優しく後押しする方法ナッジ:イケアの例
以前、人々が望ましい行動をとるように、優しく後押しする方法のナッジをみなさんにご紹介いたしました 。ナッジとは人々に選択の自由を残しつつ、行動を予測可能な形で誘導する方法です。
前回はナッジの例として、アムステルダムのスキポール空港に設置されているハエのイラストが 描かれた便器やグーグル社 のカフェテリアの取り組みなどをご紹介いたしました。今回は 、水とエネルギーの節約をナッジする、イケアのシャワーモニター、SVÅGANをご紹介いたします。
現在 スペインとデンマークの幾つかの店舗で イケアのシャワーモニター、SVÅGANをパイロット販売しています。
個人や家庭で使用する水の量は、一人当たりが毎日約 142 リットル、 平均的な家庭は毎日 349 リットル(アメリカのデータで4人家族の家庭は毎日1500リットルというのもあります)の水を使用するようです。1日の水の使用量のうち約20パーセントがシャワーを浴びることで使用されています。
イングランド東部で事業を展開する水道会社のAnglian Water のリポートによると、平均的なイギリス人は 1 日あたり 8 分間シャワーを浴びており、推奨されているシャワー時間より 3 分長く、年間約 12,045 リットルを無駄にしていると書いてあります。
SVÅGANはシャワーの混合栓に取り付けられるモニターで、モニターにはシャワー 時の入浴時間、水の使用量、温度が表示されます。 SVÅGANのバリュープロポーションはシャワー時間、使用水量、温度などを知らせることでご自身の行動習慣を認識していただき、水とエネルギーの節約の意識と行動をナッジすることです。
パイロット販売によるフィードバックを元により良い製品にしていきたいと思っています。個人的には、 健康管理のスマートウォッチなどの成果を数字による表示することによる中毒性が指摘されているので、数字による表示に変わる効果的な表示法なども模索していければと思っています。
ちなみに、今回のナッジの主題から 脱線いたしますが、イケアでは安全な飲料水と衛生設備が確保できない地域を念頭に置いた、 水の節約や安全な水の供給をテーマにいくつかの製品を開発しております。SVÅGANの他にもAltered社 と共同開発した多くの一般的な蛇口に取り付けられる節水ノズルÅBÄCKEN
やデンマークの Flow Loop社と水をリサイクルして洗浄することで80% の 水の使用を削減し 、最大 70% のエネルギーを削減できるループシャワーを共同開発しています。ループシャワーは現在プロトタイプを実際の家庭で使用しただくテストを行っています。
ちょっとイケアの取り組みの宣伝になりました。すみませんでした。今回のコラムの主題に戻ります。最後にイケアの例ではありませんが、ナッジをすること自体をビジネスにしている、デンマークのスタートアップ会社のLUNに触れたいと思います。
ヒートポンプはガスボイラーよりも電力消費が少なく、家の暖房効率が最大 で3 倍向上(Catapult、2022)するにもかかわらず、ドイツや英国などの国では、ボイラーの数がポンプの数を依然として大幅に上回っています。この理由の 1 つが、ヒートポンプの設置 プロセスが複雑であるためです。
Lun は、オープン データ (衛星画像や家のサイズ推定値など) を集約し、それをデジタル プラットフォーム上の請負業者に渡し、各家庭へのポンプ設置の実現可能性の定量的な概要を提供することで販売プロセスを簡素化し、中小企業がより環境に優しく、コストを節約できるポンプを採用することを奨励することをサポートするサービスを提供しています。
ナッジの肝である、人々に選択肢を 深く理解するサポートするというLunの取り組みは興味深いビジネスモデルです。
前回のナッジのコラムでもご紹介いたしましたが、セイラーとサンスティーンは、人々は効果が遅い選択に対して適切な後押しを最も必要とし、特に頻度が低く、フィードバックが不十分な選択や選択と経験の関係が曖昧なものに影響を受けると指摘しています。
ナッジの最も重要な点は、 ブランドが より良い未来へのビジョンを愛する顧客と共有し、特に効果の遅いことがらにおいて、選択の自由を残しつつ、優しく後押しすることだと思います。
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