脱炭素の大きな鍵を握る水素:パネルディスカッションからの3つの学び
みなさん、こんにちは。先週は東京出張で、RI Japan 2023のグリーン水素のセッションでモデレーターを仰せつかりました。この会議は主に機関投資家やアセットオーナー、そしてそれに付随するサステナビリティ関連のサービスに取り組む企業や金融機関が集い、日本での重要なトピックを議論します。900名登録、実際の参加者は500名くらいだったのではないでしょうか。およそ45分間の水素セッションでの私の大きな学びは3つありました。
1. グリーン水素、ブルー水素関係なく、水素1トンあたりの排出量を低くせよ
水素の色については、以前書かせていただいた記事をご覧くださいませ。グリーン水素は再生可能エネルギーから作られる水素。ブルー水素は化石燃料からつくられるが、排出された二酸化炭素を回収貯蔵する技術を使っている。
それぞれの課題についての私の発表資料の一部はこちら↓
パネリストの皆様からの意見のサマリーとしては、以下の通り。
・今後水素は企業の脱炭素にとって欠かせないものとなる。
・企業の脱炭素取り組みの正当性を見ている投資家は、色そのものよりも、その水素を使ってどれだけ排出量を減らせるのかに興味がある。
・水素の排出係数である水素1トンあたりの二酸化炭素(トン)の計測と報告の標準化が急がれるべき。そしてその標準は世界標準に合わせるべき。
2. 水素はかつての石油やガス、石炭とは大きく異なり、国産可能。どれだけ作り、どれだけコストを下げるかは日本次第
日本では「水素は化石燃料に取って代わるものと捉えられがちである」という意見がでた。さらには、「水素を輸入することに抵抗がない」という声が大きいという意見が出た。日本はエネルギー需要のうち9割以上を輸入に頼っている。その理由は、化石燃料は国内ではほぼ採掘できないもの、というのがGiven(与えられた)条件であった。
しかし水素は異なります。
上のグリーン水素のまとめの図を参照いただくと、大まかに言えば、水素は再生可能エネルギーと電解槽があれば国内で製造可能です。そのため、どれだけの量を作り、どれだけ安くしようかという目標があれば、達成不可能なものではないです。
やるかやらないか、活かすか殺すかは日本次第です。
水素がなくては脱炭素が難しい重厚長大の産業は、水素が安く大量に製造できる拠点に、自社の工場などを移す可能性も出てきてますし、一部の製造拠点をそちらに移して、残りのカスタマイズする部分などを日本に残すという話も、パネリストの方から共有いただきました。日本企業の競争力、そして日本という国の競争力に関わる問題だと再認識しました。
国内産で水素需要全てを賄うことは今すぐには難しいという見立てですが、そもそも水素需要が国内でどこまで必要なのか、政府には緻密な計算を施していただくことを期待しています。
3. つまるところ、再エネが水素にとっても重要、企業の脱炭素には最も重要
企業の脱炭素達成には水素が欠かせないセクターと、電化と再エネである程度は賄えるセクターとあります。
後者の場合には、当然ながら再生可能エネルギーが企業の脱炭素達成の大きな鍵を握ります。前者の場合でも上記2点でもお示ししたように、水素1トンあたりの排出量の低い水素製造のために再生可能エネルギーが重要で、国内産の水素を作るにも再生可能エネルギーが必要です。
再生可能エネルギーが奪い合いになるくらい必要になります。
最後のパネリストのお二人の方に対して、以下の質問を投げさせていただきました。
「日本の水素普及に向けて最も大事なことを一つだけ挙げるとするとなんでしょうか?」
お二人とも答えは同じで、
「再生可能エネルギー」
とお答えいただきました。
ぜひこのパネルディスカッションを聞いていただいた方、この記事を読んでいただいた方は、日本の、そして日本企業の脱炭素戦略としての水素がどのようにあるべきか、考えていただき、議論をぜひ周りの方としていただきたいと思います。水素を作ったり、輸入することが目的化しないためにも、どこにどれだけ必要なのか、何のために必要なのかを皆が考える必要があると再認識した議論でした。
先々週はアメリカ西海岸におりまして、多くの学びがありましたが、それはまた次回以降に書きたいと思います。
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