顔採用、肉採用、コード採用etc.急増する「面白採用」

2015/4/26
優秀な学生の奪い合いが熾烈化する中、ユニークな選考方法や採用試験を取り入れ、他社との差別化を狙う企業が増えている。その手法とは?

将来の幹部候補生型

一般の総合職採用とは別枠で、幹部候補や専門職を採り分けようとする動きが広がりつつある。表立っては待遇を変えなくとも、幹部候補には最初の配属を優遇することもある。その際、重視するのが学歴、成績、リクルーターの推薦などだ。
エントリーシートと同時に成績表を提出させて、選考する際の一つの材料とする。大学ごとに成績評価が違うため、異なる大学の成績を4段階で評価し直す共通の仕組みも用意する。
先輩社員が、母校に足繁く通い、これはと思う後輩学生を幅広く集め、人事につなぐ。また、学生に会社のPRなどをして会社に興味を持ってもらうように促す。さらに、カフェなどでカジュアルな面接を行うことで一時面接者としての機能も果たす。

超青田買い型

優秀な人材を確保するため、早期から学生との接触を持ち、早めに唾をつける動きは多々見られる。インターンシップは3年生の夏に早くも内定を出してしまう。1年生に「フリーパス」を与える企業も。インターン参加時に、高額を付与する会社も。
学年を問わず、会社説明会や適性検査、面接を受け、インターンシップを経験し、この人は優秀と認められた学生には、最終面接に進むパスポートが付与される、あるいは1年生にして内定を得られる。
外資系金融・コンサルティング会社は大学3年生のサマーインターンが実質的な「本採用」を兼ねている場合が多い。一方、日系企業は会社ではなく軽井沢などの避暑地に1週間程度集め、学生をグループで分け、特定テーマの課題の解決策を競わせるスタイルが多い。

新卒でも即戦力型

学校での勉強内容が即、仕事に結びつきやすい理系学生は特に、成績や実際に手がけてきたこと、作品や実績を問われる場合が多い。起業やNPOの運営経験があるなど経験豊富な即戦力人材を優遇する会社も増えている。
一芸に秀でるなど得意分野が明確、学生時代に起業経験があるなど「トンガリ人材」を別枠で採用する。企業に変革をもたらす「イノベーション人材」、組織の活性化のための「スパイス剤」的効果が期待されている。
会社側がインターンシップ応募の告知Webコンテンツに「コードを解読せよ」といった指令が与え、そのコードを読み、正解した学生だけが選考にパスする仕組み。実質的な「一次試験」に近いスクリーニング手法。
「現在の小学校1年生が大学を卒業して就職するころには、65%の人が今は存在していない仕事に就くという調査がある。現在から20年後の社会と仕事の変化について予想してください」といった「重い課題」に対し、作文を書いて提出。これにより数千のエントリーが、60~70人にスクリーニングされる。
卒業論文に熱心に取り組むなど、学業に専念した学生を対象に、「卒制/卒論」のみで評価する。応募者は応募フォームから氏名、連絡先、卒論(卒制)の3点を送るのみ。学歴、自己PR,志望動機も問われない。

PR目的型

2015年は空前絶後の売り手市場。「バブル再来」とさえ言う人も。そこで各企業は同業他社に優秀な人材を持っていかれないように、自社の方向性を打ち出す宣伝活動を熱心に行うなど、PRに余念がない。奇抜な採用手法もその一つだろう。
独自に開発した顔分析システムにより、就活生の顔タイプを「のんびり顔」「心配性顔」「せっかち顔」「よくばり顔」「こだわり顔」の5つの顔に大別。「心配性顔」には「面接5分延長戦」、「のんびり顔」には「エントリーシートの締め切りに1週間のロスタイム」などを用意する。
人材紹介会社ビズリーチが提供する「ニクリーチ」に登録した参加企業が、同サービスに登録する学生の中から、気になる学生をスカウト。これに学生が承認すれば、企業人事は学生に肉料理を食べさせながら本音に近い話を聞くことができる。

中小企業型

従業員300人以下の中小企業では、新卒採用の求人倍率は4倍を超える状況と見込まれる。つまり学生1人を4社が奪い合う状態だ。そこで、ピンポイントで学生を指名して接触する企業も出現中だ。
自分自身をアピールしたい就活生と、求める人材にピンポイントでアプローチしたい企業をマッチングするサイトや、集団お見合いのようなイベントを介し、学生が企業にエントリーするのではなく、企業側が学生に「ぜひ、わが社の面接を受けていただきたい」とオファーする。
(文:佐藤留美、構成:櫻田潤、デザイン:荒新桃子)
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