能條桃子さん対談(後編)ルールメイキングの第一歩は、「ポジティブな感情で旗を立てること」

2023年10月11日
全体に公開

わたし、古野香織が「今会いたいルールメイカー」に会い、語らい、その胸の内を知り、感じたことや考えたことを綴っていく特集「ルールメイキングでつくり変える未来」。

前編に引き続き、今回も日本の若年層の政治参加を促進すべく活動している「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんとお話しします。

能條桃子(のうじょう ももこ):1998年生まれ。豊島岡女子学園高等学校、慶應義塾大学経済学部、同大学院経済学研究科修士卒業。日本のU30世代の政治参加を促進する「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事。

前編では、能條さんを形作った学齢期の原体験と現在の活動について話を伺いました。

後編では、ルールメイカーにとって避けては通れない対立の乗り越え方や、ルールメイキングに共に取り組む仲間の集め方について話を進めていきます。

対立を乗り越える鍵は「世論」にある。

古野:社会や学校でも、時に意見が対立してしまうこともあるかと思います。能條さんはこれまでどのようにして乗り越えて来たのですか?

能條:ここ数年は国会議員に会って話をする活動を地道に続けているのですが、なかなか話を聞いてもらえないこともあります。国会議員は大多数の世論が無いと動きにくいから、大きな動きをつくろうと思って被選挙権年齢引き下げを求める裁判を起こしたり、派手な動きをすることもありました。

古野:あの裁判にはそういった意図があったんですね。

能條:全ての人が賛成する変革なんて無いですし、わたしは全員が変革に納得することを目指していません。有名な「2:6:2の法則」がありますが、賛成でも反対でもない無関心な6割の人たちをターゲットにし、動かすにはどうするかを考えた結果、世論で動かしていくのが一番良いと思って今の活動をしています。

古野:ルールメイキングでも、数年前から活動を初めて不安の声もありましたが、「生徒指導提要」が改定されるなど今は少しずつ”校則の見直し”などを皮切りに、社会が変わりつつあります。それによって目の前の人が少しずつ変わっていく・動いていくようになっていくと感じています。

能條:制度や文化が人の常識や価値観をつくるので、昔のそうした環境下で育ってきた人たちが今のわたしたちと異なる価値観を持つのは仕方がないことです。変化に対し、不安や抵抗を感じるのも当然のこと。

わたしたちは、新たな取り組みが進んでいる実例を紹介し、それでも社会や学校は壊れないよ、大丈夫だよ、安心してねと伝えていくことが大事ですよね。

古野:ルールメイキングでも、校則を変えたら、その裁量を子どもに渡したら、学校が荒れるんじゃないかといった不安を口にする先生は多くいます。でも、実際ルールメイキングを導入した学校で荒れているところってほとんどありません。

これまで上手くいっていた方法を変えることに対し、不安や抵抗感を覚える人たちとどのように対話を重ねていくかが重要ですし、そこは諦めたくないです。

ポジティブな感情で旗を立て、仲間と一緒に進んでいく。

古野:最後に、この記事の読者であるルールメイカーに伝えたいメッセージはありますか?

能條:既存のルールや社会構造を変えることは1人ではできません。同じ志を持つ仲間を集め、一緒に取り組んでいくことが大事です。

仲間づくりにおいては、怒りや悲しみといったネガティブな感情で人を集めると、後々活動が難しくなります。わたしも過去に経験があるのですが、怒りで集まった組織ってマネジメントが効かないんですよね。だから続かない。変革までの長い道のりを進むには、「楽しい」や「ワクワクする」といったポジティブな感情で旗を立てた方が人は着いてきやすいです。

古野:実体験からの学び、ありがとうございます。これからルールメイカーを目指す人たちに対するメッセージはありますか?

能條:まずは声を上げてみること。わたしも最初は自分がこんなに力を持っているなんて思ってもみませんでした。

行動してみて自分の力に気づく。小さな成功体験を少しずつ重ねていくことで、もっともっとやってみようというエネルギーが湧いてくる。こうした正のループに入れると、ルールメイカーとして勢いづくかなと思います。

最後に、ルールメイカーを生むのって環境だと思うんです。社会や会社が声を上げにくい制度や雰囲気をつくっていれば、当然ルールメイカーは育ちません。受け皿である社会や会社が、声を上げやすい土壌をつくっていくのも大事なのではないでしょうか。

古野:たしかに、個人の資質だけでなく、それを引き出し育む土壌も大事ですよね。個人への啓発と社会への働きかけ、その両輪で活動している能條さんだからこそのメッセージだと思いました。

私たちのルールメイキングの活動でも、児童生徒に対するアプローチだけでなく、学校や教職員といった彼らを取り巻く環境への働きかけにも力を入れていきたいです。

長時間に渡るインタビュー対談でしたが、最後まで楽しく深いお話ができて良かったです。ありがとうございました。

能條:わたしもとても楽しかったです。ありがとうございました。

—-----------------------------------------------

今回の対談で特に印象的だったのは、能條さんの「行動してみて初めて、自分の力に気づいた」という言葉でした。

日頃、全国の学校の生徒たちから「自分が行動を起こしたところで、どうせ聞いてもらえないし、何も変わらないのではないか」という声を聞きます。これは子どもたちに限らず、組織に所属する誰もが、似たような感覚を持っているかもしれません。

そんなとき、まずは仲間を見つけて、半径5mの社会のなかでアクションしてみる。そうすることで初めて、自分自身の持っている潜在的な力に気付くことができる。これまでポジティブなエネルギーで旗を立て、仲間と一緒に社会に働きかけてきた能條さんらしいメッセージだと感じました。

特集「ルールメイキングでつくり変える未来」第一弾、いかがでしたでしょうか。

これからも、さまざまな分野において最前線を走る「ルールメイカー」に会いにいきたいと思います。どうぞお楽しみに!

応援ありがとうございます!
いいねして著者を応援してみませんか



このトピックスについて
樋口 真章さん、他83人がフォローしています