オートリバースファクトリー

2023年8月15日
全体に公開

以前、「ほぼ、ドラえもん」というタイトルの投稿をさせてもらいました。「これは、ほぼ、ドラえもんなんじゃないか!」と守屋が思っている「モノづくりスタートアップ」を3社、紹介させてもらったのです。

1つ目は「難聴の方でも普通の音量でテレビの音がクッキリ聴こえるスピーカー」、2つ目は「ふだんは堅いのに転んだときだけグニャっと柔らかくなる床」、そして3つ目は「近視も遠視も老眼も乱視もすべてOKのオートフォーカス眼鏡」でした。

どれもこれも、「そりゃ、そーゆーの、あったらイイよね。でも無いよね」ってヤツなのですが、それが、なんと実在しているのです。しかもコンセプトではなく、「完成度の高い製品」として販売されているのです。

「スタートアップ」というと、どうしても、GAFAMっぽいというか、DXだ、SaaSだ、AIだ、XR(VR、AR、MR)、web3(NFT、DAO、DeFi、SocialToken・・・)と、もはや何が何だか分からなくなってくるほど、カタカナな感じになりがちですが、「モノづくりだってムチャクチャ面白い」って思っていたりします。

そんな流れから、「創られたモノ」(研究開発、試行錯誤の末に辿り着いた、今までにない価値を顧客に提供する画期的な製品)だけでなく、「創る工程自体」(旧来型の大量生産大量消費を前提にしたサプライチェーンを抜本から改革)にも興味を持っています。

たとえば、「オートリバースファクトリー」です。(この言葉自体は守屋の造語なので、まったく市民権を得ていないのと、守屋が知らないだけで業界用語(?)とかでは別の意味(?)とかがあったらご容赦を。)

では、オートリバースファクトリーとは、どんなファクトリーか?

たとえば、「製造方式の進化」に絡めて説明すると、工業化初期のころは「大量生産」の時代でした。同じ製品を大量に生産する方式で、標準化された生産ラインと高い効率性が特徴で、モノ不足の時代は、とにかく供給することが大事でした。それが少し進化したのが、「計画生産」です。需要を読んで必要な数量を計画的に製造することで、在庫を最小限に抑えつつ高い供給力を保つことを狙ったのです。

その後、「受注生産」に進化することで、顧客の要求に合わせた製品カスタマイズにも対応できるようになりました。受注生産は文字通り、「作ったものを売る」のではなく、「売れたものを作る」ということなので、これが徹底できれば、商品の売れ残りがなくなるだけでなく、製造工程における部品や原材料、仕掛品の在庫課題もなくなります。また、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)にも効いてきます。入金が先で支払いが後だからです。一部の高度な受注生産においては、CCCマイナスを実現することで資金繰りを不要とし、企業が常に多くの現金を所有する状態をさえも実現しています。

もちろんその実現は、作業能率や生産効率を向上させるために必死で考え、努力してきたからこその実現です。トヨタの3M(ムリ・ムダ・ムラ)排除の考え方や、モノづくりの現場でいわれる「かざふてつどう(加工・在庫・不良・手持ち・造りすぎ・動作・運搬)」のムダをいかになくすかなど、あらゆるムダを回避しようと努めてきたからこそであり、理論理屈からの実現ではなく、現場の努力の結晶による実現だと思うのです。

ということで、前置きが長くなってしまったのですが、上記の通り、製造は常に進化をしてきたのですが、それは、「動脈としての進化」でした。だからこそなのですが、これからは、「静脈としての進化」の時代なのではないかと。その一つのカタチが、「オートリバースファクトリー」だと思っています。

素材寿命と製品寿命でいうと、圧倒的に製品寿命の方が短いですよね。身の回りの色々なモノを思い返してみても、素材寿命としてはまだまだ使えるのに、ゴミになってしまっていることは多いのではないかと。

たとえば、古くなったPCやスマホは、鉄・金・銀・アルミニウム・ニッケルとしてはまだまだ使えるのに、機密情報保護の観点からも完全粉砕で処理されていたりしますよね? 「動脈」として考えると、そりゃそうだ、なのですが、「静脈」として考えると、今一歩、進化の余地があるのではないかと。

工場ラインが通常は素材から製品に仕上がっていく流れだとすると、オートリバースファクトリーではその真逆、製品から素材になっていく流れなのです。イメージで言うと、一つの生産ラインが、右から左に流れると素材から製品になり、逆に左から右に流れると、回収された製品が分解されて部品になって最後は素材になる、文字通り、オートリバースなのです。

工場が右から左、左から右とずっと無駄なく動いている。こんなことが実現できれば、まさにドラえもんの世界観で、まったくムダがないモノづくりができるようになっていくのではないかと思っています。

ちなみに、この実現には3つの肝があると思っています。1つ目は構造、2つ目は回収、3つ目は精緻分解です。

そもそも分解できる構造で作られていなければ分解できませんし、分解しやすい製品ができたとしても、回収できる仕組みがなければオートリバースが叶いません。そして、回収した時も精密に精緻に分解をしていくことが必要になります。製造ラインで精密に製造してくのと同じ精度とスピードで分解していくことが重要になります。そうすれば経済が成り立ち、素材の寿命が尽きるまで何にでもできるし何回でも作り直せるようになります。

現実的にはまだまだ困難の塊でしかないのかもなので、まずは3Dプリンターでのモノづくりが広がり、それにあわせて、もっとも適切な何かの一品からオートリバース化されていく、という感じなのでしょうか? 3Dプリンターは、素材を噴射することで製品を作り上げていくので、実現距離が近いように思うのです。(分からずに言っています。詳しい方、教えください。ww

モノを作ったあとの、「ほぼドラえもん」。こんなことができたらイイなと思っています。

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