公民連携(PPP)とは

2023年7月12日
全体に公開

今回は、第2回目の連載記事となりますので、公民連携(PPP)の概念や手法について簡単にお話させていただきたいと思います。

公民連携(PPP)とは

公民連携(PPP)は文字通り、Public(公共体)とPrivate(民間)の連携によって、費用対効果(英語「Value for Money」を略したVFM)の改善や、同じ公的支出でもアウトプットやアウトカムといった質の向上を図ることを目指すものです。単年度予算や仕様発注(業務の履行方法を詳細に決めた通常の行政発注方法)を前提とした官と民の発注者-受注者の関係性ではなく、複数年度の予算や性能発注(業務の成果のみを定め実現のための方法は受注者に委ね民間の創意工夫を引き出すことを期待する発注方法)、CSV(Creating Shard Value)の考え方に即し連携協定を締結した上で共同での事業を実施することなどを含む非常に幅白いものとなっています。

我が国の公民連携(PPP)のはじまり:第三セクター方式とPFI

我が国の公民連携(PPP)は、バブル崩壊後に伴い、第三セクター方式をはじめとしたそれまでの官民一体でのプロジェクト推進方法の課題を踏まえ、契約やガバナンス等を具備した英国のPFIを我が国に導入することを意図したPFI法(2001年にPFI法が議員立法で成立)を起点にはじまったものとされています。

第三セクター方式というと、皆さんの中にはかつて国鉄やJRから切り離された路線や、都市開発に必要な新たな鉄道路線について、地方公共団体が民間企業と共同で設立し運営する鉄道会社である「第三セクター鉄道」を思い浮かべる方も少なくないと思います。かつては、この官と民が出資して会社を作り、第三セクター方式によって地域開発や地域振興を行うプロジェクトが行われてきましたが、多くの第三セクターによるプロジェクトが経営上の困難に直面し、中にはプロジェクトの終結や清算に至って国民や金融機関に多くの負担が残されるたことが課題となりました。大阪市の旧ワールドトレードセンター事例においては、特定調停を経て大阪府に譲渡することとなり、現在は咲州庁舎として活用されていることもご存知の方は多いのではないでしょうか。

公民連携(PPP)の種類:PFIだけでなく多様な方法が整備されている

公民連携(PPP)の種類は、先に述べたPFIの他にも多くの方法が整備されています。対象分野を問わず活用しうる公民連携(PPP)手法としては、PFIのほか、指定管理者制度(地方自治法を改正し公の施設の管理を民間主体が行うことを可能とする制度)、市場化テスト(公共サービス改革法により官民競争入札を可能とするほか、民間競争入札によりソフト事業の複数年度・包括発注を可能とするもの)、コンセッション(PFI法に基づく公共施設運営権制度)が挙げられます。

対象分野がある程度限られる公民連携(PPP)手法として、公園を対象としたPark-PFI(公募設置管理制度)、道路や上下水道などのインフラ分野では包括的民間委託もあります。

課題:公民連携(PPP)の手法選択コスト

このように、実は日本は公民連携(PPP)の制度は既に幅広く整備されている国の一つなのです。制度が幅広く整備されていることの副作用として、制度が多様になりすぎて公民連携(PPP)手法を選択することに悩み、なかなか決められない(または、決めるのに時間やコストを要するようになる)といった副作用も起きうる状況となっています。

民間の方は、例えば「公共空間にキッチンカーを出店して、公園がステキに活用されるようになってほしい」というような公民連携(PPP)を通じて成し遂げたい姿を描きやすく、それを行政に提案することになるでしょう。しかし、提案を受け止めた行政としては、何の制度に基づいて民間の要望や提案を受け入れるのか行政文書として起案し、内容次第では財源を確保して議会の承認を得る必要も生じます。日本の公務員の方の仕事の進め方として、法制度をもれなく適切に確認してから手法を選択するということを必要とする現実を考えますと、制度の運用コスト、制度間の比較検討コストは課題と言えるでしょう。

このような課題を意識して、次回は、東洋大学が整理した公民連携(PPP)の類型についてご紹介したいと思います。東洋大学では、公民連携(PPP)を活用する事業とその空間の組み合わせによって、「公共サービス型」、「公有資産活用型」、「規制・誘導型」の3類型に整理しています。

見出し画像:UnsplashKaleidicoが撮影した写真

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