超ざっくり読む、アメリカ分断の20年史

2022年11月6日
全体に公開

みなさん、こんにちは!ちょっと更新の間が空いてしまいましたが、この間アメリカに行っていました。この記事ではアメリカについて書いていきたいと思います。ぜひお付き合いください。

最初に降り立ったのがLAでしたが、まずもってびっくりしたのが物価です。

とりあえず昼食でサンドイッチを食べたのですが、これが約15ドル。コーヒーもつけてチップを払ったら20ドルになりました。

味は「普通」といったところ。

ちょうどアメリカに行っている期間中に1ドルが150円を超え、この昼食は結局3000円ということに…。

その日の夜はロサンゼルス・ドジャースの試合を観に行ったのですが、行き帰りのウーバーやらチケット、晩飯のホットドッグ、ビールやらで、後から気づいてみたら3万円でした。どひゃー、恐るべしインフレ&円安のダブルパンチといった感じです…。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、アメリカは中間選挙を目前に控えています。LAの後はテキサス、ジョージア、オハイオ州を回ってその激戦の模様を取材してきました。

これら3州はいずれもトランプが強い州で、今回の選挙でもトランプカラーが色濃いです。潜入取材も含め、明日(11月7日)から2日連続で動画にまとめて配信予定ですので、乞うご期待です!

この記事では、2022年の中間選挙に至るまでのアメリカ政治の20年間を、ざっくりまとめてみたいと思います。

一瞬「支持率80%」になったブッシュ

ずばり、アメリカ政治のビッグイシューは「分断」(Polarization)です。耳にしたことがある方も多いと思いますが、トランプ支持者の人たちと民主党支持者の人たちが極端に分断しているという例のアレです。

二大政党制のアメリカでは社会の様々なイシューが大昔から「保守」と「リベラル」に分かれて議論されてきました。

分断そのものも大昔からあるのだと思いますが、特に2000年代になってからが顕著です。

その2000年代初頭の大統領といえば、ジョージ・W・ブッシュ(子ブッシュ)。

就任した直後の2001年9月11日同時多発テロに見舞われ、すぐにイラク戦争、アフガン戦争へと突入していきます。

Pool / プール

このときのブッシュの支持率は驚異の80%超えでした。アメリカの危機を受けてブッシュというリーダーのもと、国民が団結した瞬間でもあったと言えます。

しかしこの後、戦争の長期化や後に起きるリーマンショックに代表されるような経済の停滞もあって、ブッシュの支持率はみるみる下がっていきます。

むしろ世の中はイラク戦争の賛否や格差を巡って深い対立に入っていきました。

オバマの最大のテーマは「みんなを一つにまとめる」こと

そして、この分断の社会に彗星の如く登場したのがバラク・オバマ。黒人初の大統領になりました。

オバマといえばYes we canのスローガンが有名ですが、彼が有名になったのは大統領になる約4年前、2008年の演説です。

当時、上院議員だったオバマがここで訴えたのは「ひとつのアメリカ」。

「青い(民主党の)アメリカ・赤い(共和党の)アメリカ」も「白人のアメリカ・黒人のアメリカ」もない、あるのは一つのアメリカ合衆国なんだ、というものです。

ここから民主党のロックスターとして大統領まで駆け上がったオバマは、なにか特定の政策というよりは分断を克服すること自体をメインイシューとしていたとも言えます。

しかし任期中の出来事を振り返ると結果は真逆でした。

相変わらず開き続ける格差に怒った市民は「ウォール街を占拠せよ」の大運動に馳せ参じました。

その一方では極右の「ティーパーティー運動」が盛り上がりを見せ、政治的な主張とともに過激で暴力的なメッセージもありました。

Brendan Smialowski

オバマが差別撤廃を訴え続けたのと裏腹に、人種的な憎悪も止むことはありませんでした。

トランプという、アメリカの「症状」

そしてアメリカは2016年の大統領選を迎えます。勝利したのは、ご存知ドナルド・トランプ

2000年代序盤に分断が浮き彫りになり、その後のオバマ政権が治癒できない中、トランプは表立って分断を収めようとはしませんでした。

任期中にはBlack Lives Matterなど、人種や分断を背景にした様々な事件が起きました。しかしトランプは明確に白人至上主義者などを非難することはなく、そのたびに分断は表面化しました。

Joe Raedle / スタッフ

トランプは分断が深くなっている中で「真ん中」に寄っていって団結を訴えるのではなく、その片方にいる人達からの支持を徹底的に固めていたとも言えます。

(もっとも、大統領が被害者を擁護すれば今度は白人側が不満を募らせるので、いずれにせよ分断は超えられなかったでしょうが…)

ややダークな言い方ではありますが、よく専門家の間で「トランプは病ではなく、症状だ」と言われます。

私なりの解釈では「トランプが分断を生んだのではなく、分断という現象がトランプを大統領に押し上げた」と理解しています。

そして今週迎える、中間選挙

この大分断時代にコロナまで重なり大混乱の中で行われたのが2020年の大統領選挙。

今度はまた「分断を乗り越えよう」型が政権に復帰します。オバマ時代の副大統領、ジョー・バイデンです。

Sandy Huffaker / 特派員

以下は、バイデンの就任演説の一部です。

今、政治的過激主義、白人至上主義、国内テロリズムが勃興しています。(中略)アメリカを分断する勢力は根深く、古くから存在するものです。我々はこの赤(共和党)と青(民主党)、地方と都市、保守とリベラルを闘わせる無作法な争いを終わらせる必要があります。
私は、すべてのアメリカ国民のための大統領になることを誓います。
バイデン大統領 就任演説より

かつてのオバマを思わせる話の内容であり、分断を乗り越えることを大きなテーマにしています。

では、バイデンの1年半でアメリカの分断はまともになったのか。

私がアメリカで見たものはその正反対でした。むしろ、トランプ支持者の過半数はバイデンが選挙不正で選ばれた大統領だと信じているのが現実です。

一方のバイデン政権も支持率はどん底で、民主党支持者からしか評価されていない。

そして、そんな中で11月8日(日本時間9日)に行われるのが中間選挙です。

こうした「分断」の背景もあって、注目度の高さは歴史的です。この極度な分断の中で、国民が選ぶのはどういった政治家たちなのか。まさに選挙がアメリカの将来を占うでしょう。

今週1週間はぜひ、アメリカの中間選挙にご注目いただきたいです。

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