9月の国内調達額トップ5:3社が海外展開を本格化

2023年9月29日
全体に公開

9月の国内スタートアップ調達額トップ5を紹介します。

今月もソフトウェアからロボット開発、自動運転など、事業領域は多岐に渡りましたが、5社中3社が海外での事業展開を本格化していることが特徴です。

いずれも国内投資家が中心ですが、すでに日本でも顧客を抱えた上で、さらに大きな市場の獲得を目指していることが高く評価されています。

☕️coffee break

1. ジョーシス:ITデバイスとSaaSの統合管理クラウド「ジョーシス」

  • シリーズB
  • 資金調達額:135億円
  • 投資家:グローバル・ブレイン、グロービス・キャピタル・パートナーズなど18社

ここに注目👉2021年9月にラクスルの新規事業として、創業者松本恭攝氏自ら、ITデバイスとSaaSの管理を自動化して、情報システム部門業務を効率化すべく、「ジョーシス」の提供が始まりました。

2022年2月にラクスルはジョーシス株式会社を会社分割で新設、3月には資金調達で連結子会社→持分法適用関連会社化。2023年8月には松本恭攝氏がラクスルのCEOを離れ、ジョーシスの事業拡大にフルコミットして、より迅速に事業拡大ができる体制を構築しました。

今回の調達資金をもとに9月から北米(アメリカ、カナダ、メキシコ)・APAC(シンガポール、オーストラリア、インド、韓国、東南アジア各国)での事業展開を開始し、展開地域は40カ国に。2025年末までに100カ国以上での事業展開を目指しています。

2. タイミー:スキマバイトサービス「タイミー」

  • 資金調達額:130億円のコミットメントライン(融資枠)
  • 借入先:みずほ銀行、三菱UFJ銀行、りそな銀行

ここに注目👉タイミーは隙間時間にいつでも働けるサービス。勤務終了後にはタイミーが報酬を即時入金するため、立替金を保有する必要があるため、多額の資金が必要です。

これまでもその資金を確保するために融資枠を確保して、金融機関とさらなる関係構築を行なってきました。その結果、2022年11月は8社で183億円の融資枠だったものの、今回は3行と相対取引で130億円を無担保・無保証・年利1%未満で、借り入れることが可能になりました。

足元では、飲食店・物流業・小売業にとどまらず、ヒルトンなど外資ホテル・レンタカー・農業分野での事業者からも強い需要があり、日本全国であらゆる事業者とワーカーをマッチングしています。

3. Mujin(ムジン):知能ロボットコントローラの開発

  • シリーズC
  • 資金調達額:123億円
  • 投資家:SBIインベストメント、Pegasus Tech Ventures、アクセンチュアなど4社と個人1名

ここに注目👉産業用ロボットを知能化して、ロボットが見て、考えて、臨機応変に作業を行うことができるため、複雑な作業も自動化することができることが特徴です。

今回のシリーズCは9年ぶりとなる、エクイティ(新株発行)による調達で、INITIALによると、2023年6月時点で企業評価額が1000億円を突破しました。

2019年に中国、2021年には米国に進出しており、調達資金をもとに米国事業をさらに拡大するとともにヨーロッパへの進出も計画しています。

「Mujin滝野一征CEOへのインタビュー動画」

4. CHITOSE BIO EVOLUTION(ちとせグループ):藻類生産の大規模化、研究開発

(*今回の資金調達はグループを統括するシンガポール法人ですが、中核法人は日本拠点のためランキング対象に)

  • 資金調達額:31億円
  • 投資家:資生堂、三菱化工機、天野エンザイムなど8社

ここに注目👉太陽光を唯一のエネルギー源とする藻類を大規模生産することで、石油の代替資源を目指す「MATSURIプロジェクト」に取り組んでいます。

MATSURIプロジェクトは大手企業を中心に60社が参画する大規模な新産業構築プロジェクトで、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構新エネルギー・産業技術総合開発機構)からも支援を受けています

今年4月にはマレーシアに世界最大規模(5ヘクタール=東京ドーム約1個分)の藻類生産施設を完成させましたが、2030年には2000ヘクタールほどにまで拡大する計画。これにより、藻類由来のSAF(持続可能な航空燃料)、食品、化粧品、飼料など、あらゆる製品の開発を目指しています。

CEOインタビュー記事:「藻を第二の石油に」バイオベンチャーの大胆な戦略

5. T2:自動運転技術を活用した物流インフラの構築

  • シリーズA
  • 資金調達額:35億円(新株予約権の行使を含む)
  • 投資家:宇佐美鉱油、東邦アセチレン、三井住友海上火災保険など9社

ここに注目👉三井物産と三菱地所が中心となり、Preferred Networksの技術を組み合わせて、トラックドライバー不足を解決する物流インフラ構築を目指して、2022年8月に設立されました。

今年4月には高速道路上での自動運転トラックの自律走行に成功しました。今回の調達資金をもとに物流、金融、通信、化学、小売など、あらゆる業界の企業と連携して、自動運転レベル4の実現を目指します。

*自動運転レベル4:限定された条件下において、システムが全ての運転操作を実施する・ドライバーが運転席を離れることができる

参考:8月の国内調達額トップ5:途上国金融から宇宙ロボットまで

サムネイル画像:Unsplash/Z

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