本当に愛されている証:手放せない存在となる方法

2023年9月30日
全体に公開

あなたのブランドの商品やサービスは愛されていますか?

恋人やパートナーに愛を確かめるように、直接消費者に「私のことを愛している?」と聞いてみることはできますが、その答えを鵜呑みにすることはできません。人は時に嘘をつきますし、しつこく聞くと煙たがられますしね。

では、あなたのブランドや商品が消費者にとって手放せない存在と感じられるようになったらどうでしょうか?もちろん、「愛しているよ」と言われることは嬉しいですが、もっと重要なのは、あなたの商品やサービスが消費者の日常生活を豊かにし、手放せない存在になることです。商品やサービスが消費者の生活を豊かにし、手放せないものであれば、それこそが本当に愛されている証になると言えるでしょう。

チャールズ・デュヒッグは、著書『習慣の力』の中で、成功したブランドや商品が消費者の習慣として定着した事例を幾つか紹介しています。その中には、1900年代初頭のアメリカで歯磨きの習慣を広めたペプソデントカンパニーの歯磨き粉や、プロクター・アンド・ギャンブル社の消臭剤ファブリーズも含まれています。デュヒッグは、これらの製品が使用後に消費者に何らかの報酬を提供したこと(例えば、ペプソデントは冷たい爽快感、ファブリーズはミントの香り)が、その製品の習慣化に貢献した要因の一つであると述べています。ジェームズ・クリアも、彼の著書『ジェームズ・クリア式複利で伸びる1つの習慣』の中で、「報酬の望ましさと魅力」が習慣を築く鍵だと主張しています。
また、ダニエル・カーネマンは『ファースト&スロー』というベストセラーの著書の中で、人間には二つの自己があることを指摘しています。それは、経験する自己と記憶する自己です。実験の結果、記憶に基づく評価は経験のピーク時と終了時の平均で決まるということをカーネマンは示しています。つまり、商品やサービスが消費者にとって最後にどれだけ満足度を提供するかが非常に重要であり、その満足度は習慣化につながります。

私は以前、家電業界に勤務していましたが、例えば、キッチン用品などの掃除が煩わしい商品は、使用量が徐々に減少し、食器棚の奥にしまわれて使われなくなる傾向がありました。このような商品は、ブランドイメージリサーチでネガティブなスコアが出ることが多かったです。商品を繰り返し使用してもらうためには、商品の使用時のすべての段階が使いやすく、満足度が高いことが理想ですが、特に終了時の満足度は非常に重要です。そして、終了時に満足感を提供し、次に使用したいという欲求を刺激できれば、理想的ですね。

あなたのブランドの商品やサービスが長期的に消費者の生活を豊かにするが、短期的には効果が見えにくい場合(例えば、長期的な健康維持など)、それを習慣化することで、消費者の日常生活を助けることができます。

例えば、現在いろいろなフィットネスアプリがありますが、消費カロリーや運動量などの日々の成果を数値化することにより達成感を与えるものが多いですね。しかしあるリサーチによると数値化の達成感には中毒性の危険もあるとの事です。人間は数値化されると数字自体をよくする事に固執する ようになるようです。中毒性の危険がない報酬で、人々の健康維持の行動を習慣化する方法はあるのでしょうか?

健康のためにジムのメンバーにはなったけど長続きしなかった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか?スウェーデンのジムSATSは数値化による達成感ではなくて、ソーシャネットワークでジム仲間をつくりやすくして、お互いに成果をたたえ合う事で報酬を与える事に成功しています 。ジムの使用者に聞くと、 ジムの習慣化だけではなく、 ソーシャルネットワークが日々の生活を 充実させる手助け担っているようです。

スウェーデン発祥のジョギングとごみ拾いをかけ合わせたプロギングが人気なのも運動量の利点だけでなく、成果(拾ったゴミの量)、仲間同士の称賛そして社会貢献をした満足度や達成感などが報酬となり習慣化につながっているからではないでしょうか?プロギングは商品やサービスではありませんが、習慣化のメカニズムを理解するヒントになります。

報酬には爽快感や達成感だけでなく、他人からの共感や承認、そして認められることによる満足感や喜びなど、さまざまな感情を得ることができます。今回は報酬に焦点を当てましたが、商品を消費者の日常の一部として確立させるためには、なぜ人々が習慣を形成するのかを理解することが非常に重要です。コラムで紹介した書籍以外にも、ラッセル・A・ポルドラックの「習慣と脳の科学」も習慣のメカニズムを理解するのに役立ちます。

バリュープロポジションは消費者のニーズを理解し、競合他社と差別化するための優れたツールですが、消費者があなたの製品を受け入れ、購入後に満足し、繰り返し使用することを保証してくれるわけではありません。私達は今、習慣のメカニズムをバリュープロポジションの一部として活用する方法を試行しており、成果が出た際には再び報告します。次回は「ナッジ」についてお話ししましょう。

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