優秀な人が知っている「対立を解消する方法」

2024年7月1日
全体に公開

ここ数年、さまざまな国家や組織間の対立が世界中で起こっています。しかし規模の違いはあれ、組織と組織、また時には上司と部下や同僚といった近しい職場においても、対立を多く見かけることが多くあります。

厚生労働省の平成19年労働者健康状況調査によると、仕事に関する悩みのうち、人間関係の問題が占める割合は、男性で25.1%、女性で28.9%。人間関係の問題は、仕事の質の問題、仕事の量の問題に次いで、3番目に多い悩みの項目でした。

また、マイナビニュースの会社の人間関係で悩む割合によると、職場の人間関係で悩んでいるのは、20代で39.0%、30代で31.6%、40代で32.7%でした。若手は、実に4割ほどの人が人間関係に悩みをもっています。

人間が「対立」から受けるストレスは相当なものです。しかも多くの人のこのストレスに悩まされているにもかかわらず、私たちは無意識のうちに対立を繰り返してしまいます。

多様な人材が集まるグローバル企業では、特にこの対立による業務効率の低下に昔から注目しており、「コンフリクトマネジメント」という理論的な方法で対立と向き合い、解消する方法を訓練しています。

今回は、「職場での対立にどう対処していくのか」を解説します。

◇対立は自然と発生してしまう

1954年にアメリカの心理学者、ムザファ・シェリフによって行われた「ロバーズ・ケーブ実験」をご存じでしょうか。

この実験では、「サマーキャンプにきた子どもたちを2つのグループに分け、さまざまな課題に取り組ませるうちに、2つのグループが対立し、その後友好に向かった」という結果を示しました。

具体的には、まず子どもたちを2つに分け、互いのグループの存在を知らないまま、最初の1週間を過ごします。子どもたちは初対面でしたが、自然とリーダーシップをとる子が現れ、その子を中心に次第にゆるやかなヒエラルキー(階層)に基づく集団行動が作られていきました。この段階で集団は「組織」となり、所属意識や、同調圧力が自然発生していきます。

2週目に、子どもたちは、自分たちのほかにもう1つのグループがいることを知らされます。そして、この2つのグループは「勝ったチームが商品を獲得できるゲーム」に取り組みます。この競争によって、両グループは激しく対立し、最終的にはスタッフが介入しなければならないほどの大乱闘となってしまいました。

◇対立が発生してからの「対話」はあまり効果がない

このような対立関係を解消するために、「たくさん話し合う」という方法が現実社会ではよく採用されます。お互いの誤解を解くように意見を交換したり、一緒に食事をしたりすることで、対立が解消される――そう思いがちですが、実は初期の段階を除けば、あまり効果的な方法ではありません。

たとえば、戦争中の2カ国間が話し合っても解決することはほぼありません。どちらかが降伏状態になるか、第3者が介入してそれぞれと個別に対話することで、収束に向かいます。しかし管理職が、部下同士のもめごとを解決するときには、なぜか「まあまあ、まずはお互い話し合うのが大事」とつい考えてしまいがちです。

ロバーズ・ケーブ実験においても、対立関係が発生したあと、同じ食堂で食事をとったりして接触機会を増やしたりしてみたものの、対立中の集団をさらに深刻な状況にしてしまいました。

つまり、深い対立状態になってしまってから両者の対話をすることは、かえって状況を悪くしてしまう(=逆効果)なのです。

◇対立を解消する方法①「共通の目的をつくる」

ロバーズ・ケーブ実験では、両グループに共通の目的をもたせることで最終的に対立を解消させました。食料を買いに行くトラックが動かなくなる状況や、キャンプ場の蛇口から水が出なくなるという状況をわざと発生させて、2つのグループが協力しないと解決できない課題を与えました。そして2つのグループが共同作業を行い、課題をクリアすることで友好な関係が築かれたのです。

この実験では、対立関係が発生した場合、両者で協力せざるを得ない共通の目的をもつことが有効であることを示しています。

◇対立を解消する方法②「第三者に介入してもらう」

相手と対立した場合、人間の心情的に相手に対して嫌悪感を持ってしまうこともあります。そして、一度嫌悪感をもった相手に対しては、直接的に対立していること以外においても、全体的に嫌悪感を持ってしまうことが少なくありません。これを「ヒューリスティックス」といい、人間の自然な心理状態の一部です。

たとえば、ハエが止まった果物があると、ハエが止まっていない部分も含めて汚く感じてしまいます。嫌悪という感情には「警報」の役割があるため、正確な理解よりも危険の回避を優先するようになっていることが原因です。危険の有無がよくわからない場合、あるいはすばやく判断しなければならない場合、限られた情報から短時間で結論を出す必要があり、よく考えれば危険がないようなことに対しても、直観的に嫌悪を感じるのです。

このように、対立する感情は次第に複雑になり、もともとの事案と関係のないところにまで飛び火する傾向があります。なので、対立や嫌悪を感じたら無理せず、第三者の介入を依頼し、互いに冷静に対立のポイントに立ち返るよう促すことは効果的です。

◇対立を解消する方法③「嫌悪の根っこを特定する」

人が嫌悪感をもつ場合のパターンはある程度、特定されています。グローバル企業では、この嫌悪感をもつパターンを社員に教えることで、もし自分が誰かに嫌悪感をもっているときに、もともとの原因がいったい何だったかを冷静に振り返り、その部分に絞って解消していく努力をしたり、上司に相談したりすることを指導しています。皆さんも、それぞれこの10の原因で、強く感じやすいものとそうではないものがあるのではないでしょうか。

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【対人嫌悪の10の原因】

横暴な言動……高圧的な言動や、無神経な発言

マナーの欠如……感謝の欠如や、最低限の礼儀や思いやりを欠いた言動

尊大な言動……知ったかぶりや根拠のない上から目線などのいばった言動

計算高さ……上司や周囲によく思われるような自己演出

閉鎖的な雰囲気……周囲となじもうとしない姿勢

幼稚な言動……年齢に見合わない幼稚な言動

互いの相違……価値観や考え方があわない状態

自分への否定……自分に対しての否定的な態度

外見への不満……不潔な外見や服装

ずうずうしさ……合が悪くなると頼ってくるような態度

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嫌悪感は、一度もってしまうと増幅していきます。自分の嫌いな人や対立している人の言動を見かけると、たとえその人がたまたま良いことをしていても印象に残らず、イメージが改善されにくいものです。

誰かと対立して嫌悪感を感じた場合には、できる限り早い段階で、自分が相手の何に対して嫌悪感をもっているのか、上記の10の分類を使って特定しましょう。そして、それ以外の部分を切り離して、冷静に見ることで、嫌悪する感情のポイントを絞ります。

すると、不思議とネガティブな感情が整理されていきます。感情が増幅されてくると自分で解消することは難しくなってくるものです。その場合は、第三者の介入を早めに検討しましょう。

できる限りストレスを少なくするためには、自分の嫌悪感にフタをしたり無理したりするのではなく、むしろ敏感になって、早めに対処することが大切です。ぜひ実践してみてください!

Top画像@Linustock

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