オペラ「マルコムX」で社会を先鋭的に先導する米国の深みをビジネスに繋げる
METライブビューングでオペラ「マルコムX」を見ました。
ご存じの通り、マルコムX(1925年-1965年)は、米国の黒人解放運動家。キング牧師と時期的に重なります。最後暗殺された点も共通します。
同作品では、
「始める前に諦めろ」
「生きる以外のことを考えるな」
20世紀前半の黒人が言われた言葉がアリアとして歌われます。
父親とその兄弟4人のうち3人が白人に殺戮されたマルコムX。アリアとして歌われることで、当時の黒人の受けた精神的な苦しみがより響くように感じます(もちろん響くなどという安易な言葉では表現しきれない深刻なものなのだと思いますが)。
窃盗や住居侵入などの罪での服役中に、イスラム教の教えに光明を見出したマルコムX。イスラム教に改宗して、イスラムの教えに基づく社会を作ろうとします。
オペラでは、メッカ巡礼やその際の礼拝のシーンも登場。
「アッラーアクバル(アッラーは偉大なり)」という言葉も何度も音楽と共に何度も出てきます。ここまでイスラムが全面に出たオペラも珍しいでしょうね。
改めてオペラ「マルコムX」のビジネスパーソンへの示唆を考えてみたいと思います。
第一に、人種に加えて、宗教のダイバーシティが、特に米国のアートでは重視されていることです。
これまでキリスト教的な価値観をベースにしたオペラが多かったといえるでしょう。長崎を舞台にした「蝶々夫人」、北京を舞台にした「トゥーランドット」など非キリスト教文化圏を描く場合もキリスト教的価値観が基礎にありました。
しかし、今回はイスラム教への礼賛が中心になっています。
ダイバーシティにおけるアートの役割の大きさを痛感します。人種差別問題に何百年も向き合ってきた歴史と蓄積が、アートにも反映されていると思います。
第二に、第一の点と関係しますが、ダイバーシティに限らず、社会問題におけるアートの先鋭的な役割です。
オペラと言うと、恋愛や恋愛に絡む愛憎問題が多いと思われるかもしれません。しかし、21世紀は、社会問題を前面に扱う新しいものになっていくでしょう。例えば、大量廃棄問題、AIと人間性、食の問題…。
アートの先鋭的な役割、特に20世紀後半以降新しいもので世界を先導してきた米国のアートの役割を十分フォローしておくことで、ビジネスの方向性が見えてくることも多いとのではないでしょうか。
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