の鉄則③「評価基準を明確にする」

目標を設定したら、次に目標に対する評価基準を明確にしましょう。

評価基準とは、目標の達成度や成果を判断する基準のこと。目標を達成したか、達成できなかったか、だけでは評価基準としては不十分です。どの程度達成すればどのような評価になるのかを明確にしておかないと、評価のタイミングになって曖昧な説明しかできなくなります。

前述の例の場合、「3カ月以内に、新規顧客から1件以上契約成立する」という目標に対して、5段階で評価基準を設計すると、以下のように考えられます。

・3カ月以内に5件以上の受注→大幅な超過達成:評価5

・3カ月以内に3件以上の受注→超過達成:評価 4

・3カ月以内1件以上の受注 →目標達成:評価 3

・1件以上受注できたが、3ヵ月以上かかった→目標未達:評価2

・受注できなかった→大幅な目標未達:評価1

このように、どういう基準で評価が分かれていくのかを最初にきちんと設計し、部下に伝えておく必要があります。これが3つ目の鉄則です。

◇目標設定の鉄則④「期中の目標変更ルールを設定する」

現代は環境変化が速く、期初に立てた目標が期中に意味がなくなってしまうことも少なくありません。そういった場合に備えて、期中に目標変更ができるようにしておくことは、期間を通じてモチベーションを維持するために非常に重要です。

また、期中に人事異動になり、仕事や目標が大きく変わってしまうこともあります。その際、異動前の仕事の成果と異動後の成果をそれぞれ適切に評価ができるよう、異動の際の目標再設定のルールをあらかじめ決めておく必要があります。

一方で、目標を自由に変更できるようにしていると、期末に帳尻を合わせるために目標を勝手に変えてしまうということも考えられます。そこで、「期末直前の変更は認めない」など細かな工夫も必要です。

こういった仕組みを整えて、現場の管理職全員が実行できて初めて、目標評価制度は機能します。

人事評価は、社員の行動や価値観を決める非常に重要なファクターであるがゆえに、つい評価のタイミングに注目が集まりがちです。しかし繰り返しますが、評価をフェアにするためには、目標設定をフェアにする必要があります。

評価の段階でいくら話し合っても時すでに遅し。

管理職の方もそうでない方も、今年の目標設定はぜひこだわって、素晴らしい1年を過ごしていただきたいと思います!

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