公民連携(PPP)の3つの類型
前回、公民連携(PPP)の概念や手法について簡単にお話させていただきました。日本にはPFIや指定管理者制度、Park-PFIをはじめとした多くの手法が整備されている一方で、制度間の比較検討し運用することが課題と述べました。今回は、事業の内容とそれを実現する空間の2軸で分類した東洋大学の3つの類型を紹介し、公民連携(PPP)でどのようなことができるのかイメージをお持ちいただければと思います。
分類の観点:対象となる事業とその事業が行われる空間
筆者が所属する東洋大学PPP研究センターでは、PPP(公民連携)の3つの類型に分類しています。①対象となる事業が公共サービスか民間サービスか、②その事業が行われる空間が公有か民有かの2点により、PPPを「公共サービス型」「公共資産活用型」「規制・誘導型」の3つの種類に分類しています。公民連携(PPP)を政府と民間部門の契約に基づく事業であると狭く考える場合には、これら3つの類型が狭義の公民連携(PPP)となります。
公共サービス型とは
公民連携(PPP)の対象となる事業が公共サービスであり、その事業が行われる空間は原則公有地・公有建物であるものを、「公共サービス型」と分類しています。公民連携(PPP)の制度では、PFIや指定管理者制度、市場化テストなどが該当します。
公共資産活用型とは
一方、対象となる事業が民間サービスであり、その事業が行われる空間は原則公有地・公有建物であるものを「公共資産活用」と分類しています。公有地の売却・賃貸や公有建物売却・賃貸による学校廃校舎活用をはじめとした、公民連携(PPP)事業が該当します。 比較的新しい公民連携(PPP)の制度であるPark-PFIを活用した事業もこちらに該当するものといえるでしょう。
規制・誘導型とは
対象とする事業が民間サービスであるものの、行政が地域経済振興の観点から関与し民間と連携しながら推進するPPP事業については、「規制・誘導型」と分類しています。事業内容が民間であり、それが行われる空間も民間であるにも関わらず、公共(政府・地方公共団体)が関わるのはおかしいのではないか、とお感じの方もいらっしゃるのではないかと思いますが、企業誘致、まちづくり、観光振興や地場企業再生などの地域課題に対して、税金を使った事業で地域の中小企業を支援する事業を実施したり、一定の要件を満たした民間事業者に補助金を出したりすることは広く行われています。
公民連携(PPP)の範囲:類型・手法により官民のイニチアチブは異なる
併せて、公民連携(PPP)の範囲について見てみましょう。公民連携(PPP)については、学術的に整理された統一された定義がなされておらず、使用する機関や人においてもまちまちです。東洋大学の定義は、純粋公共サービス(公共事業)と純粋民間サービス(民間ビジネス)の間にあるものを幅広く含むもので、役割分担が官・民の濃淡が類型によって異なっていくものと整理しています。公共サービス型においては、事業内容・事業空間ともに従来官の領域にあったものが対象となるので、官が推進のイニチアチブを持っているのに対して、規制・誘導型においては事業内容・事業空間ともに民間の領域のものが対象となりますので、民間主導による取組みを官が後押しするといった具合となります。
最後に
次回以降、公共サービス型、公有資産活用型、規制・誘導型の類型の代表的な事例をもとに、公民連携(PPP)のデザイン(事業構想)、ストラクチャー(構造)について話を進めていきたいと思います。本記事で公民連携(PPP)に興味を持たれた方は、是非フォローいただければ幸いです。
参考文献 根本祐二[2011]「PPP研究の枠組みについての考察(1)」『東洋大学PPP研究センター紀要』創刊号、pp.19-28
見出し画像:Adobe Stockの写真