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NP“コンフィデンシャル” 5人目

金融ピッカー鈴木優一さん「お金で夢を諦めない世界」を目指す

2016/8/27

NewsPicksで活躍する一般ピッカーにお話をうかがう本連載、5人目のピッカーは、鈴木優一さんです。

金融・マーケット関連のニュースに継続的にコメントされている鈴木さん。フォロワーの数は1万7000人を超える、人気ピッカーの一人です。

「コメント欄は両論併記になるのが理想」と語る鈴木さんが、自分に課しているコメント・ポリシーとは? また、鈴木さんが取り組まれている金融教育に、NewsPicksが有用だと考える理由も教えていただきました。

アウトプットすることの利点

──鈴木さんがNewsPicksを使い始めたきっかけは?

アカウント登録したのは2年以上前で、当時はまだ銀行に勤務していました。

そもそも私には「アウトプットすることでインプットが深まる」という感覚があります。以前から、Facebookでつながっている友人向けに、日経新聞の記事にコメントを添えてシェアしていたんです。そのため、NewsPicks知ったときも、自己研鑽になりそうだと思って使い始めました。

Facebookは、自分で取り上げたニュースに対してコメントするという、自己完結型のコミュニケーションでした。それがNewsPicksは、他の方が取り上げたニュースに対してもコメントできる形式。相対的にコメントの幅が広がるという利点があると思います。

──「アウトプットすることでインプットが深まる」。なぜそう考えるようになったのでしょうか?

中高生の頃に取り組んでいた勉強法がきっかけです。漫然と勉強してインプットするのではなく、自分が先生役になって、友人から質問を受け、説明しながら覚えるやり方をしていたんです。その結果、記憶が定着しやすく、試験の点数も良い傾向があると感じていました。

また、大学4年間は家庭教師をやっていました。文系の学生だった私が、数学の公式などを今でも覚えているのは、生徒さんに教えていたからだと思います。

アウトプットを繰り返す学習スタイルを、社会人になっても継続したい。そう思ったことが、NewsPicksでコメントする習慣につながりました。まあ、いろいろ理屈をこねましたが、何かを書くことが単純に好きなんです(笑)

鈴木優一(すずき・ゆういち) L!NX(リンクス)株式会社専務取締役。証券会社や銀行での勤務経験から、日本の金融教育の必要性を実感。金融教育の普及に向けて起業し、資産形成、資産運用のサポートに携わっている。

鈴木優一(すずき・ゆういち)
L!NX(リンクス)株式会社専務取締役。証券会社や銀行での勤務経験から、日本の金融教育の必要性を実感。金融教育の普及に向けて起業し、資産形成、資産運用のサポートに携わっている。

証券会社、銀行勤務を経て起業

──鈴木さんのプロフィールには、「金融教育の普及に向けた活動をしている」とありますが、その活動についてお聞かせください。

証券会社や銀行勤務を経て、仲間と一緒に起業しまして、現在はお客様の資産形成や、資産運用のコンサルティングをやっています。

具体的には、金融に関するウェブメディアを運営し、基礎知識や時事的ニュースの解説などのコンテンツを提供しています。そこで興味を持ってくださったお客様には、個別にニーズをヒアリングし、金融商品のご提案も行っています。私自身は、メディア運営を通じた情報発信を担当しています。

起業したのは、自分たちの考える金融教育のサービスを、年数をかけてでもゼロから作りたい、と考えたから。それは、金融知識を持ち合わせる人々を増やすことが、国や社会全体を考えたときに、必要だと感じたためです。

──取材をお願いしておきながら、こんなこと言うのも心苦しいのですが、私は金融に対して、苦手意識が強いです。子どもの頃、為替のディーラーだった父が、深夜まで海外に電話しながら、怒鳴ったり受話器を叩き割ったりしていたんです。「金融は人を豹変させる魔物だ」と、金属アレルギーならぬ金融アレルギーを患っています。

とっつきやすい世界ではないので、苦手意識をお持ちの方も多いと思います。

──鈴木さんはなぜ金融に興味をお持ちになったのですか?

就職活動がきっかけです。最初に参加したセミナーがたまたま「金融フォーラム」で、そこで面白さに目覚めまして、この業界にしぼって就職活動をしました。

2007年に新卒で入った証券会社で4年、銀行に3年半、そして現在に至るまで、こんなに長くこの業界に身を置くことになるとは、当時は思っていませんでした。

──証券会社というと、ノルマがきつそうなイメージもありますが、どんな大変さがありましたか?

私もそういう印象を持っていたので、3年やってみてダメだったら、別の業界に転職しようと思っていたぐらいです。

最初の配属はリテール営業でしたが、幸運なことに上司や先輩に恵まれて、非常に楽しかった。会社からも、月間賞や社長賞といったかたちで、評価もされました。

ただ、順調ではあったもののジレンマを抱えるようにもなりました。目標を達成すれば上司や仲間からは感謝されますが、扱っている商品の特性上、お客様に喜んでいただけるとは限りません。早い段階でそれに気づいたのは、入社して1年数か月後にリーマン・ショックが起きたからだと思います。
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金融教育の必要性を痛感

──とんでもない時期に、金融業界に入られたわけですね。

現場に出てしばらくは、マーケットが下がりっぱなしでしたからね。上司や先輩が担当していたお客様のなかには、大きな損失を被った方もいらっしゃいました。

どんなに知恵を絞って提案しても、市況によってはお客様を損させてしまうかもしれない。私は、そんな特性のある商品を、専門用語をまくしたて、お客様との情報の非対称性を利用して売りつけたくない、という思いを強くしました。

必ずしも儲かるとは限らない商品だからこそ、まずは金融教育を提供することから始めるべきではないか。お客様が金融知識を身につけるお手伝いがしたいと考えたのです。
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「お金で夢をあきらめない世界」

──鈴木さんは会社のサイトに「お金で夢をあきらめない世界を実現したい」と書かれています。どんな思いが込められていますか?

金融機関だけの問題ではありませんが、我々のビジネスはお金のあるところに働きかけて、さらに増やすことで収益を取ることに重きを置きがちです。しかし私は、金融にはむしろ、お金がないところに行き渡らせることができる、そんな社会的な役割もあると思っています。

──“金融”という言葉のイメージが変わりますね。

お客様に応対する現場で、数千万、数十億という額のお金を扱っていると、感覚が麻痺するというか、そのケタに慣れが生じるところがあります。取り扱う金額にかかわらず、夢や目標に向けてお金を必要としている方々をサポートしたい。安定した大企業を辞め、起業してまで実現したかった「金融教育」を、自分自身が見失わないように、仰々しくもそんな言葉を掲げています。

両論併記が理想

──鈴木さんはNewsPicksにはほぼ毎日コメントをされていますが、どんなコメント空間が有用だと考えていますか?

コメント欄には、多様な角度からの意見が並んでいてほしいです。他のサイトにあるような、激論を交わす必要はないと思うのですが、コメント欄自体が両論併記というか、様々な主張がある方が望ましい。それを読むことで自分の考えを深められますから。

──そうしたコメント空間にするために、鈴木さんご自身が意識されていることはありますか?

第一に、コメントをする前に、裏づけとなる一次情報を確認することです。その上で、前後の流れやストーリーを伝えるコメントを心がけています。

特に金融は、その時のニュース、記事自体は定点的な情報が多く、そこに至った経緯の理解こそが必要です。きちんと一次情報を把握した上で書かれているコメントは、参考になるものが多いですね。

第二に、自分の中でしっかり腹落ちしたことだけを書くことです。自分と異なる意見がたくさん並んでいても、もしそれと違う考えがあるなら、臆せずに書いた方がいい。もちろん下調べは必須です。

逆に、よく分からないと感じることには、私はコメントしません。特に「金融・マーケット」カテゴリは、半端な理解で書いたコメントが、気づかぬうちに誰かに影響を与えてしまうかもしれない。余計なトラブルを招かないように気をつけています。

そして最後に、自分と違う意見の方の、人格を否定するコメントや、誹謗中傷を絶対にしない、ということです。色々な考え方があるんだな、と思うに留めて、たとえ相手から攻撃されることがあっても、やり返さない。

それをやってしまうと、両論併記的なコメント欄にはなり得ませんから。
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──鈴木さんのコメントからも、この取材からも、「自分の考えと異なる視点から、あえて見ること」に価値を感じているのが伝わってきます。そうお考えになるのはなぜですか?

大学時代のゼミが、ディベート中心のクラスだったからかもしれません。ディベートは、あるテーマに対して、肯定と否定の両方の視点に立って考え、議論するゲームです。

たとえ、自分が肯定側の意見を持っていたとしても、否定側の立場となって相手を説得することが求められます。それぞれの立場に身を置くことで、思考を深めることができるわけです。そのため、教育的な効果は大きいと思います。

ディベートで勝つためには、冷静さを保つ必要があります。そこは学生時代からの流れで、今も気をつけていることです。

「趣味といえばカラオケですね。証券会社時代に、上司が大のカラオケ好きで、一緒に週5で通っていました。1970年代から90年代の歌は、ほぼコンプリートしていると思います」

「趣味といえばカラオケですね。証券会社時代に、上司が大のカラオケ好きで、一緒に週5で通っていました。1970年代から90年代の歌は、ほぼコンプリートしていると思います」

ビギナーにも業界関係者にも使えるNewsPicks

──「金融を学びたいけど何から始めたらいいか分からない」と感じている、私のようなビギナーにも、NewsPicksはオススメですか?

NewsPicksを活用するのは、いい勉強法だと思いますよ。

まずは、「いいコメントをしているな」と感じる方をフォローする。次に、タイムラインを追ってその方がピックしている記事を読む。これが一番勉強になると感じています。

──では、証券会社や銀行に勤めている業界の方にとっては、どんな利用価値がありますか?

私自身が企業に所属していた頃、日頃触れられる意見の幅に限りがあり、物足りなさを感じていました。会社が関わる分野の周辺知識までは身についても、世界的な枠組みについて感じられる機会はなかなかないものです。その意味で、コメントを読むことで、様々な視点からの学びがあると思います。

同業の知り合いには「実名ではコメントできない」と言っている人も多いですが、コメントを読むだけでも十分に価値があると思います。

NewsPicksでは、金融分野に関わらず、自分の考えと真逆の主張をされる方もいらっしゃいます。全く異なる意見に触れるのは、勉強にも刺激にもなると私は思うのですが、それは自分で意識的に求めていかないと、その機会は生まれないんですよね。

そして、自分とは違った角度からの見方をしているコメントに多く触れることで、実際にお客様と対面する際に、少し深みのある話ができたのではと感じることはあります。NewsPicksは、多様な意見に接することのできるツールとして、価値のあるサービスだなと感じています。

鈴木優一さんのおすすめピッカー

K. Katsuhikoさん

「Market Watcherの名前で親しまれており、年齢的にも、業界でのご経験的にも先輩にあたる方です。コメント欄でよくご本人も書かれていますが、“地道にコツコツ”を実践されていらっしゃる。皆さんにフォローをお勧めしたいピッカーさんです。」

Kenji Aさん

「短文で、核心をついたコメントをされる。いつも直球でピリッと辛口なKenji A.さんから、Likeいただけると嬉しくなります(笑)。Likeだけで、ここまでの喜びを与えてくださる方っていないですよね。」

Kato Junさん

「金融、経済ニュースへの知識や見識の深さが光るピッカーさんです。そしてNewsPicksのサービスや機能についても “中の人”代表格として、ポリシーを感じさせるコメントをされています。NPコミュニティへの敬意が感じられて、尊敬しています。」

小野 編集後記
金融・マーケット情報のカテゴリで、よくお見かけする鈴木さんのコメント。そのコメントの背景にある、鈴木さんの金融教育への熱い思いが、お話を通じて伝わってきました。

自分の金融アレルギーも、教育によって改善できるかもしれない、と淡い期待を抱きつつ、まずはNewsPicksの「金融・マーケット」を熟読することから始めてみます!