2023/7/28

【要約】はじめての資産運用で読みたい「プロの選書」5冊

NewsPicks コミュニティチーム
📚深掘り!プロの学び💻

コメントを通じて「新しい視点」を提供するプロピッカーは、自らの持つ専門知識をどう身に付けてきたのか。

オリジナルなキャリアを築くプロピッカーたちの「学びのプロセス」をひも解きながら、ユニークな知恵を仕事人生に生かすヒントを探る。
日経平均株価が33年ぶりの高値を記録、アメリカでもS&P500が6月に年初来高値を更新するなど、個人投資に注目が集まっています。
そんな中、2024年1月から始まる新NISA
投資上限の拡大や、非課税で資産を保有できる期間が無制限になるなど、従来の制度からの大幅な変更に期待を寄せている人は少なくないはずです。
これを機に本格的に投資による資産形成を始めようとしている人は、まず何を学ぶべきなのでしょう。
投資初心者が知っておきたいエッセンスが詰まった本を、7月に就任した金融専門のプロピッカー5名に聞いてみました。
INDEX
  • 1️⃣ 主人公と「確定拠出年金」を学ぶ
  • 2️⃣ お金に限らず人生を考える契機に
  • 3️⃣ 2000年から不変のロングセラー
  • 4️⃣ 最新情報を網羅した新NISA本
  • 5️⃣ 著者が我が子に宛てた投資の基本
  • 🔰 プロが薦める、はじめての投資

1️⃣ 主人公と「確定拠出年金」を学ぶ

野口 IT企業勤務の20代女性が主人公の年金本です。誰もがお世話になる「公的年金」から本書は始まります。
日本に生きる上で必要な年金制度を前提として、各自がそれぞれ選ぶことのできるDC(確定拠出年金)を軸に解説は進み、若者が時間を味方につけて取り組むべき「じぶん年金」の全体像が理解できるようになっています。
著者の青山氏は運用会社と販売会社や投資信託協会での勤務経験があり「ゴローちゃん」シリーズ(2023年時点で全6冊)を執筆されています。
私も主人公と同じ20代に資産運用会社へ転職した際に、本シリーズを読み始めてファンになりました。
制度はいつか変わる可能性があるため、その背景から解説されている本書はおすすめです。

2️⃣ お金に限らず人生を考える契機に

木下 私がおすすめしたいのは、金融広報中央委員会が運営する「知るぽると」からダウンロードできる冊子『大学生のための人生とお金の知恵』です。
「大学生のための」と称してはいますが、資産運用をこれから始める20〜30代の方々も、経験豊富な方も、意外な発見や学びがあるはずです。
例えば「景気が好いと金利はどうなる?」とか「金利と債券価格との関係は?」とかモヤモヤしているときに頭の整理ができます。
私は50代の半ばでこれを初めて読み、投資する側の「リスク許容度」が強調されている点に感心しました。
職場でも家計資産の値下がりが心配になるようでは、お仕事に差し支えがありますよね。個々人のメンタルに合ったリスク特性のある金融商品を選びましょう。

3️⃣ 2000年から不変のロングセラー

冨田 この本は、著者の実体験に基づいて株式投資、不動産投資、起業などを通して資産を増やす父の友人と、貧乏なままの父の対照的な資産形成・運用の様子が描かれています。
運用を始める前に、まず目的や目標を明確にすることが重要です。10年以上前に読みましたが、自分の将来をイメージすることに役立ったので、おすすめさせていただきました(※編集注:冨田さんが当時読んだのは旧版の『金持ち父さん貧乏父さん』)。
また、資産運用に限らず新しいことを始める際は、その領域の本を複数読んだり、YouTubeを見たり、短期間に多角的な情報を得て、まずやってみて、経験から学ぶことが大切です。
私は今もたくさんの失敗を重ねながら学んでいます。

4️⃣ 最新情報を網羅した新NISA本

内田 漠然とした将来不安から、最近、若い人の間でも投資への関心が高まっています。
そこで、「今ならつくれる明日の安心 世代別新NISA、iDeCo徹底活用法」を推薦します。この本には、誰もが実践できる投資の具体的なヒントが世代別に示されています。
第1章では、リスクやリターンなど投資の基本を学ぶことができます。第2章では、新しいNISA制度とiDeCoの改革やこれまでの変遷などが紹介されています。本書は今年7月出版の新書ですから、全て網羅されています。
第3章と第4章で、世代別の投資手法を具体的に見ていきましょう。ライフステージによって、目指すべきリターン許容できるリスクも異なります。
本書は、情報の量、質ともにバランスがよく、どの世代の読者にもきっと参考になる良書です。

5️⃣ 著者が我が子に宛てた投資の基本

木本 この本では、著者が娘に伝える教えを通じて、シンプルな資産形成の考えを学べます。
  • 支出は稼ぎより少なくする。余りは投資する。借金をしない。
  • お金は忠実な部下になるが、うまくやれないと、逆にお金に使われる。
  • 賢い投資をすれば、複利の効果で、知らない間に大きな資産ができている。
  • 会社に縛られないお金を持つことで将来の自由を得ることができる。
人生において重要な「お金の使い方」について、実はほとんどの人が親や学校から学ぶ機会がありません。そのまま社会に出て、失敗することもあります。
高度な金融知識より、「自由に生きる術としてのお金の使い方」を知ることが大事だということを学べる良書です。

🔰 プロが薦める、はじめての投資

ここから先は「もし自分が今若手世代だったら、どんな投資をするか」をテーマに金融プロピッカーの皆さんからコメントをいただいています。

「よく聞く分散投資って何?」「初めて投資するならどれがいいの?」など気になる内容を理由と共に解説いただきました。
📍とにかく分散投資しよう
内田 さて、投資の基本は分散投資です。若い人の場合は、お金を「育てる」ための「時間」という武器も生かし、投資のタイミングも分散することができます。
それは、新NISAやiDeCoを活用し、日経平均株価などの指数に連動する投資信託に、毎月一定の額だけ投資をしていくことです。
結果的に平均取得価格は、投資期間中の平均より低くなります。
投資額を一定に保つことで、相場が値上がりしたときは少ない日経平均しか買うことができない一方、値下がりしたときに、より多くの日経平均を買うことができるからです。
Photo:iStock / primeimages
また、投資額の一部をアメリカなど海外に振り分けることで、さらに投資対象を分散することができます。
海外株に投資をすることは、為替リスク(円高リスク)も負うことになります。
しかし、それは同時に、日本のインフレが定着し、一段と円安が進む場合に備えたリスクヘッジにもなるのです。
木下 注目する金融商品は、「バランス型」と形容される、国内外の株式や債券に幅広く分散投資する投資信託です。
手始めに、収益性よりも安全性を謳う投信をごく少額購入すれば、これを通じ世界経済や金融資本市場の動きを見る目を養えます。
その後も何回かに分け、少しずつ買い増ししましょう。
Photo:iStock / monzenmachi
投信信託はリスク分散のねらいがありますが、これを運用のプロまかせにせず、自ら投資する時期を分散させれば、相場急変動のなか高値づかみをするリスクを減らせます。
新型NISAの「つみたて投資枠」は、コツコツと貯蓄する美徳を後押しする仕組みですが、これに加え、投資時期のリスク分散ができる、という現実的なメリットもあります。
📍お薦めは「全世界株式インデックス」
木本 これから運用を始めるなら、「全世界株式インデックス」がお薦めです。
米国株を中心に先進国・新興国に分散投資ができ、コストが低いため、長期運用に適しています。
米国株のみのS&P500も人気ですが、「全世界」をカバーする方がリスク分散の点ではシンプルです。
Photo:iStock / Nuthawut Somsuk
「投資」をしたいなら個別株や債券などももちろんありですが、「資産形成」は最初から考えすぎる必要はありません。
20代30代は仕事もプライベートも忙しいので、時間的・心理的コスト削減も大事です。
まずはシンプルな商品で、ほったらかしてもお金が増える感覚を身に付けるところから。
金融庁のNISAサイトでシミュレーションできるので、ぜひトライしてほしいです。
金融庁「資産運用シミュレーション」はこちら
野口 初心者のNISAは超低コストな全世界株式インデックスファンドから選びましょう。
投資で必要な要素は「長期で続ける」ことです。それを前提にすると、手数料が低く分散が利いたこの商品は長期投資におすすめです。
また、ニュースやSNSで資産が何倍にも増えた事例を聞いて悔しがることや、株価の下落で落ち込むこともあるかもしれません。
これをリターンと呼びますが、同時にリターンの振れ幅であるリスクという概念も覚えましょう。
全世界株式指数は1980年代からリスク・リターンの算出に使われることが多く、統計的に有意なデータが揃っています。
新しい領域に投資をする金融商品はデータが少なく、この変動幅であるリスクがマーケットのショックによって大きく変わることがあるのです。
全世界の成長率(GDP)は毎年3%前後であり、大まかにそれに沿って全世界株式指数の騰落率も変動を続けていることから、誰にでも広くおすすめできる商品と言えるのではないでしょうか?
全世界株の中身が知りたくなった人はNewsPicksトピックスの記事「とてもシンプルな資産形成とインデックスの小話」もどうぞ。
NISA以外でも、クレジットカードによる投信の積み立てはポイント面でお得です。
📍スタートアップ投資が面白い
冨田 (もし自分が若手なら、ということですので、)新NISAに注目しています。
新NISAについては、NewsPicksの記事が一番分かりやすいのでぜひそちらをお読みください。
また、金融商品ではないですが、令和5年度の改正により、実用の幅の広がったスタートアップ企業(未公開株式)への投資にも注目しています。
従来の要件に加え、一定の要件を満たす設立間もないスタートアップへの投資や、自己資金による起業について非課税措置の対象となりました(参考:経済産業省「エンジェル税制」)。
Photo:iStock / Leonid studio
2023年は岸田文雄内閣の政策で発表された「スタートアップ育成5か年計画」が本格的に始動する年です。
起業、スタートアップへの参画、エンジェル投資など未上場スタートアップ株式投資についても視野に入れると、面白いのではないでしょうか。