【4月1日施行】AI活用の起爆剤となりうる「仮名加工情報」

2022年3月15日
全体に公開

今回は、4月1日の施行が目前に迫った改正個人情報保護法から、「仮名加工情報」の制度をご紹介します。

これは、個人情報の利活用を検討する際には絶対に知っておくべき知識であると言えるでしょう。

なぜなら、最近規制強化の話が多い個人情報保護の領域において、今回の改正で新設される「仮名加工情報」は、これまでの規制を一部緩和し、AIの活用を大きく後押しする可能性を秘めているものだからです。

「規制が強化された」という情報は法務などから入ってくることが多いと思うのですが、「規制が緩和されてデータ活用の幅が広くなる」という情報はなかなか入ってきづらい一方で、知らないとデータ活用の大きな可能性を閉ざしてしまい、他社に大きな差をつけられてしまうことにもなりかねません。

ということで、早速具体例を見ながら検討してみましょう。

保険会社A社では、顧客の病歴や健康状態などのデータが蓄積しており、このデータを使えば、健康状態から病気のリスクなどを予想できるAIを開発できるのではないかと考えた。このようなAI開発ができるかを検討するためにチェックすべきことは何か。

保険会社や医療機関などには相当数の病歴等のデータが蓄積されていると思われ、これをAI開発に活用できれば非常に有用でしょう。

では、このようなデータがAI開発に使えるかどうかを判断するために、確認すべきことは何でしょうか。

(少し考えてみてください)

① 通知・公表した利用目的を確認する。

答えは、個人情報取得の際に通知・公表した利用目的の確認です。

個人情報は、この利用目的の範囲内でしか利用できない、という規制があるからです。

(思いつかなかった方は基礎編をご参照ください!)

多くの場合、個人情報の取得時に「AIの開発に利用します」といったことを利用目的に含めていることはないのではないでしょうか。そうすると、これらのデータをAIの開発に利用することはできないことになります。

(こういった場合でも、場合によってはAI開発に使えるという有力な見解もありますが、ここでは省略します)

② 情報を加工して「非個人情報化」して利用する

そうすると、このデータをAI開発に使おうとすると、個人情報ではなくしてしまう、ということが必要になります。

先日解説したJR東日本のSuicaデータの販売も、Suicaデータを加工して個人情報ではなくして販売する施策でした。

また、法的には「匿名加工情報」という制度もあり、一定の加工をした上で個人情報ではなくしてしまう、というのも一つの手ではあります。

ただ、匿名加工情報のように、個人情報を非個人情報化して活用する方法は、非個人情報化するための加工の過程で、データの重要な特徴が失われてしまい、十分に活用できない、という問題がありました。

③ 仮名加工情報という手段

これを解決するのが、「仮名加工情報」です。

仮名加工情報のポイントは、大きく分けると二つです。

① 匿名加工情報よりも少ない加工でよい(個人情報に該当する情報も利活用が可能になる)

② 仮名加工情報に該当する情報は、事後的に利用目的を変更して利用できる。

もう少し詳しい内容は次の記事(【4月1日施行】AI活用の起爆剤となりうる「仮名加工情報」②)で解説しますが、要は、

個人情報を含むデータを、これまでよりも少ない加工で、当初の利用目的を超えて利用できる、というものです。

医療データ・金融データ等をはじめとして、膨大なデータが「AI開発に利用したいが利用目的の範囲を超えるので使えない」データとして塩漬けになっていると思われます。

仮名加工情報は、こういったデータの利活用の途を開くもので、うまく活用すればかなりのポテンシャルを秘めているといえるでしょう。

※本記事は二部構成になっており、「【4月1日施行】AI活用の起爆剤となりうる「仮名加工情報」②」に続きます。

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