ブレインストーミングをイノベーションする:私たちのブレスト法を紹介します。

2024年4月15日
全体に公開

ブレストから良いアイディアが生まれていますか?

現在のブレインストーミング法は、効果的でないという指摘を最近目にします。

例えば、シーナ・アイエンガーは、個々人が独自にアイデアを出す方が、グループでのブレインストーミングよりも良い成果を出すとする研究を引用し、グループでの創造性を疑問視しています。
Think Bigger、シーナ・アイエンガー
マイケル・ディールとヴォルフガング・ストローベは研究の結果、個人でブレインストーミングを行う方が、グループで行うブレインストーミングよりも優れたパフォーマンスを発揮できると発表しています。
また、暦本純一教授は、ブレインストーミングの参加者は、ブレストの中で印象的なアイデアを無意識に選好し、また、量を求められるが故に、満足のいくアイディアが出せないまま多くのアイディアを出してしまうと指摘しています。
妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアのつくり方、暦本純一

多くの人にとってアイディア出しが創造性の象徴であり、ブレインストーミングがイノベーションの『メインイベント』、つまり最重要なフェーズであると認識しているので(私はそうは思いませんが)、ブレインストーミングとプロジェクトの成功を密接に結び付けます。そのために、無意識にリスクを避け、個々人の自由な発想よりもグループ内の方向性の一致を求める傾向にあり、これは、皮肉にもブレインストーミングを成功させたいと言う共通の思いが同調圧力となり、ブレインストーミングの目的である真の創造性を抑圧することになります。

確かに、特に大掛かりなブレストは会社にとって大きな投資でもあるので、成功させたいと言うプレッシャーも大きいのではないでしょうか?このような経験、皆さんにもあるのではないですか?

個人ブレスト

新型コロナウイルスのパンデミックの折、私たちも、全員が自宅待機になったので、リモートでのブレインストーミングが求められ、従来のアイディア出しの方法を見直す必要に迫られました。私たちは仕方なく、個々人でのアイディア出しを優先し、後でそれらをリモートによるブレインストーミングで集約するという新たな形式に切り替えました。ただやってみると、このアプローチは従来の方法よりも効果的であることがわかり、アイディアの質の向上につながりました。

後々、前出のマイケル・ディールとヴォルフガング・ストローベが単独セッションとグループセッションを組み合わせることを提案していることを発見しました。彼らは、組み合わせにより、個人が生み出したアイデアを、さらなる共同の議論を通じてより豊かにし、洗練させることが可能であると述べています。
Productivity Loss in Brainstorming Groups: Toward the Solution of a Riddle, Michael Diehl and Wolfgang Stroebe

私たちとっては、単に必要に迫られため試した対策だったのですが、偶然にも、大変効果的な方法を発見することとなりました。

マッチメイキング

上記の個人でのアイディア出しの後にペアリングを行うことで、参加者同士が互いのアイディアを交換し合い、さらにアイディアを足してもらうようにしました。そしてその後、グループでブレストをすることで、新たなアイディアを足すという方法に進歩させました。

ペアリングでは、アイディア出しに長けた、ブレストの経験が豊富な参加者が、そうではない参加者と組むことで、ブレストの成果を大きく高めています。このパートナーシップにより、刺激を生み、抽象的なアイディアも新鮮な視点で具体化されるようになりました。

クエスチョン・バースト

さらに、MITの教員ハル・グレガーセンは「クエスチョン・バースト」というプロセスを提案しています。これは、答えを見つけるのではなく、根本的な質問を生み出すことに重点を置いています。グレガーセンは、答えではなく、問題や機会の中心となる質問を生成することをブレインストーミングすることが解決策へのより良い方法であるとして、3つのステップからなる方法を紹介しています。
https://hbr.org/2018/03/better-brainstorming

確かに、人間はどうしても問題点を深く吟味するよりも、解決策を考えがちなので、これはとても有効な手段ですね。私たちも、まず問題の枠組みを構成していると思われる質問、または最善の課題であると思われる質問を特定し、その後に、解決に着手する方法を取っています。数を重ねていくと、質問することが上手になることで、課題を明確に出来るようになり、解決策の質の向上につながります。

ブレインストーミングをイノベーションする

アレックス・オズボーンがブレインストーミングを発案してから80年以上が経過しました。われわれは常により良い方法を模索し、試し、開発し続けなくてはいけませんね。もし従来のブレストで質の高いアイディアが得られないと感じているのであれば、個人ブレストやペアリング、クエスチョン・バーストなどの手法を試してみてください。お勧めですよ。

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