K-POPと韓国のエンゲージメント投資事情

2023年3月20日
全体に公開

ここ数年、お隣の韓国でもアクティビスト・エンゲージメント投資の事例がいくつかでてきています。韓国は財閥系の会社が多く、そもそも創業家の利益が優先されて少数株主の権利がなかなか守られにくい、そして少数株主が声を上げても無視されるという株主構成があるので、エンゲージメント投資はやりにくいと言われてきました。

過去の有名な韓国での動きと言えばサムスングループ

韓国におけるアクティビストファンドの動きで有名なのは、グローバル大手ヘッジファンドのエリオットが2015年にサムスングループにしかけたキャンペーンでしょうか。

韓国サムスン、後継者の基盤強化 中核2社合併で
2015年5月26日、Wall Street Journal

サムスン物産・第一毛織合併、妙手が裏目に
2015-06-05、ハンギョレ

サムスン物産はサムスン創業家は17%しか株は持っていないけれどサムスン電子株を4%持っていたので、なんとかこれを取り込みたいと思い、創業家が42%株を保有する第一毛織と第一毛織に有利な合併比率での合併を推進しようとしたところエリオットが突然7%超の株を取得し、合併比率はサムスン物産を過小評価していると反対を表明。ISSも反対推奨。外人株主が3分の1を有する中、極めて厳しいプロキシーファイトの攻防となったものの、69%のぎりぎりで合併が可決。その後エリオットは合併には韓国政府の不当な介入があったと主張して国際投資紛争解決センター(ICSID)に提訴してます。

エリオットは、更にサムスン電子本体にも投資をして様々な提案をその後しています。

サムスン電子を標的、エリオット・マネジメントが事業再編要求
2016年10月6日 9:43 JST

K-POP業界の動き:SM Entertainment

さて、ここにきて日本にもファンの多いK-POP業界でも、東方神起や少女時代らを抱える韓国のSM Entertainmentの株を去年からアクティビストファンドが取得し色々な動きがありました。動きを追ってみると分かりますが、SM Entertainment創業者のSM Lee氏は音楽プロデューサーとしては凄腕であったかもしれないけれども、上場会社経営者としては失格であったことが良く分かります。SM Entertainmentの売上の6%弱もの金額を自らの個人会社に横流しし、少数株主の利益を犠牲ににして、自らの私利私欲を追求していたことがAlign Partnersというアクティビストファンドによって明るみになりました。

簡単に動きをまとめてみます。

・元KKR韓国のLee Chang Hwan氏が設立したAlign Partnersが1%程度のSM株を取得

・Align Partnersが昨年始めに18%株を保有する創業者SM Lee氏がSM Entertainment上場後も売上の6%弱(営業利益の30%弱)を自身の100%保有する別会社にライセンス契約という名の基に流していることを指摘し、同契約を破棄することを提案

・実際に会社は創業者の個人会社との契約を破棄。また、2000年から一度も配当を払っていなかったのを、今後3年間の配当性向を最低20%とすると発表。その他社外取を増やしたり取締役会のガバナンス強化改革を発表

・Align PartnersのCEO Lee Chang Hwan氏が今年3月の株主総会で取締役の一人になる予定に

・創業者のSM Lee氏は自身の保有株をライバルのHybeに売却し、Hybeは追加で最大25%取得するTOBを発表

・Kakaoが市場内で5%弱を取得した後、追加で最大35%取得するTOBをHybeよりも高いTOB価格で発表

・HybeはTOBの撤回を発表、KakaoのTOBが通りそう

・今ここ

という感じです。コーポレートガバナンスという点では後進国といえる韓国は、まだまだ動きが色々ありそうですね。

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