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NP“コンフィデンシャル” 4人目

広島在住ピッカー安田馨さん「地方在住者こそNPを活用すべき」

2016/8/20

NewsPicksで活躍する一般ピッカーにお話をうかがう「NP“コンフィデンシャル”」、四人目に登場いただくピッカーは、広島在住の安田馨さんです。

大学進学時に上京し、教育分野のキャリアを積まれてきた安田さん。2014年には、20年ぶりに故郷に戻り、大学経営に携わっています。そんな安田さんはNewsPicksを「地方在住者にとって意義深いサービス」だとお話ししてくれました。その理由とは?

また、「誰でも有益なコメントができる」と考える安田さんが、コメントを書くときに意識されていることもご紹介します。

【バックナンバー】
 第1回:LA在住ピッカー・野村修平さん「コメント力向上を決意した日」

第2回:人気ピッカー・牧田幸裕さんが語る「コメントする意義」とは?

第3回:古都のピッカー・小室勝裕さんがNewsPicksに期待すること

NewsPicksの魅力は「他流試合」

──NewsPicksでは、教育関係のニュースでコメントをよくお見かけします。広島にある女子大学にお勤めだそうですが、どんな風にNewsPicksを活用していますか?

大学業界では、大学職員の集まりはわりとあるんです。ただ、自然と横のつながりは作られる一方で、他業種との交流は多くありません。東京の大学に勤めていた頃から、大学外の集まりには積極的に参加して、そこからいい刺激をもらっていました。

2年前に故郷・広島に引っ越しまして、業界外の人と出会う機会はますます少なくなりました。広島は魅力のある街ですが、多様な人とのコミュニケーション機会においては、東京との大きな差を感じます。つい身近なコミュニティで完結してしまい、世界が狭くなりがちなんです。

NewsPicksは、柔らかい異業種交流の場というか、他業界の方の考えを、地域を超えて知ることが可能です。皆さんがそれぞれの観点から、そのニュースをどう見るのかがわかるので、とても勉強になる。

例えば大学関係のニュースに対しても、それぞれの立場の方が読み解かれていて、コメントを読むだけで多様な価値観があることに気付かされます。大学の中にいるとなかなか接する事が出来ないので貴重ですね。

安田馨(やすだ・かおる) 広告代理店、大学職員を経て、東北復興事業と高校生のキャリア教育事業を行うNPOカタリバに転職。2014年より広島に戻り安田女子大学にて学長室勤務。学生のポテンシャルを最大限引き出せる環境づくりをテーマに、学部学科の新設や情報公開、大学のブランディングに関わる広報業務に携わっている。

安田馨(やすだ・かおる)
広告代理店、大学職員を経て、東北復興事業と高校生のキャリア教育事業を行うNPOカタリバに転職。2014年より広島に戻り安田女子大学にて学長室勤務。学生のポテンシャルを最大限引き出せる環境づくりをテーマに、学部学科の新設や情報公開、大学のブランディングに関わる広報業務に携わっている。

「大学が嫌いだった」安田さんの紆余曲折のキャリア

──経歴を拝見すると、現職の安田女子大学の前にも、NPO法人カタリバ、東京の女子大学や、教育機関向けの広告代理店など、一貫して教育に携わられていますね。

そうですね。ただ、ここに至るまでには、紆余曲折がありました。

大学時代にも2回休学して、6年かけて卒業しました。新卒で入社したベンチャーでは、内定直後のネットバブル崩壊を受けて、3ヶ月で退社したこともあります。そこからフリーター生活を経て、大学経営を学ぶために大学院に進学しました。ですので、キャリア形成としてはたくさんの失敗をしてきています。

また、前職のNPOカタリバでは、大学生ボランティアたちと一緒に、高校生向けのキャリア学習プログラムを作っていました。中途半端なものは許されず、自然と学生へのフィードバックも厳しくなります。しかし本気になった学生たちは、最後にはこちらの想像以上のものをつくり上げていきました。

彼らとの活動を通して、学生の潜在能力の大きさを改めて実感したんです。そして、これからの時代の大学は、学生のポテンシャルを信じて引き出す場にすべきだと思い、大学職員になりました。

学生時代は正直言って、大学が好きではありませんでした。大学職員は大学が好きで職員になられる方が大半ですが、私は嫌いだったからこそ自分の手で大学を変えていきたいと考えました。私のような人間は少数派ですが、優等生以外の気持ちもわかるのは、むしろいいことだと感じています。

また、教育の問題の多くは、社会の側からの視点を持たないと、課題の本質に迫れません。これまでの経験は、職員として強みになると思っています。

女性のキャリア形成の難しさ、男性目線で語る

──安田さんが女性のキャリアに関して書かれているコメントは、まさに女性の「課題の本質」を理解しようという気持ちが伝わってきて、私自身も読んで励まされることが多いです。それが男性の目線で書かれていることが、貴重だと感じています。
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女子大学にいますので、学生たちのキャリアを一緒に考える機会は、自然と多くなります。そのうえで社会を見たとき、女性のキャリア形成におけるハードルは、本人の能力と関係のないものも多く、また誰しもが避けられないものが多いと感じます。

日本女性の社会進出を数字で見ても、男性とのギャップがまだまだあります。女性のエンパワーメントを推進しようという動きもありますが、女性の抱える課題について、男性の理解が進まないまま解決するのは難しい。そして男性はどんな役割が担えるか、共に考える機会がある方が近道だと思います。

報道からだけでは伝わらない肌感覚の大切さ

──安田さんの経歴をさかのぼると、幼少期には南アフリカにいらしたそうですね。NewsPicksでも、安田さんは実体験に基づいたコメントを書かれています。
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親の仕事の都合で、小学3年生から4年間、南アフリカ共和国のヨハネスブルグに住んでいました。

当時はまだアパルトヘイト制度がある頃で、私の家族も「名誉白人」として生活していました。撤廃されたのが1994年のこと。この制度があったことでどんな影響が残るのか、どのように国は変わっていくのか、そんな疑問を大学での研究テーマにしました。

大学休学中には、南アフリカの農村地域でフィールドワークを行いました。都心部ではなく、農村に赴いたのは、情報がほとんど表に出ないからです。そこで、現地で働く農家の方々に、アパルトヘイト後の生活の変化や、HIVに関するヒアリングを重ねました。

──現場に赴いて、そこで暮らす人々に直接話を聞く。学生の頃からコミュニケーションの機会を大切にされていたようですが、それはなぜなんですか?

いやいや、むしろ私は頭でっかちなタイプなんです。

大学浪人時代にはこんなことがありました。

家で新聞を読んでいたら、南アフリカのスタディツアー報告会というイベント告知があったんです。広島で南アフリカの話が聞ける機会も多くないので、参加してみましたが、2週間のツアーで得たことですから、正直言って内容は深くはなかった。

報告の最後に、開催者が「現地で出会った子どもたちは、靴を履いていなかったので、彼らに靴を送る活動を始めたい」と言ったんです。それを聞いた時に僕は、「それで南アフリカの抱える問題の何が解決するのだろう」と、批判的に受け止めました。

──それは、なかなか辛辣な浪人生ですね。

生意気ですよね(笑)。でも、少したってから思い直したんです。

私は社会が抱える問題をマクロな視点で考える力をつけたいと、大学に進学しようとしていましたが、それと同時に、目の前の小さな気づきから行動し、変化を起こすこともできるのではないか、と。

そして私も、靴を送るという活動を手伝わせてもらいました。

物事全体を考えるとともに、今やれることを探して動くこと。その両方が大切だと気づかされて、私にとって大きな転換でした。

また、自分一人が南アフリカについて一生考えるより、一万人の人が南アフリカについて考える場を作るのも貢献なのではないか、と思うようになりました。そこで、多くの人に考えるきっかけを提供できる、教育の仕事に興味を持ち始めました。

大学時代の研究テーマは「アパルトヘイト後の南アフリカの経済発展の阻害要因」。農村に赴き、現地で働く人々にヒアリングを重ねた。

大学時代の研究テーマは「アパルトヘイト後の南アフリカの経済発展の阻害要因」。農村に赴き、現地で働く人々にヒアリングを重ねた。

大学経営に携わる自分がNewsPicksでできること

——NewsPicksでは、今のお仕事の専門性を活かしたコメントも多く投稿されています。コメントする際、心がけていることはありますか?

教育分野は多くの方にとって身近であり、無関心ではいられない分野だと思います。

その一方で、今の教育、特に大学経営はどうあるべきか、というのは、業界内だけで議論されがちです。それは、外から全体像が見えにくいせいでもあると思います。

教育は、全員が専門家だと私は思っています。それぞれが教育を受け、その経験から語れるものがあるはずですから。だからこそ、NewsPicksコミュニティの皆さんのニュースへの理解を深める一助となれるように、大学の現場からの視点を加えてコメントしています。

具体的には、そのニュースと関連性のある過去記事や一次情報などを紹介し、ニュースのバックグラウンド、ここに至った経緯を踏まえてコメントするように心がけています。

──ニュースの背景は、ある程度の期間、同一分野のニュースを追っている方でないと見えてこないですよね。例えば安田さんは大学世界ランキングで近畿大学が入った記事も紹介していました。ランク入りが一体何を意味するのか、それを書いてくださるから、私たちは気づきが得られます。
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コメントとして意見を書くことは、頭の整理になりますし、私自身が全体の動向、つながりを意識することができます。コメントを書く時には、他の記事を検索したり、他のサイトでデータを調べたり、ただ書くだけではない、別のアクションが発生しますね。それが勉強になりますし、自己研鑽になっています。

みんなの実感知がNewsPicksの面白さ

──NPを使い始められた方で、コメント投稿を含めて、もっと活用したいのだけど、どうしたらいいのか分からない、という方もいらっしゃるようです。そんな”新入生たち”に、安田さんならどんなアドバイスをされますか?

NPを使い始めたのが昨年9月なので、私もまだ1年生です。アドバイスできる立場でもありませんが、使い始めの方であれば、まずは身近なものに関するニュースを探してみるのがいいと思います。

例えば、自分が日常的に使っている商品やサービスについて、使用感やそれを選ぶ理由を書いてみる。それだけで、他の人にとって価値のあるコメントになると思います。

大事なのは、自分が実感知を持てるものであること。

私の場合、専門の教育分野でなくても、広島在住という地域の視点からであれば、皆さんにとって多少なりとも価値を感じていただけるコメントを書くことができます。

NewsPicksの魅力は、立場の異なるユーザーから、それぞれの実感のこもったコメントが集まるから生まれるのだと思うんです。職業や所属先だけでなく、住んでいる地域や年齢など、それぞれの特性、特徴に根ざしたコメントがどんどん集まる場になれば、一層面白くなると思います。

一人一人の参加者の貢献が、サービスを形づくるという意味では、大学もそれに近いところがあります。教育サービスを提供するのは先生や職員ですが、そこで学ぶ学生は単なる受益者ではなく、同じ組織を作っていくメンバーなんです。NewsPicksに参加するユーザーもまた、一人ひとりが当事者。いいコミュニティを作っていけたらいいですよね。

安田馨さんのおすすめピッカー

安田隆之さん

「名字つながりでNPにおける兄貴のような存在です。専門的見地だけでなく、ウィットに富むコメントや安田さんのパッションが表れたコメントが好きです。」

Naoya Satoさん

「いつもイノヴェイションされているイメージですが、学生や若者への視点やコメントに優しさがあって憧れます。コメントを書くことにハードルを感じていらっしゃる方はぜひ参考にされると良いと思います。」

高橋孝輔さん

「いつもタックルされているイメージですが、教育関係の記事へのコメントは専門性が高く、参考にさせていただいています。タックルコメントを何度も読んでいるうちに、難しいことの大半はタックルで解決する気が最近してきました。」

小野 編集後記
教育について、女性のキャリアについて、NewsPicksでお見かけする安田さんのコメントからは、課題を抱える人を理解しようとする、まなざしの温かさが伝わってきます。その温かさが、出会った人々と交流を重ね、時間をかけて培われたものだということが、取材で語られた「紆余曲折」のエピソードからよく分かりました。

現場での実感知を大切にしている安田さんは、NewsPickについても、多様なバックグラウンドを持つピッカーさんの率直なコメントに魅力を感じている、とのこと。お仕事柄、特に学生さんのコメントに注目されているそうです。よい意見交換の場になればと願っております!