「梅田哲也展 wait this is my favorite part 待ってここ好きなとこなんだ」ワタリウム美術館

2023年12月3日
全体に公開

1期:2023年12月1日[金]→ 2024年1月14日[日]

2期:2024年1月16日[火]→ 2024年1月28日[日]

URL:http://www.watarium.co.jp/jp/exhibition/202312/

ワタリウム美術館自体が作品になっておりサポート会員としても嬉しい展示でした!ネタバレにならないように書きますので詳細はぜひ体験してください。個展タイトルはミヤギフトシ『American Boyfriend』からとったもので、リバーウォーク(京都国際舞台芸術祭)の続きのようなインスタレーションでした。

正面からみると、いつもと違う点がありますね

私が参加した回は和多利浩一さんも途中から一緒だったのでいくつかの思い出を伺うことができました。屋上のボイラー室をゲストルームにしたかったり、1997年(中国現代美術)でも本展示と同じく空き地を活用したパフォーマンスを色んな意味でドキドキしながら実施したそうです。今回の足場を組んだのも当時と同じ株式会社加藤架設さん

ちなみにワタリウム美術館はちょうど築30年を超えてエレベーター交換時期で上から入れ替えています。(中に入ると意味がわかります)「屋上にデカいクレーンがきて上から交換したから皆んな階段で移動して準備した」とのこと

まずはワタリウム建設以前、ギャラリーワタリ時代の和多利志津子 初代館長と建築家マリオ・ボッタ

出会いのきっかけは和多利恵津子さん(現館長)と一緒に読んでいた雑誌でたまたま目に入り、恵津子さんが面白いねーと話していたらすぐにスイス大使館に電話して翌週スイスまで会いに行かれたそうです。(その後、ワタリウム美術館を設計)この写真から始まってワタリウムの内部に入り込んでいきます。

くるみさん

普段は全く聞こえない交通の音

いつも外から見ている階段

いつもの窓

あれ!

ここは二重の意味でおもしろいのでぜひ体験してください!

昭和63年(1988年)設置の標識

まさかの向こう側に入るとサーフエンジェルの頭らへんがあったところ

外から見ると尖ってるところ

ワタリウムは直角二等辺三角形だから建物のいたるところにそれに纏わる意匠が配置されています

内部

トークショー「favorite part #1 私たちの宇宙、東京、外苑前」の様子

左から和多利恵津子館長、和多利浩一CEO、梅田哲也氏
梅田氏「まずは無事に開いてよかった。12/1と12/2でさっそくバージョンが変わってるんです。スタッフ3人で回しているけれど、実際にやるなかで更新していくんです。どうしても地下に入る時にさすがに寒いから閉めないといけなかったり、でも閉めちゃうとお客さんさんが通り過ぎてしまうとか。考えることが沢山ある。蝋燭を見て没入感が出るのは分かりやすいが、よくわからないことが起きて、場の空気ができることに取り組みたい。イベント自体は最初はスコアから書き始めて、時間と空間から立体的なコンポジションを考えている。」
「favorite part #1 私たちの宇宙、東京、外苑前」より
梅田氏「ホールで流れる音は毎回楽しんで変更しています。タイムラインが3つ同時に走るからテンポやグルーブを共有しながらやってるんです。音が全くなくてもグルーブが出るのが理想ですね。4階で窓が開いて車の音がするのが好きで、そこでスイッチが入って様々な音に気がつくようになる。お芝居と一緒で毎回変化するし、見落とすところもあるから何回かみるといいと思います。音楽の観点では人の出す音と異なり、車のノイズはやっかいなもの。でもそれを受け入れたかった。道路を挟んでやることで実現した糸電話は、97年の100本のチューブではないけれど、一本の線でワタリウムと綱引きするのと同じことを実現している。今回は船を見ると手を振っちゃうのをワタリウムでやりたかった。」
「favorite part #1 私たちの宇宙、東京、外苑前」より
恵津子氏「梅田さんは最初にリサーチする時にスタッフ一人ひとりに2時間くらいヒアリングするんです。私も知らないそれぞれのワタリウムが浮き出てきた。ワタリウムを始める前の大学生の時、PARCOでカードを売ってたんです。その時に3回も来た高校生をスカウトして、こんどお店をやるからとバイトで入ってもらいました。そこから40年くらいずっといます。それがいまのオンサンデーズ。そう、オンサンデーズは地下にあるけれど、昔は向かいの三角の所やファミマの場所にあった。この記憶がそれぞれ曖昧で梅田さんが丁寧にヒアリングしてくれた。」
「favorite part #1 私たちの宇宙、東京、外苑前」より
恵津子氏「梅田さんは音の人で初めて作品をみたのが大分の役場跡ので、ちょうど10年前だった。ワタリウムともリボーンアートフェスティバルで一緒にやっています。石巻の語源になった説もある巻巻石や、東日本大震災の震源地近くだった金華山にある針の目です。」
「favorite part #1 私たちの宇宙、東京、外苑前」より
出所:リボーンアートフェスティバル2019 https://2019.reborn-art-fes.jp/artist/tetsuyaumeda

出所:ArtSticker:https://artsticker.app/works/21775
浩一氏「モーセのように海が割れて底が割れるのを見た人がいたんです。赤い海藻があるので、海底が見えて血の海のようだったと。ここに作った作品はピンホールにして外が見えるようになっています。いまは制作中で8〜9割は出来ていて、次回リボーンの時には完成を目指している状況です。市民の皆さんに管理してもらえるような仕組みを考えています。」
「favorite part #1 私たちの宇宙、東京、外苑前」より
梅田氏「中には水琴窟があり、声が反響して自然音と混ざって聞こえてきます。同じ音が一個もないんです。いまオンサンダーズにある水のボールは簡易水琴窟ですね。網地島パフォーマンスも夜は本当になにも見えないところで、できれば東京でもやってみたいです。昼間に校庭でもやったんですけど。あと、元々は東京オリンピックと距離を置きたくて、あまり参加したくなかった。たまたまその時にワタリウムにお邪魔したら恵津子さんが畑仕事をしていて、ローカルな感じを強く受けて、一緒にやってみたいと思った。」
「favorite part #1 私たちの宇宙、東京、外苑前」より
浩一氏「ローカルといえば95年に水の波紋をやった時、街を使ったインスタレーションをやる際に皆さんに頭を下げて回ったんです。そしたら商店街会長をやることになった。外苑前と青山だってローカルだから、梅田さんにそういう所を見てもらえてたんだと思う。」
「favorite part #1 私たちの宇宙、東京、外苑前」より
梅田さん「和多利さんは人先行で、すぐ会いにきたり電話してくれますよね。」
「favorite part #1 私たちの宇宙、東京、外苑前」より
浩一氏「母に比べるとまだ遅い。(雑誌で娘と見たマリオ・ボッタに会うためにすぐスイス大使館に電話して翌週スイスで会い、ワタリウム美術館を建設した)母は僕が子どもの頃に美術館に連れて行ってくれたが正直つまらなかった。それとは別にお使いでウォーホルから作品を受け取ったり、マース・カニングハムにサインをもらいに行ったりする中でスイッチが入った。自分にとって寺山修司とヨーゼフボイスがいて、音楽はナム・ジュン・パイクでその後でウォーホルがカッコよく入ってきた。作品よりも先に人と会っているから、現代アートが難解だと思ったことがない。あわよくば作家と仲良くなって手伝うと、自分も作品の一部になれる。理論じゃなくて手や肌から作品を知るのがいいんですよ。ボイスも亡くなった後に母と奥さんのところに行って生家に寄るとパン屋に蜂がいたから、そういう環境でハニーポンプとか生まれるんだと思った。自分の中から出てくるものには限界があるが、周りの力を借りてやる並び替えるだけでもクリエーションになるし、梅田さんはそれをやっているのではないか。」
「favorite part #1 私たちの宇宙、東京、外苑前」より
恵津子氏「ボイスは明治神宮に案内したよ。アートは自由をみせないといけない、やっちゃいけないことのギリギリの線を見極めることなんですよね。」
「favorite part #1 私たちの宇宙、東京、外苑前」より
浩一氏「公立ではできないことをやらないと存在の意味がない」
「favorite part #1 私たちの宇宙、東京、外苑前」より

リボーンアートフェスティバル2019での「巻巻石」と「針の目」

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